PHOTO YODOBASHI

ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン

SONY α9 III, FE 24-70mm F2.8 GM II, 1/80000, F2.8, ISO 800, Photo by TAK

SONY α9 III / SHOOTING REPORT

α9 IIIはグローバルシャッター方式のフルサイズCMOSセンサーを搭載した、世界初のレンズ交換式カメラです(2023年11月時点)。機械式シャッターそのものを持たず電子シャッターのみを採用し、先代同様ブラックアウトフリーの撮影が行える上に全画素を同時に露光し、読み出しを行います。最大のメリットは、特に高速で動く被写体を歪みゼロで捕捉できることです。新幹線から富士山を撮影したのだけれど、手前の架線や防音壁などの縦線が、本来は垂直であるはずなのに斜めに写ってしまった、、、なんて経験をした方も多いかと思います。α9 IIIがあれば、この問題が100%解消されます(CCDカメラや産業用カメラなどのお話は割愛)。現在製造されているほとんどのカメラの電子シャッターは、ローリングシャッター方式を採用しています。上部から順にスキャンしていくので、フレームの上と下とでは露光に時間差が生じ、高速で動く被写体が本来とは違った平行四辺形状に写ってしまうのです。無論ローリングシャッター自体も改良が重ねられ、多くのシーンには実用上問題ない程度にまで歪みを抑え込んだ高性能モデルも登場しています。また機械式シャッターも歪みの抑制には有効ですが、やはり構造上フレームの上部と下部で露光時間に差が生まれる宿命を背負っており、ブラックアウトも生じる上に(一部モデル除く)、最高シャッター速度にも限界があります。

冒頭のカットですが、このカメラの最高シャッター速度である1/80000秒(単写時のみ有効)にて捉えた、高速通過時の新幹線です。触れ込み通り、垂直線が斜めになっていません!そしてもっと感動したことがあります。実はこのシーンのカット数はこれ1枚だけなのです。流石にもう少し粘るべきと思いましたが、1ショットで仕留めたというエピソードの方が説得力があると直感しました。連写時の最高速度である1/16000秒でも止められた気もするものの、どうしても1/80000秒で撮ってみたかったのです。そしてそれが1ショットで決まりました。約944万ドット、120fpsのリフレッシュレート、そしてブラックアウトフリーのEVFがなければ、まず不可能でしょう。ちなみに一応申し上げておきますと、緊急停止している車両でもリアルな鉄道模型でもありません。あまりのブレの無さに置き物のように見えますが。

( Photography & Text : TAK )

静止画を連続表示させたものが映像であるという意味では、全コマ歪みゼロで補足できる本機の特性は映像でも存分に発揮されます。こちらも高速通過時の新幹線ですが、300kmとはいかないまでもオオタニサンの打球やスイングよりもはるかに速いことは確かです。やはり歪みゼロですね。このとんでもない事実に早速慣れてきた自分が怖いのですが。続いては貨物列車の通過シーンです。これも中々の速度が出ていますし、新幹線よりもはるかに近くを通過します。こちらはオリジナルの再生速度としていますが、お好きなタイミングで一時停止してみてください。歪みが無いのでコンテナの様々な表記が容易に読み取れるかと思います。もちろんそのままの速度でも速読教材のように読めてしまうのも、このカメラならではの芸当でしょう。なお、ここまでの映像は4K/120p(クロップ無し)にて撮影しています。

最後はムクドリの群れを4K/60pにて撮影したシーンです。手持ちで歩きながらの撮影ですが、ダイナミックアクティブモードのお陰で手ブレが大幅に抑制されています(画角は狭くなります)。ジンバルほどではないにしても、人間工学に基づいたグリップ形状も相まってカメラ単体でも十分安定した映像を得ることができます。またここでは飛翔時の翼の動きにも注目してみましたが、思ったほどしなりは見受けられません。今まで見ていた動画では、ローリングシャッターの影響か現実よりもしなっているように見えていたのかも?とも考えますが、この辺りは個人的感覚にもよるでしょう。いずれにしても、今まではこの俊敏な動きを肉眼で確かめる術もありませんでした。

なお、先ほどサラリと言いましたが、クロップ無しで4K/120pはαシリーズ初です。ただし、この条件では6Kからのオーバーサンプリングではありません。4K/60pでは6Kからのオーバーサンプリングとなります。その画質の差はもちろんゼロではありませんが、個人的にはどちらも気にせずに使えるレベルかなと感じました。

続いてはハッカチョウという鳥が飛び立った直後に連写したスチルカット60枚を、パラパラ漫画の要領で動画にしてみました。連写速度は最高速度となる120fpsで、1/12800秒、AF/AEでの撮影です。プリキャプチャーもしてくれるので、飛び立つ寸前の動きまで記録されています。AIプロセッシングユニットを搭載したAFの超絶的な認識追従性能といい、もはや動きモノ用カメラとして現状最強と評してもよいのではないでしょうか。先程のムクドリに比べると、こちらは割と翼の動きにしなりや回転性の運動が見受けられます。鳥という生物は様々な飛び方をすることで、スピードなどを調整しているのかもしれません。とにかく翼がしなるにしても、これが実際のしなり方なのだと思います。個人的な思い込みに基づいた現実が、最新版に上書きされた次第です。


SONY α9 III, FE 24-70mm F2.8 GM II, 1/80000, F8, ISO 250, Photo by TAK

1/80000秒で捉えたスナップもご覧ください。ネイティブ感度のISO 250、F8で1/80000秒にまでシャッター速度を上げてようやく白飛びゼブラ警報が消えました(しきい値は初期設定のまま)。ちなみにソフトで露光量を上げてもみましたが、流石にシャドウは黒潰れしているもののハイライトの粘りは予想以上で、目一杯にハイキーに振り切っても嫌味のない飛び方です。何せこういうキャラのカメラですから過大な期待はしていなかったのですが、恐れ入りました。

SONY α9 III, FE 24-70mm F2.8 GM II, 1/16000, F2.8, ISO 51200, Photo by TAK

高感度耐性を見てみましょう。まずは拡張前の最高感度となるISO 51200、つまり最も不利な条件での撮影です。最高時速130kmほどの快速列車の車窓風景を完全に止められる、その事実に驚きを隠せません。

SONY α9 III, FE 24-70mm F2.8 GM II, 1/250, F2.8, ISO 3200, Photo by TAK

ISO 3200です。α7 IVなどと比較すると若干ノイジーかなと感じなくもないのですが、階調の幅、解像度、質感表現など、実用上気にせず使えるレベルであると感じます。むしろよくぞここまで抑え込んでくれました。


SONY α9 III, FE 24-70mm F2.8 GM II, 1/500, F11, ISO 250, Photo by TAK

とんがったカメラではありますが、有効約2460万画素から期待する通りの解像性能、階調幅を見せてくれます。このカメラをスナップ専用とする方も少ないかもしれませんが、エクストリームなシーンのみならず、普段の撮影も問題なくこなせることもお伝えしておきます。

SONY α9 III, FE 24-70mm F2.8 GM II, 1/500, F3.2, ISO 250, Photo by TAK

階調、コントラスト、ヌケ。言うこと無しですね。

SONY α9 III, FE 24-70mm F2.8 GM II, 1/3200, F3.2, ISO 1600, Photo by TAK

フリッカーも出ません。これもグローバルシャッターの恩恵です。

SONY α9 III, FE 24-70mm F2.8 GM II, 1/2000, F2.8, ISO 250, Photo by TAK

やはりハイライトの粘りが印象的です。特にS-Log3で動画撮影を行う際は基準よりも明るめに撮影することが多いので、ハイライト耐性に余裕があると助かるのです。

SONY α9 III, FE 24-70mm F2.8 GM II, 1/16000, F2.8, ISO 3200, Photo by TAK

NIPPONのSHINKANSEN、発車時から結構速いんです。でもそれを完全に止めるカメラもIt's a SONYですよ。


PHOTO YODOBASHI

肉眼とは異なる見方を提供する、電子式カメラの完全体

銀塩時代、カメラといえばフィルム巻き上げ機構、光学ファインダー、ミラー、機械式シャッターといったメカ的な要素の集合体でした。それがデジタル化され、巻き上げ機構が不要となり、光学ファインダーやミラーを持たないミラーレスカメラが台頭。シャッターは、機械式に加えて電子シャッターを搭載するモデルが主流となっています。さらに近年では最後の主要なメカ的要素となる機械式シャッターさえも廃した、電子シャッターのみの最新型も登場し始めました。そして、α9 IIIはグローバルシャッターを採用したことで、歪みゼロの撮像をも実現してしまったのです。これまでコスト面などの理由で実現されなかった方式を遂にコンシューマーレベルで採用した本機は、電子式カメラのほぼ完全体と言えるでしょう。そして、デジタルカメラはようやくピュアなデジタル、デジタルとしてこれまでにないほどに自然な姿になったのだなと感じます。クラシックだなと思えるのはもはやカメラ然とした形のみ。α9 IIIはこれまで見えていなかった現実をも映し出す画期的なデバイスです。スポーツ、動物、乗り物など様々な分野で、「決定的瞬間」を次々とアップデートしてくれるでしょう。

ちなみに1/80000秒という間に全てが完全静止しているさまを見ると、「万物は平等」を実感します。正直に言うと少し違和感、冷たさすら感じました。思い出されるのが、あの有名なギリシャ時代の彫刻「円盤投げ」。当時あの動きを静止画で見る手段はあるはずもなく、作者は想像と芸術的理想の中で表現したのかもしれません。あの彫刻が面白いのはブレ表現なしで動きを感じさせてくれるところです。一方、このカメラが捉えた静止画からは動きが感じられない、いや、自分が信じるところの「動感」を感じなかったと言った方が正確でしょうか。「感」とは「風」、真実に人間の想像、要望、あるいは温度のようなものを添加したものだとすれば、真実は冷徹で無味無臭に感じられるものなのかもしれません。カメラオブスクラが発明された頃、画家達は投影されたものをトレースし客観的、写実的描写を追求しました。このカメラが映し出す瞬間もまた、新しい表現の素材となるのかもしれませんね。

こちらからはα9 III発表時の会場レポートもご覧いただけます。詳細なスペックはもちろん、操作部や端子部などもご紹介しつつ、ラケットやバットを振るシーンの動画も掲載しております。ぜひご覧ください。

  • PHOTO YODOBASHI専用の縦位置グリップVG-C5の操作性も抜群。Zシリーズバッテリーを2個装着可能で、長時間撮影の強い味方です。
  • PHOTO YODOBASHIお馴染み4軸マルチアングル液晶モニター。どこもかしこも、一歩先を行くカメラですね。

( 2024.01.29 )

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グローバルシャッターと韋駄天スピードが実現した、これが本当の「カメラアイ」。爆速クリックでよろしくお願い致します。

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横位置と同じ操作感。望遠レンズ装着時のバランスにも貢献します。

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やはり電欲旺盛のカメラです。予備の確保を。

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ガイドナンバー60。全速同調に対応します。

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