オリンパスイメージング株式会社 代表取締役社長 小川治男さんと「デジカメ四方山話」

さて、すっかりお馴染みとなったミラーレスの世界に、OM-Dというモデルを投入されたわけですが、これは本当にいろんな、各方面から質問があると思うのですが、OM-Dの企画や開発経緯を伺いたいのですが。

「PENをリリースする際に、色々なお声をきいてまわったのです。カメラユーザーは大まかに幾つかの傾向に分かれると思うのですが、どんなグループの皆さんが一眼レフに興味をお持ちなのかと。また興味はあるけれど、諦めているのか・・・こんなことを深く調べてみたのです。とあるグループは、一回撮影に出るともの凄い枚数を撮り、とにかくよい写真を撮ることに一生懸命なんですね。こんな皆さんはやはり一眼レフに興味をお持ちなんです。ただし、このようなユーザーさんはわりと想像つきやすいですよね。つまり従来からの一眼レフユーザーの皆さんという感じです。そんなグループに比べて、一回の撮影枚数は少ないけれど、カメラを持ち出す頻度が非常に高いという、そのようなグループの皆さんもいらっしゃいます。2007年当時でもブログですとか、SNSなどに大変興味をお持ちで、ご自分が撮影された写真をアップして。そのような方々は、わりと簡単に操作できて携帯性がよくて、でもよい写真、プロが撮るような写真を撮りたいと。そのようなユーザーさんに使っていただけるようにとフォーカスしたのがPENなのですね。」

「PENをリリースしてから、いわゆるプロフェッショナル指向のユーザーさんにもたくさんお買い求めいただいたのですが、街中にカメラを持ち出すのに、あまり無骨で大きく重いものを持って行きたくない、しかし、しっかり撮りたいし、いわゆる"カメラらしい"雰囲気を持ったものが無いかと。ちょうど企画側からまだデザインとは言えない目標的なスタディとしてOMっぽい形のものを持ってきまして。これをミラーレスで作ってみたいと。しかし、PanasonicさんがGシリーズやGHシリーズでアプローチされている形と同じなんですね。しかし、PENから始まること3年、いわゆるOMのフィロソフィーを受け継げるボディとして、オリンパスならではの味付けができるのではないかと思ったのです。PENとはまた違った形に、そしていま最高のものをボディに詰め込みたいと考えまして。ファインダーも、PENのほうで高い評価を頂いていた外付けファインダーを内蔵しました。ただ、OM-Dをお使いのユーザさん、つまり写真がお好きな方はずっとファインダーを覗いてたりします。あまりコントラストが高いと疲れてしまうので、ナチュラルにチューニングしたりと。また、ボディがあれだけ小さくなると、かえって手ブレを誘発したりしますので、手ブレ補正機構も最高のものにしようと。こうして作り上げたモデルなのです 」

さてフォーサーズの頃は、特にオーバークオリティとも言えるレンズの描写力だったり、このあたりがセンサーサイズからすればボディやレンズを肥大化させるわけでしょうから個人的には愚直なのにも程があるな、、と感じていたわけです。その頃から比べれば、マイクロフォーサーズのラインアップを見ると、180度違うカメラ作りと感じます。そして、あまりに元気の良いマイクロフォーサーズのラインアップが印象的で、半ばユーザーからすればフォーサーズのほうが頭から「ほわっ」と蒸発しそうな雰囲気がありますが(笑)そのあたりについて伺いたいのですが。

「PENとOMでマイクロフォーサーズで求められるニーズに広く対応できたと感じています。従来のOMユーザー(フイルム)の皆さんは、PENのときはあまり興味をお持ちにならなくても、OM-Dには興味を持っていただいたり、ご購入いただいたりしています。私たちはEシリーズ(フォーサーズ)もまだまだ、どうしても必要だと考えています。プロの皆さんがOM-Dで完全に満足できるかといえば、そうではなくて、プロの皆さんに使って頂くにはまだまだ越えなければならない要素があると考えています。いまのEシリーズの持つシステムの姿、そしてラインアップ、特に高い描写力を誇るレンズラインアップでこそ実現できる世界があります。E-5の後継機をご期待いただくことについては勿論承知しております。ただ、E-5の描写力はかなりしっかりしており、さらにそれを高めるだけではなく、元々フォーサーズの精神というのは、高画質と携帯性のバランスを取るということですから、E-5の後継機というのは、OM-Dとまで行くかどうかはわかりませんが、小型のカメラでというのを、やっぱり考えたいですよね」

マイクロフォーサーズがそもそもミラーを取り払い、フランジバックをフォーサーズに比べて縮めているわけで、フォーサーズは恐らくミラーが今まで通り入るのだろうと思います。素人考えでは、いくらなんでもOM-Dほどにはならないのではないかと思いますが・・・。

「確かに高い描写力を持ちながら、プロの使用にも耐えて満足いただき、なおかつ小型化するというのは、かなり技術的にはハードルが高いのです。何とかできればいいな、と。また、どのぐらいまでできるかと。現在、何年か先までのロードマップを考えて、複数あるスタディの中の一つとして取り組んでいます。いずれにしても現時点では固まりきっていない状態です」

E-5をはじめて使ったときに、それまでのE-3に比べて一つ次元が上がったなあと感じました。「良くなった」というにとどまらず、まさに次元が上がった印象です。ここからさらに上げていくとなると、なかなか大変だと思いますが。

「そうですね。お使いになっている皆さんは、すごくおわかり頂いていて、E-3の描写力を遙かに超えるレベルになっています。E-3としても我々としては力作だったのですが。E-5は本当に地味ながらも、かなりのレベルになっていると考えています。」

これは少しオタクな表現ですが、1ピクセル、そのレベルの画の作り方、たとえばライン一つの描写にしても、そのあたりの作り込みがガラっと変わった印象です。

「完全に変わりましたよね。その他にも、SWDによる世界最速のオートフォーカスですとか、ファインダー倍率の大きさだとか、フォーサーズで物足りないと言われていた部分にかなり力を入れました。」

これから、高画質と携帯性のバランスと言われている、携帯性・つまり小型化というところに手を入れていくことにはなると思います。マイクロフォーサーズのように、というのはかなり難しいと思いますが、ミラーレスをやることで蓄積されていった小型化の技術やノウハウを、当然Eシリーズにフィードバックしていくことになるのかなと思うのですが。

「そうですね、帰化されるという感じですね」

「少し脱線しますが、フォーサーズ・マイクロフォーサーズという話はともかく、ミラーレスの技術に、とりにかくオリンパスはフォーカスすべきだと私は思ったんですね。ミラーレスというのは、いわゆるイメージャーにエンジン、ベースはこれがベースですから、その信号だけでオートフォーカスを速くしたり、もちろん手ブレ補正等もありますが、技術としてはベースとなる技術なのですね。変なたとえですが、そのベースに超ワイドをつけてしまえば内視鏡になりますし、超マクロをつければ顕微鏡になりますよね。もちろんイメージャーのサイズは違いますが。」

-- なるほど、帰化ですか。なかなか面白いお話ですね。マイクロフォーサーズのお話から、内視鏡・顕微鏡というのは面白いですよね(笑)でも、技術そして製品が磨かれて行く過程とは、そういうことなんでしょうね。