PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
OM SYSTEM OM-1 / SHOOTING REPORT
新生「OMデジタルソリューションズ」から、待望のフラッグシップミラーレス一眼カメラがついに登場です。その名も「OM-1」。今から50年前の1972年にデビューしたあの世界最小最軽量一眼レフと、同じ名前です。このことからも、「小さくて高性能」をこれからも貫くのだという並々ならぬ決意が見てとれます。これまでのOM-Dシリーズのフラッグシップポジションといえば、圧倒的パワーの「OM-D E-M1X」(以下「E-M1X」)と機動力の「OM-D E-M1 Mark III」(以下「E-M1 Mark III」)の2台が担ってきました。無論いずれも高画質で完成度の高いカメラですが、そこから更にどう進化させてきたのか。ルックス的には「E-M1 Mark III」のスタイルを継承しているようですが、スペックの上では新規のセンサーに処理エンジン、AFの強化が目立ちます。また、EVFの解像度アップも嬉しいポイントです。今回はこのあたりを中心に検証しながら、実際の使用感なども含めてレポートしてまいります。
( Photography & Text : TAK )
LOOK & FEEL
「OM-1」の名がまぶしい正面。軍艦部左肩のラインが水平になっていて、「E-M1 Mark III」の撫で肩からキリッとした印象に変わりました。カッコいいですね。社名は変わりましたがペンタ部には「OLYMPUS」の文字が残されました。あらゆる環境で確実に仕事をしてくれるフラッグシップとしてはかなり軽量コンパクトな部類ですが、マグネシウム合金ボディはソリッドそのもの。また、グリップ部を高く取ることで握っても小指が余ることはなく、しっかりとホールドすることができます。
シャッターボタン周りは「E-M1X」のスタイルを継承。ダイヤルが囲む「E-M1 Mark III」と異なる点です。一方電源レバーは「E-M1 Mark III」と同様ボディ上部から操作する仕様になっており、背面から操作する「E-M1X」と異なっています。操作系は両巨頭のハイブリッドといった感覚でしょうか。
バリアングル式の背面液晶は162万ドットと解像度が向上し、より見やすくなりました。メニューも一新されましたが、既存ユーザーはもちろん初めて「OM」を使う人にも分かりやすいだろうと感じます。ハイレゾショットなどの合成系の特殊撮影は「コンピュテーショナル撮影」というカテゴリー内に一括。カメラからスマホまで「computational photography」が定着してきたのでしょうし、「どんどん使ってね」ということでもあろうと思います。ファインダー右の「AF-ON」と「AEL」ボタンはそれぞれ独立。操作性が格段にアップしました。
SDカードのダブルスロット。両方ともSDXC UHS-II対応です。ISOボタンの位置は「E-M1 Mark III」とほぼ同じです。
OVERVIEW
スペック上の最大のトピックは新型センサーでしょう。4/3型Live MOSセンサーの画素数は「E-M1 Mark III」と同じ、「E-M1X」とはほぼ同じですが、従来の「表面照射型」から「積層・裏面照射型」へと進化しました。表面照射が裏面照射になり、それがさらに積層型に。つまり一気に2段階進化しまして、これは相当効くと思われます。表面照射に対する裏面照射の利点は、マイクロレンズ、カラーフィルターを通過した光を最前列で受け止められること。間に配線層が介在する表面照射より光のロスが減少するので、高感度特性などが向上します。「積層型」は画素を取り囲んでいた回路領域を画素の下に移動させたタイプで、1画素の領域を拡大したことで受光面積を増やせる利点があります。盛大にかいつまんで言えば、受け止める光の鮮度が上がり画素自体も広くなったことで、同じ画素数でも全く別物の画質が手に入るということです。「フルサイズやAPS-Cに比べてセンサーサイズが、、、」という方、下の細かいところは飛ばしていただいて、まずは作例をご覧ください。
OM-1 | E-M1 Mark III | |
---|---|---|
イメージセンサー | 4/3型 裏面照射積層型 Live MOS センサー | 4/3型Live MOS センサー |
有効画素数 | 約2037万画素 | 約2037万画素 |
画像処理エンジン | TruePic X | TruePic IX |
画像ファイル形式 | JPEG、RAW(12bitロスレス圧縮)、JPEG+RAW | JPEG、RAW(12bitロスレス圧縮)、JPEG+RAW |
手ぶれ補正効果 | ボディー単体 補正段数: 7.0 シンクロ手ぶれ補正時 補正段数: 8.0 |
ボディー単体 補正段数: 7.0 シンクロ手ぶれ補正時 補正段数: 7.5 |
ファインダー形式 | アイレベル式OLEDビューファインダー、約576万ドット | アイレベル式液晶ビューファインダー、約236万ドット |
ファインダー視野率 / 倍率 | 約100% / 約1.48倍~約1.65倍 | 約100% / 約1.30倍~約1.48倍 |
AF方式 | ハイスピードイメージャAF | ハイスピードイメージャAF |
AF検出輝度範囲 (ISO100相当、F2.8レンズ使用) |
低輝度側(-5.5 EV) / 高輝度側(19 EV) | 低輝度側(-3.5 EV) / 高輝度側(20 EV) |
測距点 / 測距点モード | クロスタイプ位相差AF(1,053点)、コントラストAF(1,053点)/ Allターゲット、Singleターゲット(1点)、Smallターゲット(9点)、Crossターゲット(39点)、Middleターゲット(63点)、Largeターゲット(165点)、カスタムターゲット(点数、移動ステップ数設定) | クロスタイプ位相差AF(121点)、コントラストAF(121点)、オールターゲット、シングルターゲット(標準)、シングルターゲット(スモール)、グループターゲット(5点)、グループターゲット(9点)、グループターゲット(25点)、カスタムターゲット(点数、移動ステップ数設定) |
フォーカスモード | シングルAF (S-AF) 、シングルAF (S-AF+MF) 、コンティニュアス AF (C-AF) 、コンティニュアス AF (C-AF+MF) 、マニュアルフォーカス(MF) 、追尾AF(C-AF+TR)、追尾AF(C-AF+TR+MF)、プリセットMF、星空AF(S-AF) 、星空AF(S-AF+MF) | シングルAF(S-AF、S-AF+MF)、コンティニュアス AF(C-AF、C-AF+MF)、マニュアルフォーカス(MF)、追尾AF(C-AF+TR、C-AF+TR+MF)、プリセットMF 、星空AF(S-AF、S-AF+MF) |
標準出力感度 |
AUTO:LOW(約80相当) - 102400 マニュアル:LOW(約80相当、100相当)、200 - 102400 |
AUTO:LOW(約64相当) - 6400 マニュアル:LOW(約64相当、100相当)、200 - 25600 |
連続撮影速度(最大) | 約120コマ/秒(静音連写SH1) | 約60コマ/秒(静音連写H) |
ピクチャーモード / アートフィルター |
ピクチャーモード:i-Finish、Vivid、Natural、Flat、Portrait、モノトーン 、カスタム 、水中、カラークリエーター、アートフィルター アートフィルター:ポップアート、ファンタジックフォーカス、デイドリーム、ライトトーン、ラフモノクローム、トイフォト、ジオラマ、クロスプロセス、ジェントルセピア、ドラマチックトーン、リーニュクレール、ウォーターカラー、ヴィンテージ、パートカラー(18色)、ブリーチバイパス、ネオノスタルジー |
ピクチャーモード:i-Finish、Vivid、Natural、Flat、Portrait、モノトーン 、カスタム、eポートレート 、水中、カラークリエーター、アートフィルター アートフィルター:ポップアート、ファンタジックフォーカス、デイドリーム、ライトトーン、ラフモノクローム、トイフォト、ジオラマ、クロスプロセス、ジェントルセピア、ドラマチックトーン、リーニュクレール、ウォーターカラー、ヴィンテージ、パートカラー(18色)、ブリーチバイパス、ネオノスタルジー |
動画記録方式 | MOV(MPEG-4AVC/H.264) C4K 〜60p MOV(HEVC/H.265) C4K 〜60p |
MOV(MPEG-4AVC/H.264) C4K 24p |
サイズ | 約134.8mm(W)×91.6mm(H)×72.7mm(D) | 約134.1mm(W)×90.9mm(H)×68.9mm(D) |
本体重量 | 511g | 504g |
PHOTO GALLERY
階調の厚みがグンと増したことが、数カット撮影してすぐに分かりました。強烈な光線状態にも関わらず、ハイライトからシャドウまであらゆるトーンが滑らかに再現されています。何よりハイライトの描き方にしびれました。これまでは露出をアンダーに振り切る感覚で臨んでいたようなシーンですが、OM-1ならオーバー側に振る自由が手に入ります。つまり、これまで以上に感じるままに光に向き合っていけるのです。ガラスの反射、透明度の再現、そしてまだ「フォーサーズ」だった初代のE-1やE-300を思わせる深みのあるオリンパスブルー。解像度もちょっとこれまでとは別物ですね。
こちらも露出を上げ気味に撮りたくなるシーンですが雲の描写もご覧の通りで、白飛びするまでかなり粘ってくれます。階調性に余裕が出ると、当然のことながら画作りにも幅が広がります。解像力も近景から遠景まで高い水準が保たれており、色再現もニュートラルでありながらメリハリもしっかりと感じられます。
何でもない被写体でこそ、違いが出る。カメラ界の密かな言い伝えを地で行く高い質感表現にも目を奪われます。平面状の細かな凹凸がリアルに再現され、手に触れた感触や木の匂いさえ伝えてくれそうな、緻密な画作りです。ここまでのリアリティは解像力、コントラスト、階調のバランスがなければ再現できないでしょう。地味なカットですが、「やっぱ違うわ」と現場で声が出てしまったもので。
高感度耐性の確認を。中央下の「5」の見え方のクッキリ度を、ISO 6400あたりまで見事に保ってくれたことに驚きました。ISO 12800も十分実用に耐えます。あ、申し遅れました。576万ドットの高解像EVFの見えがこれまた素晴らしいのですが、その像の上でも高感度耐性がよく判ります。ISO感度をグリグリ上げていっても、音を上げる気配がなかなか見えてこないのですよね。
ここまでOM-1の画力を確かめてまいりましたが、次元が変わったことを確信しました。光をたっぷり受け止めるセンサーと、賢いTruePic Xがもたらす恩恵は絶大です。分厚い階調に精細な描き込みに、メロメロです。
続いてAFを見ていきましょう。強風でなかなか飛んでくれない水鳥。持ち合わせたレンズのテレ端は200mm。ちょっと途方に暮れそうになったところで、パンを持った親子が登場。チャンス到来です(笑)。エサを奪い合うヒドリガモ達の瞬間を捉えました。ディープラーニング技術を応用したAIによる「インテリジェント被写体認識」が認識できる被写体は、フォーミュラーカー・バイク、飛行機・ヘリコプター、鉄道、鳥 、動物 (犬、猫)と多彩。早速「鳥」を選んでカメラを構えると、すぐにファインダー内のほぼ全ての個体が白い四角に囲まれ検出完了、AFが追尾を続けます。ご覧の通り鳥たちは激しく動き回りながら浮上したり潜ったりを繰り返していたのですが、浮上した瞬間から高精度で検出してくれました。それも画面内のほぼ全ての個体に対して、です。複数の戦闘メカを同時にロックオンするSF映画のシーンを見ているようでしたが、これは助かります。なにせフレーム内に入れさえすれば良いのですからね。
連写も見てみましょう。先ほどの続きのシーンを、パラパラ動画でご覧ください。「静音連写SH2」で撮影しましたが、この設定ではAF/AE追従、約50コマ/秒、ブラックアウトフリーでの撮影が可能です。ファインダー像が暗くならないのは動体撮影には心強い限りですが、こんなに簡単に撮れちゃっていいのでしょうか。さらに「静音連写SH1」にすると何と約120コマ/秒で撮れてしまうのですが、気がつけばカードがいっぱい、後で見るのも大変なことに(笑)。これほどの枚数をサラリと捌いてしまう「TruePic X」の馬力も頼もしいですね。
もう少し引いても良かったのですが、振り向きざまの一瞬でした。瞬発力の高いAFはストリートでも真価を発揮します。やはりシステム自体が小さいというのは素晴らしいですね。スナップも楽しくなります。くどいようですが、「色んな白」の描写が本当に素晴らしい。
AFの測距点は1053点。カバー率100%を誇り、画面の端っこでもAFが可能です。しかも全画素位相差検出対応なので、画面のどこに被写体があっても高精度で測距してくれます。しかも組み合わせるレンズ次第では–8EVの低輝度から検出が可能というのですから、無双というほかありません。実際使ってみてストレスを感じることは全くなく、撮影に没頭することができました。
夕日を受けキラリと輝く船体がこれまた美しく描かれていますが、水面の描写にも目を奪われました。シャドウ側でもしっかりと透明感があります。新型高性能センサーと画像処理エンジンが成し得る、豊かで丁寧な画作りです。実は当日は雪、雨、晴れと天候の変化が目まぐるしかったのです。この光を期待してひたすら現場で待っていたのですが、それができたのも進化した防塵防滴性能のおかげです。
この色味。いかがでしょう。
生まれ変わった「OM-1」に相応しい、ど真ん中のフラッグシップ。
すべては作例の通りです。自分自身が持っていたマイクロフォーサーズに対する既成概念が、綺麗さっぱり吹っ飛んでしまいました。このシステムの持ち味はサイズと画質のバランスの良さ。OM-1では、そのバランスの次元が一気に上がったように思います。あまりの取り回しの良さに忘れそうになりますが、性能的には最上段に構えたフラッグシップモデルですからね。サイズやタフネスといった「らしさ」を維持しながら、カメラの本質である画質やAFや処理スピードなどを一気に向上させてきました。EVFの視認性も格段に高まっていて、これがまた無条件に写欲を掻き立ててくれます。手に吸い付くようなグリップに高品位な操作感もあいまって、ついつい撮影に深く没入してしまう自分がいました。日常はもちろん動き物からデジタルならではの高度な合成系の撮影まであらゆるミッションに対処できる、頼れる道具。持ち出しやすくて、綺麗な画が簡単に撮れてしまうのであれば、導入しない理由が見つかりません。OM SYSTEMが初めての方も、乗り換えや買い増しでお悩みの方も、よろしくお願いいたします。
( 2022.02.28 )
「OM-1」の称号に相応しい画質とパワー。「撮らなくては」を「撮るぞ」に変えてくれる、最新鋭フラッグシップカメラです。
24-200mm相当の高性能万能高倍率ズームレンズのキット。このレンズがこれまたよく写る!OM-1の世界を堪能するには手っ取り早い組み合わせですね。
バッテリーは新型のBLX-1になりました。撮影可能枚数520枚の大容量ですが、予備もお忘れなく。
そのバッテリーが2個同時に充電可能。モバイルバッテリーからの充電も可能な優れものです。
縦位置でも操作感は不変。ボディ同様のタフネス設計。BLX-1バッテリーを1個装填することで、ボディ側の1個と合わせて約1000枚の撮影が可能です。
お気づきの通り、こちらの新レンズでも撮影しておりますがこれがまた素晴らしいのです。レポート公開まで今しばらくお待ちいただく前に導入していただいても間違いのない、新時代の高性能大口径標準ズームです。