PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
Nikon Z6III / SHOOTING REPORT
ニコンZシステムのスタンダードモデルが第三世代となりました。フルサイズで24.5MPの画素数はそのままに、世界初となる部分積層型CMOSセンサーを採用。このセンサーの読み出し速度は、Z6 IIで採用された裏面照射型センサーの約3.5倍にもなるとのこと。加えて、上位モデルのZ 8やZ 9でも採用された映像処理エンジン「EXPEED 7」も採用し、AFの高速化に加え、フルHDで240fpsのハイスピード動画撮影や120コマ/秒の静止画撮影も行えるなど、Z 6IIから大幅なスペックアップを遂げています。またEVFは約576万ドットへとより高精細になり、最大120fpsのより滑らかな表示も実現。4000cd/m2の明るさは、メーカー発表によれば「ミラーレス史上最も明るい」とのこと。ほかにも最大8段分の手ブレ補正や人物(顔、瞳、頭部、胴体)、犬、猫、鳥、飛行機、車、バイク、自転車、列車の9種類に対応した被写体検出AFなど全方位にわたって強化がなされました。電子シャッターのみとなったZ 8やZ 9と異なり、本機では最高1/8000秒のメカシャッターを搭載、電子シャッターは1/16000秒まで対応しています。外装については、防塵防滴に配慮された設計はもちろんのこと、前面にはマグネシウム合金、上面と背面にはZ 8でも採用された熱可塑性炭素繊維複合材料を採用し、ハードな使用にも十分に耐えうる堅牢性も確保されているそうです。
( Photography & Text : Naz )
- シンプルなレイアウトの軍艦部は、Z 6IIを踏襲しながらも、Z 8やZ 9のボタン配置と統一され、露出補正ボタンが後方へ移動しました。
- 背面ディスプレイはチルトタイプからバリアングルタイプに変更。動画撮影にも最適化され、静止画撮影でもアングルの自由度が高まりました。未使用時に閉じて保護できるのも嬉しいですね。
まずはZ6IIIの売りでもある120コマ/秒の連続撮影を試してみました。画像のサイズとクオリティはJPEG・NORMALに限定されますが、ジェットコースターも120fpsでは、抜き出した1コマ毎の移動量は10cm程。強烈な高速連写は、ストレージの残量さえ十分に確保しておけば「撮れないものはない」と言えそうな説得力がありました。CFexpress Type Bであれば、連続撮影可能枚数は事実上無制限。むしろ注意すべきはつい撮りすぎてしまうことなのかもしれません。
シャッターチャンスへの強さはシャッターボタンを押してからだけではありません。Z6IIIに搭載されたプリキャプチャー機能により、シャッターボタン全押しの1秒前からレリーズの4秒後までを120fpsで連続記録することが可能です。あらかじめフレームは固定しておく必要がありますが、野鳥のようにいつ動くかわからない飛翔の瞬間を捉えるような使い方に適した機能といえます。ここでは撮影カットの中から、連続した3枚のカットを抜き出し、光の当たり具合や羽根の美しさなどから真ん中のカットをセレクトしました。
強化されたAFは速度だけではありません。-10EVの低照度下まで測距可能となり、単に暗い場面に強いというだけでなく、コントラストが低い条件でも食いつきがよいということを実感しました。このカットではフレームの中心に近い椅子の座面、手前側の端から10cm程奥の位置にフォーカスを合わせました。肉眼では座面が暗くピントを合わせることが不可能な条件ですから、いつもなら(コントラストが検出できそうな)座面の端へフォーカスポイントを移動させるところですが、このカメラではそんな配慮は不要でした。
フルサイズセンサーも高画素化の波が押し寄せてはいるものの、24MP付近というのはダイナミックレンジの広さと解像感の両方を得られる最適解のひとつなのだと思います。多くのカメラで採用され、Z6でも三世代にわたり採用されています。実際にここまで克明かつシャープに写りますから、トリミング前提での撮影でもなければ、不足することはないでしょう。データサイズがコンパクトなことも嬉しいですよね。(画像のクリックで原寸画像を表示します)
明るく見えのよい美しいファインダーは、白飛び・黒潰れがしにくく、明暗差の大きな条件でもフレーム内の状況がわかりやすいため、露出のコントロールがしやすかったです。
常用ISO感度は100~64000へと拡大。撮影に使用したレンズは、開放F4通しのズームレンズですから、日中でも薄暗い条件ではISO感度が上昇しがちです。こちらのカットではISO 1400となりましたが、ISO 3200〜6400程度ならノイズを気にせず撮影できる実用性を感じました。
キレのある軽快な動作は、特定の条件でだけ活きるわけではありません。日常的なシーンやスナップでも、撮影テンポを邪魔しないため、楽しく撮影が行えます。
写真は肉眼で見るよりも明るく写しましたが、5段から8段相当へと強化されたセンサーシフト式の手ブレ補正により、動かない被写体であれば1/13秒程度の遅い速度でも手ブレを気にする必要はありません。しっかり構えることは当然ですが、「念のため…」と数カット撮影したすべてが止まっていました。
ホワイトバランスの精度にも感心しました。意図的にコントロールしたい場面を除けば、オートのままで問題なし。マウントしたNIKKOR Z 24-120mm f/4 Sの写りも素晴らしく、Z6IIIとの相性も抜群。Fマウント時代の同スペックレンズも使い出のあるレンズでしたが、画質の安定度やピントのキレ、クリアな写り等、数段次元が上がったように感じました。
全方位に強化。シャッターチャンスにとにかく強いスタンダードモデル。
上位機に迫る高速性に目が行きますが、Z 6やZ 6IIが持っていた扱いやすいスタンダードなフルサイズミラーレスというポジションはそのままに、シャッターチャンスにとにかく強いカメラとして磨き上げられています。動体撮影に強いのはもちろんのこと、キビキビとした動作はどんな場面でもストレスのない快適な撮影に繋がり、意のままに操りやすいという証左でもあります。AFやAE、ホワイトバランスの安定度も高く、本機の開発において目玉となる高速性にだけ注力したのではなく、子細なところまでしっかりと手を入れてきたんだと思わせる、ニコンらしい実直さを感じるものでした。カメラに任せられることを増やし、撮影者は被写体へとカメラを向け続けることへより集中できますね。120fpsというコマ速はハイフレームレートで撮影された動画から静止画を抜き出すのと同じことのように思えますが、撮影者としての意識はそうではありません。撮影時にはやはり緊張感が走りますし、シャッターボタンを押す指先に力が入るものです。Z6IIIがシャッターチャンスに強いということは、そういった緊張感を持つ撮影者にこれまでより多くの余裕を与えてくれるということです。その恩恵はこのカメラを使いこなすほどに強く感じられることでしょう。外観も上位機のデザインを巧みに採り入れ、より精悍な顔立ちになりました。価格はだいぶ上がりましたが、全方位に強化され、カメラとしての次元が数段上がったことを踏まえれば、「それも当然だ」と納得させられるものがあります。もちろん手にすればその差は歴然。本機で撮影することの悦びを知ってしまうと、もう戻ることはできないと思うのでした。
( 2024.08.05 )
人は快適さを知ってしまうと後戻りできません。それはZ 6IIで十分に感じていたとしてもです。
常用域を広げ中望遠もカバーした標準ズームレンズ、Z6IIとの相性は抜群。お持ちでない方はぜひこのキットで始めてください。
バッテリー駆動時間を延ばしてくれる縦位置グリップは、大口径レンズや望遠レンズ等の重量があるレンズを装着した際の重量バランス改善にも役立ちます。
撮影時のバッテリー消費は抑えられているように感じましたが、予備のバッテリーがあれば、消費量を気にすることなくEVFを高フレームレートにできるなど快適性向上にも繋げられます。
メーカー純正の背面ディスプレイのカバーフィルムです。