PHOTO YODOBASHI

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SONY α7R V, SIGMA 50mm F1.2 DG DN | Art, Photo by Naz

SIGMA 50mm F1.2 DG DN | Art

[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ

シグマから登場したソニーEマウント向けの大口径標準レンズ「SIGMA 50mm F1.2 DG DN | Art」の実写レビューをお届けします。メーカー発表によりますと、本レンズは「Artライン最高レベルの描写力、しかもクラス最軽量」とのこと。昨年登場したばかりの「50mm F1.4 DG DN | Art」は最大径78.2×全長111.5mm、質量670g。今回の50mm F1.2は、最大径81.0×全長110.8mm、質量745gと、ほぼ同寸、質量も一割増程度に抑えられており、フィルター径はどちらも72mm。同じレンズを使っている感覚で扱えそうですが、ひとつ気になるのは写りについて。明るいレンズを小さく作るというのは「どこか無理しているんじゃないか?」と懸念してしまうのですが、今回撮影を行ってみて、その光学性能は期待以上、想像以上のものでした。近年、ZEISS Otusを筆頭に各社から超高性能な標準レンズが多数リリースされてきましたが、本レンズはその開発競争のステージがF1.4からF1.2へと変わったのだと実感するものでありました。実際に、主要カメラメーカー3社のミラーレスシステムに高性能な50mm F1.2がラインアップされた直後というタイミングでの登場。本レンズが標準レンズ選びの有力な1本となることは間違いないでしょう。では、その写りをお確かめください。

( Photography & Text : Naz )

SONY α7R V, SIGMA 50mm F1.2 DG DN | Art, Photo by Naz

シグマらしいキレのある、クリアでメリハリを感じる現代的な描写です。撮影に用いたα7R VのAFシステムとのマッチングもあると思いますが、シビアなはずの開放でもAFは迷うことなくスッと合います。メーカー発表によれば、高い駆動精度と静粛性が特長のリニアモーターHLAの推力はそのままに、従来品と比べ約25%の薄型化と重量比約44%の軽量化を実現したものを2つのフォーカス群それぞれで採用しているとのこと。AF精度に関しては、撮影を始めてすぐはEVFで拡大表示してMFで追い込んでみたりもしましたが、撮れたカットを見る限りその必要はないと感じる十分な精度を持っていました。

SONY α7R V, SIGMA 50mm F1.2 DG DN | Art, Photo by Naz

開放F1.2ではF1.4のレンズと比べても明らかに背景を大きく溶かしてくれます。被写体まで1.5rm時にF1.4では約75mm、F1.2では約65mmと0.5段の違いでも深度は14%程浅くなります。本レンズはF1.4クラスと比べ、より幅広い表現が可能ということになります。作例ではガラス越しの情報量が多い背景ではありますが、解像力の高いレンズながらも煩くならないように巧く処理してくれています。

SONY α7R V, SIGMA 50mm F1.2 DG DN | Art, Photo by Naz

最短撮影距離は0.4m。被写体によっては近接では何を撮っているのか分からないほどボケ量の大きな写真を量産しがちです。でも撮っているときの楽しいこと。ヘアライン処理が施されたステンレスの手摺りにらせん状に巻き付けられたスチールのチェーン。メッキ処理を含め、それぞれの素材や質感の違いをしっかりと描き分けてくれています。積極的に使いたい前ボケは美しく溶けるよう。

SONY α7R V, SIGMA 50mm F1.2 DG DN | Art, Photo by Naz

カメラ側の設定で周辺減光補正をOFFにして撮影しましたが、ONの場合は少し絞れば気にならないレベルまで補正してくれました。スナップ撮影のような場合、個人的にはトンネル効果のような周辺減光が好みなこともあり、敢えてOFFで撮影を行っています。そこそこ離れた距離から撮影していますが、画面の隅々まで安定した描写で、葉の1枚1枚の艶感や凹凸を緻密に描き出してくれています。

SONY α7R V, SIGMA 50mm F1.2 DG DN | Art, Photo by Naz

枝や花の輪郭に色収差が出そうな条件ですが、ボディ側の光学補正をONにすることにより、ほぼ見つからないレベルに補正されました。


SONY α7R V, SIGMA 50mm F1.2 DG DN | Art, Photo by Naz

良好な色乗り、写り込んだ空間にさえ何か存在を感じさせてくれる写り、よいと思います。画面の隅にピントを置きましたが、その部分を子細に見ても隅の描写であるとは思えない程良好です。

SONY α7R V, SIGMA 50mm F1.2 DG DN | Art, Photo by Naz

SONY α7R V, SIGMA 50mm F1.2 DG DN | Art, Photo by Naz

10m程離れた人物にピントを合わせました。浅い被写界深度と広いフレームが中判カメラで撮った写真のようにさえ思えてきます。これだけ離れても池の向こうの木々はアウトフォーカスになりますね。素晴らしい立体感です。

SONY α7R V, SIGMA 50mm F1.2 DG DN | Art, Photo by Naz

RAWデータを見ると僅かに糸巻き型の歪曲が認められましたが、カメラ側の収差補正に対応していますので、JPEGではご覧の通り直線はビシッと真っ直ぐです。


  • PHOTO YODOBASHIF1.2
  • PHOTO YODOBASHIF1.4
  • PHOTO YODOBASHIF2.0
  • PHOTO YODOBASHIF2.8

13枚羽根の円形絞りにより、ボケ玉は開放以外でも円形を維持。

円形絞りは数段に渡り有効です。F1.2〜1.4の開放付近では、画面周辺へいくに従いラグビーボール状となる口径食が出てきますが、F2まで絞ればほぼ解消します。F2〜2.8でもご覧の通りボケ玉はほぼ円形を保ち、その中も年輪のような模様も見られず美しいです。


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「F1.2」を当たり前のものにしてしまうレンズ

長く写真を撮ってきて、F1.4を超える大口径レンズは「飛び道具」的な機材だとこれまで思ってきましたが、本レンズを使ってみてその認識を改める時期が来たんだと感じました。「こんなF1.2があるのなら、F1.4を買う必要ないよね」と思えてしまうほど、描写力もあり、安定感もありました。本レンズをマウントしたカメラを構えれば、何のテクニックもなくF1.2の上質な画を手に入れることができますが、今まで平面的に捉えていたはずの被写体でも、浅いピントで前後を大きく溶かしてしまいますから、これまで以上に三次元的に被写体を捉えていくことが求められます。F1.4と比べて約10万円高となります。それを必要とする方なら、この価格差はぜひとも乗り越えてほしいと感じました。

これまでのArtラインのレンズと同様に、絞りリングは1/3段クリックのON/OFFが可能。幅広のフォーカスリングは滑らかなトルク感があり、操作感も良好です。他にAF/MFスイッチのほか、フォーカスホールドボタンも装備。レンズ最前面には撥水防汚コートも施され、ハードな使用にも耐える金属鏡胴等のビルドクオリティの高さは折り紙つき。もちろん防塵防滴仕様となっています。

優れた光学性能と大口径化を果たしつつも、大きさはそのままにという難しい課題を解決したのは、屈折率の高い硝材と4枚の非球面レンズを採用し、12群17枚という構成ながらも1枚1枚のレンズを薄型化することで、製品としての大きさと重さの両方の軽減を実現することができました。光学性能最優先で「大きく重いのは仕方がない」と思っていたArtラインの大口径レンズも、小型・軽量となることで持ち出せる頻度は高まりますよね。これまで特別だったF1.2という世界を当たり前のものにしてしまう1本、どうぞお楽しみください。

( 2024.05.09 )

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標準レンズを何本も買うのではなく、これがあれば上がれてしまえる、そんな1本です。最高レベルの光学性能の1本を手にできるのだとすれば、リーズナブルではないでしょうか。

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