PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
OM SYSTEM Tough TG-7 / SHOOTING REPORT
OM SYSTEMから登場したタフ系のコンパクトカメラ「Tough TG-7」の実写レビューをお届けします。スマートフォン内蔵カメラの高機能化により、大判センサーを搭載した高級機を除けばコンパクトなデジタルカメラ市場が縮小している中、防水15m/防塵/耐衝撃2.1m/耐荷重100kgf/耐低温-10度/耐結露などスマートフォンにはない魅力を持ったタフ系コンパクトは一定の支持を得て現在も数機種がラインアップされています。OM SYSTEMのToughシリーズは、2012年発売の初代OLYMPUS Tough TG-1から続くロングセラーモデルであり、今回紹介するTG-7は、2つ前となるTG-5から基本設計を踏襲しつつ、外装デザインを刷新し、USBポートをType-C化、Bluetooth搭載によるリモコン対応、縦位置での動画撮影等時代に即したアップデートを行っての登場となりました。フォトヨドバシでもタフ系ならではの機能について、TG-5の実写レビューにて詳しく紹介していますので、こちらもぜひご覧ください。
TG-7が採用しているCMOSセンサーは1/2.33型の12MPというものであり、このサイズのセンサーは多くのスマートフォンで採用されているものです。また全長の変化がないズームレンズを可能とした屈曲光学系(ペリスコープ型)についても、最新のハイエンドのスマートフォンで採用が相次いでいます。前々モデルのTG-5は2017年登場、前モデルのTG-6は2019年登場と、当時のスマートフォンと比べればかなりリードをしていたスペックも、スマートフォンのカメラの著しい進化により現在では肉薄している状況なのは確か。しかしその一方で、今回撮影をして感じたのは、タフ系機能だけではないこのカメラの魅力でありました。よろしければ、お持ちのスマートフォンでの撮影画像を思い浮かべながらご覧いただければと思います。
( Photography & Text : Naz )
最初に感心したのは、スイッチオンから撮影まで片手でも完結できる確実性と速写性の高さ。当たり前のことですが、電源ボタンを押して、手摺りの上にカメラを置き、シャッターボタンを押せばこのカットが得られるわけですから、ロックを解除してカメラアプリを起動して…というスマートフォンの操作体系よりずっとシンプル。そしてタッチ操作ではないため、手袋の着用有無にも影響がなく、例え水中でも起動可能な物理スイッチの確実性は専用機だからこそ。
続いて感心したのはレンズ性能の高さ。スペース効率から「小さく・薄く」を求められるスマートフォンと比べ、TG-7では光学系に使えるスペースも格段に大きく、それ故にレンズ性能を確保しやすいようです。その違いは、画像ではなく「写真が撮れる」と感じさせてくれるもの。安定した描写は画面の隅々まで行き渡ります。なお、小さいセンサーのため被写界深度はかなり深くなり、このくらいの撮影距離ですとパンフォーカス状態となりますが、十分な立体感がありますよね。窓ガラスを挟んでいる人物と階段そして海、画面に奥行きを感じ取れるよう上手に描き分けてくれました。
フルサイズ換算25mm相当となるワイド端(4.5mm)の開放から1段絞って中景〜遠景を撮影しました。12MPでは解像感が不足するかなと思いましたが、センサーサイズとのバランスを踏まえるとひとつの最適解なのでしょう。手前の岩場や海面の波、遠景の島を含め緻密に描いてくれました。過剰なシャープネスのかからないナチュラルな写りに好感が持てます。
一方こちらはテレ端(25mm)の開放。フルサイズ換算100mm相当の画角ですから、遠くのものを引き寄せたり、パースをつけたくないテーブルフォトなど使い出がありますね。このカットでは奥の人物にピントを置きましたが、大きくボケまではしないものの、手前の木々の葉は被写界深度から外れました。回折の影響も出そうですから、あまり絞り込まない方がいいでしょう。
接写はとにかく強力です。作例のような小さな被写体を撮るだけでなく、レンズ先端から1cmまで迫れる「顕微鏡モード」にはじまり、拡大率や深度をコントロール可能な4つの撮影モードを搭載しています。サムネイルはワインのコルク栓を撮影したもの。そのままではカメラの影が写り込んでしまう程の距離感です。前後のボケ味も期待以上の良さ。ここまで寄ればボケ量はかなり大きくなりますから、被写界深度を深く取りたい場合は「深度合成モード」により、コントロール可能です。カートにありますオプション品のLEDライトを併用するとより本格的な撮影が行えます。
窓の外から強い陽射しが射し込んでいます。光源の対角上に赤いゴーストが出ていますが、強い逆光でも画が破綻するようなことはありません。最前面に樹脂製の保護カバーがあり、レンズよりもそこに影響が出ているように感じました。屋外と室内の輝度差を考えると、ダイナミックレンジも結構広いですね。空のトーンを残しながら室内の壁や人物が黒潰れしていないところは立派です。裏面照射型のセンサーとOM-D E-M1 Mark IIにも採用されている画像処理エンジン「TruePic VIII」を採用したことで成せる技なのでしょう。
最も感心したのがこのカット。画面の端であろうと直線を直線のまま写し取れ、しかも画質が全体で安定しています。レンズ性能の高さがよく出ていると思います。スマートフォンではなかなかこうは撮れません。赤く染まり始めた西の空を反射した窓ガラスの質感も良好です。
ISO 400ぐらいまでは劣化を感じない十分に常用可能な画質。ノイズも見られませんし、葉の艶感、古い木材や乾いた枯れ葉の質感等もしっかりと描いてくれています。なお、最高感度のISO 12800。まあそれは非常用としても、ワイド端での開放F2とセンサーシフト式の手ぶれ補正、それにこの感度を組み合わせれば結構強力と言えるのではないでしょうか。
こんな写真を撮ってみたくなるのも、写真が撮れるカメラだからこそ。
タフ機能だけではない、写真画質も得られる「カメラ」でした。
いかがでしょうか。スペック競争まっただ中のスマートフォンに比べれば全体的に控えめなスペック故、一見地味に感じることもあるでしょうが、使ってみて感じたのはスペックだけではない質の高さとバランスのよさ。5000万画素や2億画素というような画素数すら実現しているスマートフォンからすれば12MPというのはなんとも少なく感じてしまうものです。でも、フルサイズセンサーでさえ高画素機を除けば24MPが主流という中、12MPは必要にして十分な解像感と広く感じるダイナミックレンジを実現するひとつの最適解なのだと思います。それは、TG-4からTG-5で画素数を16MPから12MPへ減らしたことからも頷けます。また、もしこのカメラのセンサーサイズをより大きくすれば、光学系に無理が出て周辺画質は落ちるのかもしれません。また多くのスマートフォンでは広角/標準/望遠で異なるカメラを切り替えているものが多く、その中で高画素を謳うものは限られており、TG-7のように全ての焦点域で同じ画素数、そして安定した写りを実現してくれるわけではありません。
タフ系ということもあり、アウトドアフィールドでその真価を発揮するカメラではありますが、個人的にはハイキングや登山に持ち出すサブカメラとしてとてもいいなと感じました。バッテリーの持ちも意外とよく、GPSを稼働して移動のログを取りながら撮影をしても、命綱でもあるスマートフォンのバッテリー消費を圧迫しないという安心感。そして撮影時に緯度・軽度から温度や気圧まで記録しておける便利さに加え、目にした植物や昆虫等により迫って記録可能な強力なマクロ機能。これまでスマートフォンで兼ねていたサッと撮れる記録用カメラの画質をアップデートするひとつの選択肢となるように感じました。
( 2023.11.21 )
ズームレンズ搭載ながら、全長に変化のない薄型ボディを採用した使い勝手のよいカメラです。アウトドアでの使用頻度が高い方にはより目立つ赤いボディがおすすめです。
日常使用が多い方には、目立ちすぎない黒はいかがでしょうか。
低温下で使用される場合など予備バッテリーがあると安心です。
タフ系とはいえ、大事な液晶パネルに傷がつくのは嫌ですよね。
落下に強くなるシリコンケースも用意されています。
※シリコンケースと本体の間に砂が入ると傷がつきますので、ご注意ください。
頑丈さが売りですが、大切に扱いたい方にハードケースもご用意。
最短1cmでの撮影等、顕微鏡モードを活用される方は、こちらも揃えておくと便利です。
顕微鏡モードよりもう少し離れた接写にはこちらがおすすめです。
水深45mまで対応するハウジング。本格的なダイビングでもお使いいただけます。