PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
Nikon COOLPIX P1100 / SHOOTING REPORT
ニコンの「超々」望遠機が約6年半ぶりにアップデート、モデル名も「COOLPIX P1100」となって登場です。35mm換算で圧巻のテレ端3000mm。24mmスタートの高倍率機で、どのように被写体を捉えるかはともかく、この1台でフレーミングできないものがなさそうな、撮り手に大きな自由を与えてくれるカメラです。前作「COOLPIX P1000」と姿形と機能に大きな違いはありませんが、USBがマイクロUSBからType-Cに、Bluetoothが4.1から5.2にアップデート。その他、鳥や花火のモードが搭載されました。このモデルは小さなセンサーを搭載した、いわゆるコンパクトカメラというよりは、テレ端3000mm相当と高倍率ズームをハンドリングするために最適化するための「形」。開放F値同様、焦点距離(画角)もそれそのものが性能であり、それでしか撮ることができない世界があると思います。ポピュラーな使い道であれば、月や鳥といったところが頭に浮かびますが、とりあえず普段使い的なアプローチでカメラを持ち出してみました。
※ カメラの主たる構成は同様のため、旧機種であるCOOLPIX P1000のSHOOTING REPORTも、ぜひご覧ください。
( Photography & Text : K )
3000mmは空気の揺らぎとの戦い
箱根の芦ノ湖スカイラインにある駐車場(三国峠)から、富士山を撮ってみます。おおよそ直線距離にして28km程度。平坦な道のりだとして、歩いて7時間程度、自転車で1時間40分程度かかる距離です。なかなかですよね。富士山をそれらしく撮影するには、正直300〜400mm程度で十分だろうと思っていましたが案の定です(笑)それでは、焦点距離を刻んで見てみましょう。
400mm相当。35mmフルサイズセンサーのシステムであれば、もうこのあたりでかなり大きなレンズ。大きく写すにも、おおよその目的が果たせます。しかし富士山のように大きな山であっても、28km先となればもう少しクローズアップしたい欲求が。一般的にはテレコンバーター等々の出番ですが、本機であればここからレバーを動かすだけの電動ズーム。
1000mm相当。いや、もう満足でしょう。この時点で一般的なシステムでは撮影自体が大変な領域です。1000mm相当でも空気の揺らぎの影響がかなり見て取れます。
2000mm相当。描写が緩いのではありません、もはやテレ側の描写性能を確認するのが難しい揺らぎ具合。夏場ならさらに影響は大きいと思われます。そして、登山道に人が居れば、そろそろ見えそうな勢い。
そして、3000mm相当。あらためて上の引きの画と見比べてみてください。ここまでクローズアップして写し込めるのです。しかも、手持ちです!挙句の果てに、ここからデジタルズームもできます。
編集部から「横田基地にF-35が来ているらしい」との連絡。向かってみましょう。中央道・石川PAで休憩中に早速轟音が。あわてて車に戻り、カメラを取り出して800mm相当で撮影。2機編成でかなりの高度を飛行していましたが、横田にアプローチするのか2機は旅客機を見慣れているとあり得ない機動を。※カメラが縦位置を認識できなかったわけではありません。 超望遠で動き物を撮影するには、狭い画角の中に収めるべく被写体の動きを頭の中で描きながらレンズを振らないと簡単にロストしてしまいますが、このカメラはあり得ないほどに幅広い焦点距離をカバーするため被写体を見失っても捕捉しやすいのがメリットの1つでもあります。
さっと引いて、捕捉ではなく構図優先で撮影。これが高倍率ズームのメリットであり、P1100ならではの芸当ではないでしょうか。
そして横田基地の滑走路エンド付近に到着。物凄い数のカメラマン達が集結。長玉が一斉に空に向く様は壮観でした。言うまでもなく、P1100のようなカメラで撮影しているのは私だけ。手練れの衆に迷い込む子羊一匹。実際の風体は子羊というよりはゴリラなのですが。しかし、なんとなく撮れちゃうのが凄いカメラです。ただし、動き物で超望遠はこのカメラに限らずMFがベストだろうと思います。昨今のカメラだとAFトラッキングが超絶に進化していますが、撮影時に気を配らなきゃならないことが1つ減るのは大きいですから。P1100はそもそもセンサーサイズの関係もあって被写界深度もあるので、置きピン撮影でわりとイージーなのは発見でした。
ファインダーを覗くのが楽しくなる
画角の制約がないのは本当に自由なことで、無駄にシャッターを切ってしまいます。ただし、殆どのシーンでは400mm程度までで十分(笑)面白いなと思うのは、怠惰なスナップ撮影。人は低きに流れるもので(私だけ)、横着して寄らなくてよいのが妙に面白いのです。広角側から望遠、そして寄りまで実によく写る。画素数がさほどないため、正直なところ画の厚みで感心させられるというものではありませんが、もう必要十分な写り。
少し寄っての撮影。センサーサイズと画素数からは望外のキレの良さといい、トーンといい、満足です。
ズームレンジの広さは、構図整理の自由度。空間の御しやすさは、撮影のテンションを上げてくれます。シャッター切って個人的な「うっしっし」というのが味わいたくて撮るのですから。
風景撮影なんかでもスーパーサブで活躍間違いなし。私は十二分にメイン機になっちゃいますが。大きなボケが欲しい時の、テレマクロ的な焦点距離の大口径レンズがついたカメラをもう1台持てば、さらに良いでしょう。
実は被写体までの距離とズーム量で結構なボケを得られます。したがって、これ1台でわりと何でもこなせてしまうのです。
カメラを置くと翼をもがれるような、圧倒的な全能感を与えてくれるカメラ
つくづく画角の制約からの解放は、撮影意欲を上げてくれるものだなと感じます。姿形はいわゆる「ブリッジ」または「ネオ一眼」的なカメラですが、このジャンルのカメラこそがデジタルカメラとしての魅力を体現していると常々思います。機材はできる限りコンパクトなほうが望ましいし、これまで出来なかったことを実現できることほど素晴らしいことはありません。コンパクトデジタルのセンサーに超望遠・高倍率ズームをただパッケージしたというわけではなく、この高倍率とテレ端の焦点距離を手に入れ、振り回せて、その自由度とトレードオフとならない画を作る。そうして、この姿・パッケージングとなっているのです。このカメラを手に入れると、様々なシーンに貴方を「ブリッジ」してくれることでしょう。手元にあると、手放せない1台になるはずです。
内蔵のポップアップフラッシュ。ISO感度設定オート時の調光範囲は広角側で約0.3~10m、2000m相当時約5~6.6m。2000m相当を超える場合は調光範囲外とのこと。
テレ端の3000mm相当までズームすると、レンズの鏡筒が大きく伸びます。専用フードは付属品。最短撮影距離はレンズ先端より、ワイド端で約0.3m(マクロAF時は約1cm)、テレ端で約7m。
ハイアングル・ローアングルでの撮影に加え、動画撮影時にアングルフリーで自撮りも可能な3.2型バリアングル式TFT液晶モニターを採用。見えのいいEVFは約236万ドットの超高精細有機ELディスプレイを採用。
外部インターフェイスは、上から外部マイク端子、USB Type-C端子、HDMIマイクロ(TypeD)端子、アクセサリーターミナル。ドア式で開閉も容易です。
( 2025.03.04 )
ズーム倍率125倍、テレ端はフルサイズ換算3,000m相当まで伸びました。裏面照射型CMOSセンサーの採用で高感度にも強く、これまで以上に「撮れないものがない」カメラになっています。
超望遠撮影時でも肉眼に近い広い視野で動く被写体を効果的に補足可能なドットサイト。防塵・防滴にも配慮されたヘビーデューティー仕様です。
予備バッテリーはお金で買える安心です。 ※P1100で旧タイプのEN-EL20はお使いいただけません。
複数バッテリーの効率的な運用にはチャージャーの存在が欠かせません。
ハクバのP1100専用フィルム。大切な背面モニターをしっかり保護します。
高品位なHDMI(マイクロ—フル)ケーブルにて、カメラとモニターを直結することで映像出力を大画面でお楽しみいただけます。
大口径レンズの前玉をしっかりと保護する高性能プロテクトフィルター。超低反射のARコート採用。こちらはゴールドエディション。
ニコン拘りのアクセサリー。高品位なステンレス製のアクセサリーシューカバーです。