PHOTO YODOBASHI

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RICOH GR IV Monochrome, Photo by TAK

RICOH GR IV Monochrome / SHOOTING REPORT vol.1 vol.2 vol.3

続 - なぜモノクロか

簡単に美しいカラー写真を撮れるデジタルのご時世に、モノクロ専用カメラが発売される。昔はモノクロでしか撮れずカラーは憧れであったはずなのに、モノクロ専用のカメラが売れる。そして、モノクロ写真は今なお表現の手段として不動のポジションを維持している。これ、単純に面白いなあと思います。そして「なぜだろう?」と、これまた単純な疑問が湧きます。漠然としたレベルでは「かっこいいから」のような答えは浮かぶのですが、この話題については、一度PENTAX K-3 Mark III Monochromeの記事でも触れております。そこでは「物には色自体がなく明暗のみ。人間はRGBの3色を付けて物を見ている。カラーでしか見られないからこそ、モノクロに魅力を感じる。」といった話をしております。ただ、もちろんそれで語り尽くしたとは全く思っておりません。答えは人それぞれ。いや、質問自体が大きすぎて答えようがないかもしれません。

( Photography & Text : TAK )

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モノクロ専用の圧倒的優位性

ここはまず、GR IV Monochromeという商品が教えてくれる、最も分かりやすい解答からまいりましょう。それはズバリ、高画質です。無論、色という要素以外での話です。Vol.1でお伝えした通り、モノクロセンサーでは1画素が階調情報に専念できるので、補完処理(デモザイキング)自体が不要となり、解像性能がカラー機に比べて飛躍的に向上します。上の2枚は同じシーンをGR IV Monochromeとカラー機であるGR IVで撮ったもので、その一部分を拡大したものです。GR IVのデータのみ、イメージコントロールの「モノトーン」で出力しました。クリックで拡大表示します。さあ、どちらがGR IV Monochromeか。細かい文字などをご覧ください。

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もう一例。草や川面の様子など、やはり違います。いや、GR IVも相当良いんですよ。初代(2005年のGR DIGITALの方)以来熟成を重ねていますし、例えば写真展や写真集といった表現のために使うカメラとしても、いずれのカメラも余裕をもって応えてくれます。ただ、今回の純粋な(色を除いた)画質比較では、GR IV Monochromeに無いのは色だけで、他はMonochromeさんの全勝です。これは仕組みが違うのだから仕方がありませんし、デジタルの場合はそれを理由としてモノクロ機を使う方もおられるでしょう。そして、モノクロ専用を作ってくれること自体、ミラクルです。そんなメーカーは、私の知る限りでは2社しかありません(一般コンシューマー用カメラにおいて)。

RICOH GR IV Monochrome, Photo by TAK


RICOH GR IV Monochrome, Photo by TAK

脳にとって、モノクロは楽で、懐かしい。

ただ、更なる本質が、カメラの性能比較を超えたところにあります。「なぜモノクロか」。K-3 Mark III Monochromeの時とは別の切り口で、思考をこねくり回してみましょう。今回は、自分が絞り出した答え、と言うより仮説かもしれませんが、それを先に言ってしまいます。それは「楽だから」です。「何といい加減な!」と思われたかもしれません。ただ、楽といってもサボるのとは違います。脳の情報処理上、モノクロの視覚情報はカラーよりもシンプルで、高速処理に向いているのではないか、ということです。先ほど触れたPENTAX K-3 Mark III Monochromeの記事の内容に照らし合わせると、そもそも世界はRGBではなくてモノクロなのだから、そのまま処理するのが最もシンプルで効率が良いということでもあります。その意味で、カラーで写すためにカラーフィルターと補完処理が必要になるカラー機も、効率という点ではモノクロ機より低くなります。全てのカラー機はモノクロ機よりお安いのですが、たぶんモノクロよりもお金がかかっています。

RICOH GR IV Monochrome, Photo by TAK

また同記事では、哺乳類は天敵に怯え夜間に生活していた話もしているのですが、実は夜行性だった頃に紫外線や緑の錐体は一旦退化し、視覚情報はモノクロが中心だったようなのです。脳科学的には「マグノ(Magno)経路」と呼ばれる伝達回路を持っていて、これは明暗や輪郭や動きなどを専門に処理します。天敵や獲物が、まずどんなもので、どんなふうに動いているのか。ざっくりしたところから素早く理解しなければ、命を奪われたり、食べ物にありつけなかったりしたのでしょう。

RICOH GR IV Monochrome, Photo by TAK

それが天敵が絶滅して昼間にも活動できるようになると、どんな色でディテールはどうなっているのかといった、より細かな情報を処理するようになります。脳科学的には「パルボ(Parvo)経路」という伝達経路で、これで緑も含めたカラーを再獲得したのです。厳密にはパルボ経路は恐竜時代に一旦休眠後、復活したと言った方がより正確かと思いますが、ここでは深入りしません。大枠の話としてこんな感じ、とご理解ください。

RICOH GR IV Monochrome, Photo by TAK

お昼ですから、当然ランチです。脳科学的にモノクロが圧倒的に優位ですから、モノクロ写真は当然楽です。単に、この写真をお見せしたかっただけです。普段はこんなのばかり撮っています。

RICOH GR IV Monochrome, Photo by TAK

有名な作家の写真展で、モノクロもカラーも大量に展示することがあります。私は高い確率でモノクロの方が印象に残るのですが、皆さんはいかがでしょうか。一枚の写真の前で立ち止まり、じっと見るのも圧倒的にモノクロなのですよね。人物はもちろん、時には食べ物までモノクロの方が綺麗だなと感じることもあります。また、前半モノクロ、後半カラーという構成の写真展で、後半は疲れてしまい歩みが速くなり、一旦退場して後日また見に行くこともあります。理由は色々あると思いますが、ある程度エネルギーを使った後に情報量の多いカラーが来るのはダブルパンチであり、脳がオーバーロード状態に陥りやすくなるのかもしれません。

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こちらの2枚の写真、カラーになった途端、脳が忙しくなったような気がしませんか?割と地味な被写体にしたのですが、それでも脳のプロセス量が増える感覚があります。もちろん普段はカラーでしか見ていないのですが、いざモノクロも見せられると、何だか脳が凪いでいくような感覚に、私はなります。GR IVシリーズを含む一般的なデジタルカメラが面白いのは、撮影時は肉眼でカラーを見ていても、設定すれば撮ったそばからモニターでモノクロの画像が表示されるのです。考えてみれば、これは不可思議な現象です。シャッターボタン一押しで、恐竜時代と現代とを行き来するわけでしょ。脳に直撃インタビューしてみてください。表面上は何ともない顔をしていても、内心ちょっとざわついていると思うのです。話を聞いていくうちに、「フィルム時代は時間的猶予があったんだよ。でも今は大変よ。」と本音を言い出す気がします。

RICOH GR IV Monochrome, Photo by TAK

ただ、カラーになって情報が増えた分、被写体を想像する必要性が減るので、そういう意味では楽なのかも、、、いやいや、ことはそう単純ではないかもしれません。人は情報が増えたら増えたで、その先が気になってしまう動物です。カメラとかレンズとか、一旦足を踏み入れ細かいところを気にし出すと、終わりがないですよね。赤い被写体が、どの程度赤いのか。家具店でカラーチャートを渡されても、その場で答えを出すのは簡単ではありません。隣の色同士の違いなんて考え出したらキリがないのです。なお、今回のカラー写真は、GR IVで撮影しています。Vol.2で取り上げた、GR IV Monochromeにフィルターを付けた変態的なやり方ではございません。

RICOH GR IV Monochrome, Photo by TAK

モノクロになると、少なくとも色についてあれこれ考えることからは解放され、脳の処理量も減り、楽になります。

「もう、がんばらなくていい」

脳は、悟りを授かります。特に恐竜時代から受け継がれた部分は、涙を浮かべるでしょう。

「うわ、懐かしい!」


RICOH GR IV Monochrome, Photo by TAK

楽だから、楽しい。

ということで、なぜモノクロか?今回の解答の試みは、「楽だから」でした。もちろん「楽しいから!」という瞳キラキラの答えも多く聞かれますし、私も賛成します。特に現像時はめちゃくちゃ楽しい。ただ、疲れていては楽しむ余裕もなくなるわけです。色を考えなくていい分、それ以外の要素を追い込むための脳のリソースを確保できるので、楽しめるのではないかと思っています。また、モノクロでありながら細かさを追求するという意味では、マグノ的な中にもパルボ的な要素も感じます。特に階調などはカラー以上にこだわることも多いですしね。まあ人類も常に進化の途上にいるわけで、このデジタルの時代にも少しずつ変わってきているのかもしれません。

RICOH GR IV Monochrome, Photo by TAK

そして、我々は(今のところ)カラーでしか見ることができません。故にカラー写真を否定したり、モノクロとの単純な優劣比較をすることは絶対にありません。ただ、「引き算の美学」「Less is more」などと言われる通り、主題をできるだけ絞り、構図などもよりシンプルにした方が良いというアドバイスは、特に情報が増えるカラーでは重要なのだろうと思います。その点、モノクロは撮った時点で一つの大きな引き算を終えていますから、よりシンプルになりやすい利点はあるでしょう。カラーデータをモノクロに変換した途端、何だか上手くなった気がするのはそのためで、故に「かっこいい」とも感じるわけです。まあ私の場合は100%錯覚なのですが、そんな勘違いもまた、何かにのめり込むためには案外効くんじゃないかなと思います。

RICOH GR IV Monochrome, Photo by TAK

ちなみにレコードにおいて、モノラル盤は根強い人気があります。しかも、単なる懐古趣味から来る人気ではありません。実際、「音が良い」のです。ステレオ盤は左右の信号が左右の溝に記録されていて、ステレオ針もそれに応じて横と縦の両方で振動します。モノラル盤は左右関係ないので、針は横方向のみの振動で済み、ノイズも少なくなります。ステレオ針でも再生は可能ですが、モノラル専用の針で再生するのがベストです(逆にモノラル針でステレオ盤を再生することは絶対に避けてください)。モノラル盤は音がぶっとくて迫力があり、生々しい音がします。そして意外にも立体感があります。さらに、再生時に左右の音をモノラルミックスして1台のスピーカーで鳴らすと、圧倒的な存在感が出て、より明解な音になり、各楽器の位置関係もリアルに感じることができます。理由の一つに、音の出所(定位)がより明瞭になる点があるでしょう。2台で鳴らすとどうしても音がだぶるのですが(普通はそれが当たり前すぎて、気にもしない)、それがなくなることで、音のピントが一層明確になるのです。この話、どことなく、モノクロとカラーの関係にも似ているような気がします。私などは、よくステレオ針を「カラー針」と言いそうになります。


RICOH GR IV Monochrome, Photo by TAK

GV-2で、禁断の楽しさを。

今回も長文駄文にお付き合いいただき、ありがとうございました。もちろん、これをもってしても完全な理解からは程遠いです。せめてここまで読んでいただいたお礼に、禁断のアクセサリーをご紹介させてください。ファインダーを持たないGRシリーズには、外付け光学ファインダーという、特にモノクロ機にとっては悪魔のようなアイテムが用意されています。これをGR IV Monochromeに取り付けてじっくりと覗いて撮影した後にモニターを見ると、いきなりマグノ経路の世界になり、脳がバグるような感覚があります。しかも、ファインダー無しでモニターのみで撮影した時とも違うバグりっぷりです。構図の見当をつけるためとか、見えが素晴らしいという以前に、そもそもこれは脳科学的に、お値段を遥かに超えた、どえらい装置なのだということは申し上げておきます。そしてこのファインダー、世の中が本当に綺麗に見えます。肉眼よりも美しいかもしれません。まだの方は今すぐお求めの上、タイムスリップをお楽しみください。

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デロリアンでも良かったのですが、既にモノトーンなんですよね。

( 2026.09.25 )

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