PHOTO YODOBASHI

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SONY α7 III, 90mm F2.8 DG DN | Contemporary, Photo by TAK

SIGMA 90mm F2.8 DG DN | Contemporary

[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ

気軽に持ち歩ける喜びと、道具としての魅力を併せ持ったシグマのプレミアムコンパクトプライム「 I 」シリーズ。そのラインアップに中望遠域を担う単焦点「90mm F2.8 DG DN | Contemporary」が登場しました。本レンズ最大の特徴は、なんといっても手のひらにおさまってしまうこのサイズ感でしょう。AFが使えるフルサイズ用の中望遠単焦点ですから初めて手にした時は衝撃をうけました。重さは295g、長さは61.7mm。中望遠にしてはかなり小型軽量ですよね。先に発売された「24mm F3.5 DG DN | Contemporary」や「45mm F2.8 DG DN | Contemporary」とトリオを組んでも、755gに収まってしまうのも衝撃的です。これならまとめて鞄に入れて持ち運んでも撮影の足枷になることはなさそうです。ちなみに上記2本と本レンズのフィルター径は同じ55mm、最大径も64mmで統一されています。

90mmの画角は見せたいもののみを抽出することができ、「時」を写し込むようなアプローチをすれば画に深みを与えてくれる。また引き寄せ効果や圧縮効果を楽しめる面白味に富んだ焦点距離です。中望遠スナップの楽しさを知っている皆様にとっては、やっと待望のレンズがといったところでしょうか。描写の傾向は、シリーズでシステムを組むことを考慮されているでしょうからなんとなく想像がつくところです。ゆえに、もはや期待しかありませんが、使い勝手を含め、その写りを先ずはご覧ください。

( Photography : TAK / Text : TA )

SONY α7 III, 90mm F2.8 DG DN | Contemporary, Photo by TAK

望遠レンズ特有の圧縮効果は焦点距離が伸びるほど強くなりますが、90mmでもその効果は十分に味わえます。遠くを近くに引き寄せることで、手前も奥も同じ面にあるかのように描写してくれます。また、狭い画角で周辺をフレームアウトさせることで、必要なものだけをピックアップする能力にも長けています。しかもF2.8で被写界深度も浅くピント面以外はボケやすくなるため、どこにピントを合わせるかで過去、現在、将来といった時間的要素もコントロールできます。広角レンズや標準レンズでは得られない世界であり、そこに使い分けの妙があります。

SONY α7 III, 90mm F2.8 DG DN | Contemporary, Photo by TAK

解像力は開放から十分すぎるほど高く、左下隅のトラックまで実にシャープに捉えてくれました。遠距離では、主に周辺減光やシャッター速度を調整するために絞ることになりそうです。カメラの周辺減光補正はオフにしていますが、これくらい出てくれた方がトンネル効果も楽しめて個人的には熱烈歓迎です。気になる場合はF11あたりまで絞るか、カメラやソフトで補正をかけることで解消します。緑のグラデーションもそうですが、色再現に濃厚さとシリアスさが同居していて、コントラストもこれまた絶妙です。I シリーズのコンセプトに魅力を感じるユーザーに響く路線ではないでしょうか。

SONY α7 III, 90mm F2.8 DG DN | Contemporary, Photo by TAK

SLDガラスや非球面レンズを採用しているとあってヌケが良く、ボケも美しく透明感があります。フリンジの抑制が効いているのでしょうし、輪線ボケもほとんど見受けられません。前ボケにも柔らかさがあり好感が持てますよね。ピントピークも相変わらずシャープで、主題をくっきりと浮かび上がらせて立体感を演出してくれます。

SONY α7 III, 90mm F2.8 DG DN | Contemporary, Photo by TAK

90mmの画角は27度。注視した時の視野に近く、被写体がデフォルメされることがないので、モノの形を歪めずに再現しつつ特徴を象徴的に描きたい時にも有効です。広角や標準ではもっと大胆に寄ったり引いたり角度を付けたりと、また違った表現になるでしょう。ボケ量が程良いのも効いていますね。これが盛大だと「やりすぎ感」に注意する必要も出てきますが、F2.8であれば開放から神経質にならなくてもよいのです。90mm F2.8というスペックが長きにわたり生き残ってきた理由は、この扱いやすさとサイズとのバランスにあるのではないかと想像します。


SONY α7 III, 90mm F2.8 DG DN | Contemporary, Photo by TAK

本レンズはまるで標準レンズのように小型軽量で、街中でも目立つことがありません。しかも標準よりもリーチがある上にAFも俊敏なので、撮影ポジションを変えずとも一瞬で主題を大きく捉えることができます。こういうレンズが1本あるだけで、撮影における瞬発力が飛躍的にアップするでしょう。露出をアンダーにしていますが、赤の再現が目論見どおりで嬉しい限りです。

SONY α7 III, 90mm F2.8 DG DN | Contemporary, Photo by TAK

歪曲はカメラ側での補正を前提に設計されているので、補正オフの状態では糸巻き型が出ます。基本的に補正は「オート」に設定しておけば、ご覧の通り直線も問題ありません。光学系で補正するとなると、このサイズと価格でAFなんて実現できないでしょうね。

SONY α7 III, 90mm F2.8 DG DN | Contemporary, Photo by TAK

標準でこういったシーンを捉えようとすると、フレーミングに気を配っても画が散漫になりがちです。こんなところにも中望遠の妙を見てとることができます。90mmの画角に対してF2.8は、どのように切り取っても画がまとまりやすく自然な視線誘導に長けています。スナップは苦手という方にこそ、中望遠でのスナップ撮影をおすすめしたいです。

SONY α7 III, 90mm F2.8 DG DN | Contemporary, Photo by TAK

最短撮影距離、50cm付近です。最大撮影倍率にして1:5。マクロレンズと比べるのはナンセンスですが、それでも数字以上に寄れる印象です。それでいてピントはかなりシャープで、描写も周辺に至るまで崩れることがないので、何かと重宝するのではないでしょうか。それにしても、とろけるようなボケ味ですね。


SONY α7 III, 90mm F2.8 DG DN | Contemporary, Photo by TAK

SONY α7 III, 90mm F2.8 DG DN | Contemporary, Photo by TAK

90mmの視点は、「見守る」。小型軽量で心身穏やかになってこそ、見守ることのできる光景もあるのではないでしょうか。

SONY α7 III, 90mm F2.8 DG DN | Contemporary, Photo by TAK

I シリーズに共通して見られるのが逆光耐性の高さです。本レンズも例に漏れずで一目瞭然。これだけ大胆にレンズを振っても、色が抜けてしまうようなことはなく、スカッと気持ちのいい写りをします。後から色を抜いていくことは比較的容易なのですが、その逆はなかなか自然にとはいかないもの。力を入れたり抜いたりの描写のバランスがとても良く、考え抜かれたものであることがわかります。


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軽やかに、新しい風を吹き込む中望遠90mm

安定した解像力にとろけるようなボケ味。Artに勝るとも劣らない描写性能でありながら、こと表現力においてはむしろ一枚上手であるかのように感じました。画角的に落ち着いた画になりやすいのですが、情感たっぷりの画についうっとりしてしまいました。ボケ量も大袈裟にならず実にいい塩梅。これは使いやすそうなレンズです。「中望遠ながら寄りに強くAFも快適。ボディとのバランスも良く一日中撮っていられる」と、実際に撮影してきたカメラマンも絶賛していました。90mmは冒頭にも記した通り、見せたいもののみを抽出することができ、「時」を写し込むようなアプローチをすれば画に深みをもたらしてくれる。また引き寄せ効果や圧縮効果も楽しめるといった面白味に富んだ画角です。一般的なズームレンズに含まれる焦点距離で、よく使ってきた馴染みのある画角でもあります。中望遠の魅力を知りながらもサイズ的に躊躇してしまい、持ち出す機会がなかなかないといった経験をされてきた方は少なくないでしょう。やっと持ち歩きたくなるようなコンパクトな中望遠レンズが出てきたと言えなくもありません。どのように切り取っても画がまとまりやすいレンズですから、日常使いとしてもおすすめです。きっと新しい扉が開かれることでしょう。

最後になってしまいましたが、本レンズの洗練された美しさは I シリーズに共通したもので、鏡胴外装部には金属製の切削アルミニウム、マウント部には真鍮が使われており剛性感や耐久性にも優れています。長く使っていきたいと思わせてくれる一本です。

 

( 2021.09.30 )

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ミラーレス時代に最適化された設計により、驚くほどの小型軽量と高画質を実現した中望遠レンズ。ひとたび手にすれば、手放せなくなる常用レンズに。

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レンズサイズを思うと、フードは少し大きめに感じます。フードなしで使うには、フィルター装着が安心です。完全無色で色再現に影響しない純正フィルターがおすすめです。

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