PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
Nikon Z50II / SHOOTING REPORT
先代モデルの登場から5年が経ち、いよいよII型へと進化したニコンのAPS-C(DXフォーマット)機「Z50II」のレビューをお届けします。今回の進化ポイントとして挙げられるのは、画像処理エンジンがフラグシップ機「Z9」と同じEXPEED 7を搭載した点でしょう。AFの挙動に磨きがかかったのはもちろん、被写体検出機能が手厚くなり(先代での人物/動物に加え、鳥/乗り物/飛行機の計5分野に対応)、動体への追従性も向上したとのこと。従来機でもさほど不満を感じなかったように記憶していますが、そこからさらにシャッターチャンスに強くなったとあれば大歓迎です。また、撮影時に色調やコントラストを変化させることができるピクチャーコントロールシステムに、ダイレクトにアクセスできる専用ボタンが新設されました。これは、31種類から選べるカラープリセットをガンガン活用してくださいねというメーカーからのメッセージではないでしょうか。その一方でセンサーに関しては、従来の2088万画素のDXフォーマットCMOSセンサーを踏襲しています。高画素化が話題になりやすい昨今ですが、もしかするとセンサーサイズと画素数のベストバランスとして、解像力、階調表現、高感度性能のほか多岐に渡るファクターを高次元で叶える域に既に到達していたからなのではないかと推察します。製品のライフサイクルからしてもそれなりに長い付き合いになりますし、そう易々と陳腐化するようなスペックではないでしょうから。そろそろ前置きはこのぐらいにして早速、新生「Z50II」の実力の程をご覧いただきたいと思います。
( Photography & Text : KIMURAX )
有効画素数2088万画素のセンサーが紡ぎ出す画に、何か不足を感じるでしょうか。特大サイズに引き伸ばすようなことがなく、通常の鑑賞サイズであれば十分も十分すぎる解像感が得られます。重なる葉の枚数や状況によって生み出される緑のグラデーション。その濃淡を、明暗を、あますところなく丁寧に再現しているあたりを見るにつけ、余裕すら感じさせる仕上がりです。
被写体検出機能へ新たに加わった鳥さんたちにレンズを向けてみました。忙しく動き回るカモに加え、それをじっと見つめているコサギという異種混合状態。カメラ任せのAFでお手並み拝見という感じでフレームしただけですが、即座に4羽をロックオンです。水面からの不規則な反射もあり、それなりに高コントラストなシーンですが、四角い枠で表示されるAFポイントは彼らの動きにピタッと合わせて動きます。あとはもう良きタイミングでシャッターボタンを押すだけで一丁上がりです。今回の試写で使用したレンズはキットレンズとして用意されている3本を使いましたが、いずれもレンズ内蔵のVR(手ブレ補正)機構の効きはよく頼もしいものでした。
説明が前後してしまいましたが、被写体検出機能はメニュー画面の「AF/MFでの被写体検出設定」から「オート/人物/動物/鳥/乗り物/飛行機/しない」のいずれかを選択できます。特定の被写体が予め決まっている場合でなければ、オートを選んでおけば街撮りスナップでも何かと重宝することでしょう。
II型になり31種類のピクチャーコントロールが可能になりましたが、すべての名称はメーカーHPにてご覧いただければと。もうとにかく種類が豊富ですので、撮りたいシーンに合わせて、表現したい世界観に合わせて、そして気分に合わせてと色々遊べるのがいいですね。気楽に遊べるという意味でも今回、軍艦部右側に新設された「ピクチャーコントロールボタン」の存在は絶大。毎度セレクトを変更する際にメニュー画面からアクセスしなければならないという煩わしさから解放されたのですから。ところで先代モデルには「モノクローム」が用意されていましたが、本機ではそれに加え「フラットモノクローム」「ディープトーンモノクローム」が新たに追加されました。カラー画像を単純にモノクロ化したなと感じてしまうグレーな色調とは一味違う、黒の締まり具合が異なる画も楽しめるようになりました。(各カットをクリックすると拡大表示されます。)
視野率約100%で236万ドットの電子ビューファインダー(EVF)は明るさが2倍になりさらに見やすくなりました。背面液晶モニターはタッチパネル対応のバリアングル式へと変更。動画撮影への対応でしょうが、見上げて、見下げてのスチル撮影時にも何かと便利です。さて、画像処理エンジンがアップデートされたので、高感度性能を確かめるべくISO 1600での撮影です。ご覧の様に下からのライティングですからボトルのラベルに陰影が出やすく、いわばノイズが発生しやすい条件でもあります。その辺りを勘案しつつ全体を眺めてみましたが特に問題は無さそうですね。フォーカスした下段のボトルのシルエットや文字もすっきりと描き出しています。
ISO 3200に上げてみましたが金属の艶感も失われておらず、嫌なざらつきやエッジラインの崩れも見当たりません。
デジタルカメラで再現が難しいと言われる赤をフレーム。見た時の鮮やかさを誇張したり、逆に弱めたりすることもなく、見たままの彩りを忠実に再現しています。
光が乏しいシーンでも安定したなかなかの画力を見せてくれます。解像感や発色はもちろんのこと、トーンの連なりが自然なことも功を奏しているのでしょう。フルサイズセンサーの約半分のAPS-Cサイズセンサーによる画とは思えない厚みを感じさせる描き込みに感心しきりです。
メインとして、サブとして。撮り手の“撮りたい”に呼応する。
撮れる画のリッチさはもちろん俊敏で高精度なAF性能を求めだすと、フルサイズ(FXフォーマット)機の存在がついつい気になってしまうものです。上を見ればいくらでも、というあれですね。とはいえ、軽快さや価格といった諸々を考え合わせると、そこまではなかなか踏み込めないということもあります。そういった点でもAPS-C(DXフォーマット)機であるZ50のII型への進化は、まさに渡りに船といったところでしょう。画像処理エンジンのアップデートによりAF性能や連写性能のアップ、そして高感度撮影の処理にも少なからず好影響が及んでいるはずです。そして何より、カメラ任せで簡単に思い通りの画が残せるのですから歓迎すべき進化です。操作系に関しては、シャッターボタン周りのレバー、ダイヤル、ボタン類の配置は先代モデルとほぼ変わることなく、新たに「ピクチャーコントロールボタン」が加わったことは既に触れました。随分変わったなと感じるのは背面のボタン類で、「DISPボタン」「レリーズモードボタン」「拡大ボタン」「縮小ボタン」の4つを新設。上位のフルサイズモデルにかなり近しい見た目になったという印象です。本機をサブ機として使いたいという人たちにはかなり好ましいアップデートでしょう。また、本機を足掛かりに将来はフルサイズを使いこなしてみたいという人にも、操作系が近しいというのは安心材料かと思います。いずれにせよ、サクサク撮影が進む上に結果としていい画を叩き出してくれるZ50IIです。もしかするとフルサイズ機の必要性を感じない人も出て来るかも知れません(笑)。いやいやホントに冗談抜きで、そのくらい使い勝手がよいカメラですから、末永くメイン機としてあるいはサブ機としてガンガン使い込んでみてください。
( 2024.12.16 )
メイン機に、サブ機にと、何かと使い出のあるII型へと進化しました。
16-50mmの広角ズームがついたレンズキットで手軽にスタート。
標準を中心に18-140mmをカバーするレンズキットは頼もしい。
広角から望遠まで一気に揃うダブルズームキットでフレキシブルに。
一日中撮りまくるなら予備を用意しておいた方がよろしいかと。
ヒヤッとしてからでは手遅れです。同時購入をおすすめします。