オリンパスイメージング株式会社 代表取締役社長 小川治男さんと「デジカメ四方山話」

フォトキナ会場で「あ、どうもどうも」と編集長が挨拶したお相手は、オリンパスイメージング株式会社の小川社長。大変ご多忙なさなか、私たちの突然のインタビュー申し出をご快諾いただき、社長自ら応えていただけるということで、テクニカルな内容よりも少し全体的なお話を伺ってきました。主にマイクロフォーサーズが生まれた経緯、アートフィルターについて、他社製レンズのアダプター経由でのマウントについて、フォーサーズ後継機などなど、小川社長があまりにフランクに応対していただけるもので、正直なところ一人の撮り手として何も考えずに純粋に聞きたいことを聞いてきたといったノリです。それでは、当日の模様をお届けしたいと思います。

( 写真:A.INDEN / 聞き手・文責:K )

上の写真は、今回フォトキナで展示されていた新機種3台、左からOLYMPUS PEN E-PL5、PEN E-PM2、STYLUS XZ-2です。普通は新機種のお話を伺うところですが、せっかく小川社長自らインタービューに応えていただけるということで、話はいきなりマイクロフォーサーズという規格が生まれるあたりに・・・

今回マイクロフォーサーズのPENシリーズ2機種を発表されて、ずいぶんマイクロフォーサーズのラインアップも拡がりを感じますが、フォーサーズからはじまり、マイクロフォーサーズみたいな構想が走り出したのはいつ頃あたりだったのでしょうか?

「私が現在のポジションについたのが2006年あたりですが、その頃には既に規格の選定を行っていました。2007年頃にはマイクロフォーサーズの規格をまとめ、規格自体を発表したのは2008年の8月でした。ちょうど9月にその年のフォトキナが開催されまして、Panasonicさんが最初にG1というシリーズを発表しています。一方で、我々はいわゆる"PENスタイル"というか、ファインダーが無いタイプのスタイルのものをやりたいということで、同じくフォトキナでモックアップを使い披露させていただきました」

フォーサーズからフランジバックを縮めて、マイクロフォーサーズみたいなものを作ろうというお話になったのは、よりコンパクトにしたいといったところでしょうか。

「そうですね。フォーサーズの規格の頃から、いずれにしろ求めているものは、高画質と携帯性のバランスを取るということでした。そのためにはミラーを取り払うことも将来的には考える必要があると、かなり前から検討していました。当時はミラーを取り払い、イメージセンサーで行うコントラストAFというのが、現在のような技術レベルに無かったため、なかなか現在のような製品を送り出せる状況ではありませんでした」

わりと大きなセンサーを搭載するカメラでは、同じマイクロフォーサーズのPanasonicさん、レンズ固定式であればSIGMAさんのDPシリーズあたりしか無かった頃ですが、初代であるOLYMPUS PEN E-P1が登場した際に、こんなにAFが速く動き測距精度が出るものなのか!と大変驚いたのと同時に、これは新たな形のカメラだなあと新鮮な印象がありました。

「それでも今からみれば、すごく遅いんですけどね(苦笑)しかし、いまおっしゃった通りの程度動けば、十分に日常使用には足るものになるだろうと思っていました。レンズ交換式でありながら、高画質そして小さなボディでカメラとしての使い勝手を求め、撮る道具としてキチンと成立していれば、レンズ交換して色々な撮影を行う楽しみをお客様にご提供できると考えていました。それ以前は、いわゆる一眼レフしかなかったわけで、大きく重く、使うのが難しいと。はじめての皆さんにとってはちょっとハードルが高いですよね。これを取り払うことができれば、格段にハードルは下がるなと考えていました」

いま思い返してみれば、写真!写真!と既にのめり込んでいるような皆さん以外の、いわゆる一般の皆さんが気軽に使って、そして気軽に写真で何かを表現するという、そんな流れを作り上げた立役者の1社がオリンパスさんかなあと思います。いきなり私たちの仕事の話で恐縮ですが、新機種なんかをお借りして全国各地にロケに出るのですが、観光地などに行くと、結構な確率で若い女性がPENシリーズを手にしていたりするのですね。

「ありがとうございます。フォーサーズで、E-410という機種をリリースした頃の話なのですが、この機種は女性の皆さんにたくさんご購入いただきました。その頃、女性の写真教室にたまたま私が参加したのですが、小学校の跡地で男性モデルを女性が撮影するという。そのときに、とある女性に「いかがですか?」と伺ったのですが、まだ自分の腕が追いつかなくて、難しいと。」

「廃校になった小学校で、ちょっと雰囲気があるわけです。そこで、ちょっとかわって撮ってみたのです。しかし、なかなか上手く撮れないんですよ。当時E-410にモノトーンのモードが入っていまして、セピア色のモノトーンに撮ってみたらいかがですか?とセットさせていただいて、お渡ししたのです。すると、撮影した瞬間に「こんな写真が撮りたかったんです!」といったことを女性におっしゃっていただいて。これはひとつのヒントだなあと思ったんですね。それがアートフィルターを発想するきっかけになったのですね」

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