PHOTO YODOBASHI

ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン

Nikon D850, ZEISS Milvus 1.4/25, 1/200, F1.4, ISO 800, Photo by TT

Carl Zeiss Milvus 1.4/25

[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ

ZEISS Milvusシリーズからツァイス伝統の焦点距離である25mmの大口径、Milvus 1.4/25 ZF.2(CPU付ニコンAi-S)が登場しました。フルサイズニコン用に過去ラインアップされたツァイスの歴史をざっと振り返ってみると、変形ダブルガウスのプラナータイプ、ディスタゴンタイプなどがパッと頭に浮かびますが、2年ほど前にオータスに続きミルバスが登場。現在Milvusシリーズのラインアップはなんと11本。広角、標準、中望遠と一般的に必要とされる画角は概ね出揃った印象です。ミルバスシリーズの中でも Milvus 1.4/25は、昨今の進む高画素化や未来の高解像カメラシステムにおいても最良のパフォーマンスを得られるようにと、ディスタゴンタイプのエレメントを継承しつつゼロから新たに設計されたレンズになります。13群15枚と贅沢なレンズ構成となっており、質量も1,171gとずっしりとした印象です。サイズや質量に妥協することなく、何よりも光学性能を追求し総金属製の鏡筒にしっかりとした造り。これらのようなことからもツァイスの哲学を感じるのではないでしょうか。外観はオータスシリーズの流れを汲むエルゴノミクスデザインで手への当たりがソフトに。防塵防滴性能においても手抜かりはありません。どこまでも再現性にこだわった至高のレンズをラインアップしてきたツァイスですから自ずとMilvus 1.4/25 ZF.2に対する期待も高まるばかりです。今回は25mmという画角が似合う金沢の街、そして後述で触れますが意外にも馴染み深く振り回しやすい画角ということから東京のスナップシューティングと、2人の編集部員が撮影を担当しました。早速Milvus 1.4/25 ZF.2の織りなす世界をご堪能ください。


Nikon D850, ZEISS Milvus 1.4/25 ZF.2, 1/640, F1.4, ISO 100, Photo by TT

金沢・幻影

Nikon D850, ZEISS Milvus 1.4/25 ZF.2, 1/25, F1.4, ISO 220, Photo by TT

Nikon D850, ZEISS Milvus 1.4/25 ZF.2, 1/125, F1.4, ISO 100, Photo by TT

Nikon D850, ZEISS Milvus 1.4/25 ZF.2, 1/3200, F1.4, ISO 100, Photo by TT

Nikon D850, ZEISS Milvus 1.4/25 ZF.2, 1/500, F1.4, ISO 100, Photo by TT

「弁当忘れても傘を忘れるな。」

金沢にはそんな言葉があります。東京から新幹線で二時間半、以前よりかなり近くなりました。晩秋のこの頃、蟹の解禁とともに足を運ぶ人も多いでしょう。この日の天気予報は「晴れ」。この時期にはめずらしい予報です。ところが足を運んでみると金沢はしとしとと雨模様…。え?あらためて天気予報を見て見ると見事に傘マークに変わっているではありませんか。やってくれます…金沢。と言うより金沢にとって「晴れ」とは雨を意味するのかも知れません。何しろ金沢は雨が一番似合いますから。

今回のお供となるレンズはZEISS Milvus 1.4/25。ツァイス伝統の広角25mmにF1.4の大口径。鏡胴、フードともに金属製で、サイズもさることながら重さも約1.2kgと超ド級のモンスターレンズです。Nikon D850にマウントし首から提げます。ずっしりとした重量感を受けながらも持っているだけで撮りたい欲に見舞われます。もう居ても立ってもいられません。早速、雨の金沢、傘を差しながら歩きはじめました。鈴木大拙館に向かう道中で、あられのように叩きつけるような雨に襲われました。カメラを構える余裕も無いくらいですが、ファインダーを覗けばしずる感のある情景が見えてきます。金沢の冬の風物詩、雪吊りが施された庭園には見頃の紅葉です。28mmより一回り広く、25mmという画角が気持ちよく納まります。先ず絞りはF8くらいにセットしシャッターを落とします。鉛色の空に叩きつける雨。低い露出に少しずつ絞りを開けてシャッターを落としていけば、吸い込まれるような幻想的な世界に移っていきます。開放F1.4で撮れば、わずかな周辺光量の落ちからか幻影の金沢へと誘ってくれました。雨の金沢、なんとも言えない美しい世界です。それからというもの絞りはすべて開放で。絞り込んでいくとその幻惑の金沢から覚めてしまう気がするのです。ひがし茶屋街から陽の沈む主計町へを足を運びました。時折陽が差したかと思えばまた雨が降り出すという「女心と金沢のそら」。晩秋の金沢。雨と共に歩く素敵な旅路でした。

誤解を恐れず言えば、よく写るレンズならいくらでもあります。しかし、写した写真に世界観を感じるレンズはどれだけあるでしょうか。すべて開放で撮ることで独特の世界を写し出してくれたZEISS Milvus 1.4/25。正直まともな撮り方ではありません。しかしピント面のシャープさ、ボケの美しさなどを語ることすらナンセンスに感じるレンズなのです。撮りたい被写体に出会えば素直にシャッターを落とす。その気持ちさえあれば、あなたの作品にこのレンズは息を吹き込んでくれることでしょう。(TT)


Nikon D850, ZEISS Milvus 1.4/25 ZF.2, 1/640, F1.4, ISO 200, Photo by TA

12月・東京

Nikon D850, ZEISS Milvus 1.4/25 ZF.2, 1/8000, F1.4, ISO 64, Photo by TA

Nikon D850, ZEISS Milvus 1.4/25 ZF.2, 1/5000, F1.4, ISO 100, Photo by TA

Nikon D850, ZEISS Milvus 1.4/25 ZF.2, 1/2500, F1.4, ISO 50, Photo by TA

Nikon D850, ZEISS Milvus 1.4/25 ZF.2, 1/5000, F1.4, ISO 50, Photo by TA

ZEISSの哲学を感じる一本

ZEISS Milvus 1.4/25。柔らかな曲線を描くそのルックスに先ず和みました。しかし手にすればズシリと重く、総金属製の鏡筒に綿密・剛性といった観点からも寄せられる信頼性。他とは一線を画すような存在感を感じます。D850にマウントさせ試しに数カット撮った画をモニタで確認すると、もうすでに画が“THE ZEISS”。なんと旨みを感じる描写なのでしょう。その描写には、時代に適応させながらも確固たる信念を持ち続けるツァイスの哲学が宿っていました。これは、、、と期待を胸にロケへ。

広角レンズのMFのピント合わせは光学ファインダーではなかなかシビアなものです。フォーカスエイドに加え、今回はD850ということもありピーキング機能を利用してみたのですが、このアシスト機能が便利でした。チルト式の液晶モニタやピーキング機能など、便利な機能が搭載されているボディーが増えた昨今だからこそマニュアルレンズを使用する用途の幅もぐんと増したような気がします。自分の指先で繊細に主題をコントロールできるという点は何にも代え難いものではないでしょうか。

描写は正直な話、期待以上でした。25mmという少し広々としたフレームの中に浮かび上がってくる被写体。ボケはとろみを帯びつつ自然で美しい。しっかり描いてしっかりボケる。階調再現が豊かだからこそ生まれる立体感。この立体感がもたらすものは力強さやインパクトにとどまりません。最新のボディーに最新のレンズという組み合わせで、レンズに求められる基準云々の話をするのはナンセンス。そう思ってしまうほどツァイス本来の力をまざまざと見せつけられた機会となりました。フルサイズボディーに本レンズをマウントさせると、お世辞でもコンパクトとは言えないサイズ・質量です。今回はすべて手持ちで撮影を敢行しましたが、それを厭わないくらい魅了されてしまいました。(TA)


  • PHOTO YODOBASHI最短撮影距離は25cm。まだまだ近づけるのですが、フードの先端がぶつかりそうです。ここまで寄っての絞り開放となれば非常に薄いピントとなりますが、この金色に輝く櫛の意匠、見事な質感と描写です。また手前のガラスに写り込む柔らかい像はMilvusならではのボケ味ではないでしょうか。(TT)
  • PHOTO YODOBASHI焦点距離25mmでマニュアルフォーカス。ファインダー像でピントを掴むのは難しいものです。しかし電子接点を持つ当レンズとニコンボディの組合せでフォーカスエイドがアシストしてくれます。動体撮影やとっさの時にも瞬時にピント合わせが可能です。そしてどうでしょうこの強烈な立体感。ものすごい力強さです。こんな描写を見せてくれるレンズなんて早々ありませんね。(TT)
  • PHOTO YODOBASHI画面の四隅に被写体を持ってきました。開放での撮影なので、ちょっと意地悪なフレーミングかもしれません。いかがでしょうかこの写り。(TA)
  • PHOTO YODOBASHIフルサイズボディーに1キロ越えのレンズでしたが、まるでコンパクトカメラを操るかのごとく気の赴くままに街を切り取ることができました。ボディーとレンズのバランスが良くハンドリングし易かったというのはありますが、25mmという画角の特性と、カメラ・レンズの魅力がそうさせたのかもしれません。機会があれば、もっとゆっくりじっくり撮ってみたい気持ちに駆られます。本レンズは被写体に彩りを添えるものとして周辺の事象をも写し込んだり意のままの表現が可能。寄ればF1.4というボケ量を利用した画作りなどもいいですね。いろいろ試してみたくなります。(TA)
  • PHOTO YODOBASHI美しい朝でした。思わず一枚。(TA)

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PHOTO YODOBASHI

さらなる高みを求める貴方に

今回レビューを担当した編集部員2人は早速ZEISS Milvus 1.4/25の織りなす世界の入り口を堪能したようです。25mmという画角はスマートフォンカメラの画角がおおよそ22〜28mmに収まることを考えると現代の私たちにとって意外と馴染みのある画角と言えるかもしれません。25mmという画角は意外と画作りのしやすい画角でもあると思います。ぼーっと見ている範囲が28mmくらいの画角なら、それよりほんの少しだけ余裕がある。その少しの余裕が、私たちの遊び心をくすぐる画角だと思うのです。その上大口径ともなれば画作りによって様々な情景を描いてくれるということは想像に難くありません。映画のワンシーンを切り取ったかのような、その瞬間の前後を想像してしまうような描写であったり、F1.4がもたらすそのボケ量から幻影・幻想といった表現も。ZEISS Milvus 1.4/25なら、被写体をフレームのどこに置いても意のままの表現を可能としてくれるレンズなのです。シャッターを落とせば表現したかった世界が広がる。ZEISS Milvus 1.4/25はそれを叶えてくれるレンズと感じました。すでにツァイスユーザーの皆様はZEISS Milvus 1.4/25でさらなる高みを。そうでない皆様もこの際ツァイスデビューも良いかもしれません。ともにツァイスが織りなす世界の深淵を覗きに行きませんか。

( 2017.12.07 )

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いろんな面で手軽さはありませんが、さらなる高みへと誘ってくれるのは間違いがありません。

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数々の場で「100点」と称されるNikon待望のボディーD850。使い始めたら、新たな道が目前に開かれることは想像に難くありません。

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レンズキャップはいくつあってもいい。そう思いませんか。ワンカップのキャップをボディーキャップとして利用している強者もいるとか、いないとか。

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所有すれば、出番が多くなるはずのレンズですから、できれば完璧に保護しておきいですよね。

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