PHOTO YODOBASHI
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Nikon D6 / SHOOTING REPORT
ニコンからFX(フルサイズフォーマット)一眼レフのフラッグシップボディ「Nikon D6」が発売となりました。新型コロナウイルス禍により開催が1年延期となりましたが、本来であれば2020年はオリンピックにイヤーであり、しかも東京が開催地。ニコンとしてもフラッグシップ機のモデルチェンジイヤーに登場したD6は相当に気合いが入った1台であろうと期待が高まります。ご紹介するD6は、フラッグシップ機がフルサイズ化された2007年登場のD3から、2009年のD3s、2012年のD4、2014年のD4s、2016年のD5と続く流れを汲み、スタイリングや操作体系等を揃え、完成度をより高めていく形で世代交代を進めてきました。実際に歴代のボディはどれも信頼性が高く、D6では(D5以降の4年間で)一般的となったWiFi/Bluetooth/GPS等の無線機能の実装やAFやコマ速のさらなる高速化、ミラーレスカメラ由来といえるライブビュー時の性能アップ、4K動画の強化など多岐に渡り、強力なボディはさらに磨きがかかり、デジタル一眼レフの完成形ともいえるレベルまで強化された印象です。今回の実写レビューでは、前機種であるD5との外観比較等を交えながらご紹介していければと思います。
( Photography : A.Inden / Text : Naz )
LOOK & FEEL
Nikon D6のボディデザインを前モデルであるNikon D5と比較してみましょう。結論から言ってしまえば、基本形状はほぼ同一。機能追加による形状変更が最小限行われています。また、操作体系についても同一とし、D6とD5を同時に併用しても混乱しないよう最大限配慮されている印象です。(※比較写真のクリックで拡大画像を表示します)
ペンタプリズム上部の形状に変化があります。高さも約5mmアップしました。GPSの受信アンテナはこの膨らみの中に実装されたのではないでしょうか。また軍艦部右側のダイヤル部の突起が大きくなっています。
背面のレイアウトはこれまで通り。操作頻度の高いところですから、レイアウトの維持は指が覚えた操作を迷わせません。液晶の表示デザインはより洗練されました。
レイアウトを維持しながらも操作性・ホールド性向上を狙った微妙な形状の変更が行われています。背面上部にあるダイヤルはわずかに直径が大きくなっているようです。
グリップの形状はほぼ同一のように見えます。縦位置操作時のシャッターボタン横にはケンジントンロック用の穴が用意されました。ペンタ部の形状変更はこの位置からだとわかりやすいですね。
左側面。カバー類の基本的な形状は変化ありません。またストラップホールの横に「Wi−Fi」「Bluetooth」のロゴがプリントされました。
外部インターフェイスのレイアウトは変更されました。HDMIと音声入力/音声出力のレイアウトが入れ替わり、HDMIケーブルを固定するためのねじ穴も増えています。またUSBポートがType Cへ変更になりました。
グリップ下部に配されたケンジントンロック用の穴。不使用時にはラバー製のカバーで塞ぐことができます。ストラップホール等で代用することなく、高価なカメラの盗難を防ぐことが可能になりました。
SPEC OVERVIEW
Nikon D6 | Nikon D5 | ||
---|---|---|---|
発売日 | 2020年6月5日 | 2016年3月26日 | |
センサー | タイプ・サイズ | フルサイズCMOSセンサー (35.9×23.9mm) |
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有効画素数 | 2082万画素 | ||
映像エンジン | EXPEED 6 | EXPEED 5 | |
ISO感度 | 常用 | ISO 100〜102400 | |
拡張 | ISO 50〜328000 (ISO 102400の5段増感相当) |
||
測光方式 | マルチパターン、中央部重点、スポット、ハイライト重点 | ||
測光センサー | 18万画素RGBセンサー | ||
測光範囲 | -3〜20EV | ||
電子シャッター速度 | 1/8000〜900秒 | 1/8000〜30秒 | |
メカニカルシャッター | 1/8000〜900秒 | 1/8000〜30秒 | |
フラッシュ同調 | X=1/250秒 | ||
シャッター耐久回数 | 40万回 | ||
連写速度 | メカニカルシャッター | 約14コマ/秒 | 約12コマ/秒 |
LV時のサイレント撮影 | 約10.5コマ/秒 | - | |
ミラーアップ撮影 | - | 約14コマ/秒 | |
静音連続撮影 | 約5コマ/秒 | 約3コマ/秒 | |
連続撮影枚数 | ロスレスRAW (12/14bit) | 184/146 | 200/200 |
圧縮RAW (12/14bit) | 186/152 | 200/200 | |
非圧縮RAW (12/14bit) | 133/105 | 197/102 | |
JPEG (画質・サイズ問わず) | 200 | 200 | |
AF方式 | 光学ファインダー時 | 位相差AF | |
ライブビュー時 | コントラストAF | ||
AF測距点 (選択可能数) |
測距点数 | 105 (105) | 153 (55) |
クロスタイプセンサー数 | 105 (105) | 99 (35) | |
F8対応 | 15 | 15 (9) | |
測距輝度範囲 | -4.5〜20EV(中央以外は-4EV) | -4〜20EV | |
瞳AF | ○ | - | |
顔認識 | ○ | ○ | |
静止画形式 | RAW/JPEG | RAW/JPEG/TIFF | |
動画形式 | MOV/MP4 | MOV | |
動画機能 | 4K UHD(3840×2160)30p/25p/24p フルHD(1920×1080)60P |
||
光学式ファインダー | 視野率・倍率 | 100%・0.72倍 | |
アイポイント | 17mm | ||
背面モニター | 固定式 3.2インチ(約236万ドット)、タッチパネル | ||
接続端子 | USB | USB 3.0、Type-C | USB 3.0、Micro-B |
USB充電 | 非対応 | ||
有線LAN | 1000BASE-T ※転送速度5%向上 |
1000BASE-T | |
HDMI | HDMI(タイプC) | ||
外部マイク | 3.5mmステレオミニ | ||
無線機能 | Wi-Fi | IEEE802.11a/b/g/n/ac | - |
GPS | 内蔵 | - | |
Bluetooth | 4.2 | - | |
使用バッテリー | EN-EL18c | EN-EL18a | |
対応メディア | XQDカード、CFexpressカード | XQD対応モデル:XQDカード CF対応モデル:CFカード |
|
撮影枚数 | 1コマ時:約3580コマ 連続撮影時:約8670コマ |
約3780コマ | |
サイズ | H163×W160×D92mm | H158.5×H160×D92mm | |
重量(バッテリー・メディア含む) | 1450g | 1405g |
スペックについては、この4年間でデジタルカメラの機能としてスタンダードとなった、Wi-Fi/Bluetooth通信機能の追加のほか、GPSアンテナの実装等による機能追加が行われました。センサーや対応ISO感度は同一ながらも、映像エンジンがアップグレードされたことによる処理速度の向上が図られています。また連写速度は約12コマ/秒から約14コマ/秒へとアップ。AFセンサーは数こそ抑えられましたが、全ポイントが選択可能になるなど大幅に機能向上をしています。バッテリーは同一形状ながらも型番は変更となり、無線機能をはじめとした機能アップを果たしながら消費電力を抑え、撮影枚数は同等レベルを確保しています。対応メディアはD5のXQDカードまたはCFカードいずれかのモデルから、D6ではXQDとCFexpressカード両方に対応したモデルのみへとなりました。CFexpressはXQDの上位互換となる規格で、速度はXQDの500MB/秒から2000MB/秒(ともに理論値)まで高速化を果たし、高品位な動画の書き込みや、撮影済みデータのコピーに至るまで高速かつ高信頼のメディアとなっています。
フルサイズ一眼レフカメラとしては最高レベルとなる14コマ/秒のミラーの動きをご覧ください。1959年に誕生した「Nikon F」から積み重ねてきたニコンが持つ制御技術の結晶です。ミラー動作の安定度には改めて驚かされます。
PHOTO GALLERY
2082万画素の実力
デジタル一眼レフカメラのフラッグシップ機は、画素数を2000万画素を超えたあたりに抑えたものが多くみられます。動く被写体を追い、連続撮影をスムーズに続けるためではと想像してしまいますが、Nikon D6の連続撮影可能コマ数がJPEG FINE・サイズLで最大約200コマと聞けば、カメラの機能を最大限活かすための選択だと納得させられます。「画素数が多いほうが上位のカメラ」…なんとなくそう感じている方もいるのではないでしょうか。間違いではありませんが、それだけが正解でもありません
では、高画素化著しいデジタルカメラの世界において、Nikon D6の"2082万画素"は画素数としてどうなのでしょう?
フルサイズセンサー、画素数2082万画素で撮影したデータは、
- 高精細印刷で必要となる350dpiでは、約41×約27cm(少し拡大すればA4見開き420×297mmをカバーします)、十分に綺麗なプリントが出力できる200dpiでは、約71×約47cmのサイズまで引き延ばすことが可能です。A4見開き=A3サイズの印刷に対応できる解像度があれば、特殊な場合を除いてプロユースであっても必要にして十分と言えます。
- フルサイズで2082万画素のセンサーが持つ画素ピッチは、6.4μmと中判デジタルカメラをも凌ぐ1画素の大きさです。画素ピッチが広いということは、1つの画素が受ける光の面積が大きくなり、結果としてダイナミックレンジ(光の再現の幅)が広くなり、諧調(光のグラデーション)も滑らかな画像が得られることになります。また画素ピッチの広さは、高感度撮影時のノイズ発生を減らし、高感度耐性を引き上げる結果にも繫がります。
「たった2082万画素」と思うか「2082万画素あれば十分、むしろ得られるメリットも大きい」と考えるかは、どういう写真を撮るかで変わってくるとは思いますが、フルサイズセンサーの2082万画素がどこまで使えるかは、なんとなくイメージしていただけるのではないでしょうか。
思いっきりアンダーにして草をシルエットに。シャドー部分もデータが残り、ダイナミックレンジの広さが感じられ、こういった再現の難しい画さえもしっかりと成立させてくれます。
逆光でシャドーになっている木の実の色が綺麗に出るまで露出を上げて撮影してみました。写真としては難しい条件です。中心右にある太陽の箇所のデータはさすがにゼロとなってしまいました。
14コマ/秒の連写速度とAF性能
報道やスポーツ等、このカメラが活躍する主戦場では、必要なタイミングでより多くのコマ数が撮れることは瞬間を逃さないためにも必要なものです。ミラーレスカメラには同等以上のコマ数で連写が可能な機種もありますが、それは電子シャッターであるなどメカ連動のない状態のみとなります。Nikon D6ではメカ連動を伴う一眼レフカメラとして最高レベルの14コマ/秒。このレリーズの合間にAFやAEも常時制御されているとなれば、まさしく猛烈な速度であることがおわかりいただけると思います。こちらの動画では、秒間14コマで岩に当たる波飛沫を撮影しました。本レビューの1枚目の作例はこの連続写真の中の1枚です。
続いて連続撮影時のAFの検証をしてみましょう。シーンそれぞれ下記の条件で撮影したJPEG画像をまとめた動画にしています。
- SCENE no.1:遠ざかっていく自転車を14コマ/秒、AF-Cで撮影しました。こうして続けて見ると、もう動画そのものに見えてしまいますね。
- SCENE no.2:続いて後ろから来た自転車が撮影者を抜き去った瞬間から14コマ/秒、AF-Cで撮影しました。一瞬のことでしたので、コマの速度を落とした動画を続けています。抜かれた瞬間は、画面全体がブルーの単色のためフォーカスが合焦していませんが、2コマ目からしっかり食いついています。ランニングしている人が前ボケで入ってきましたが、迷うことなく自転車に乗った被写体を追い続けていました。
- SCENE no.3:近付いてくる自動車を歩道橋の上から70-200mmのズームレンズの望遠端、14コマ/秒、AF-Cで撮影しました。
- SCENE no.4:近付いてくる自動車を歩道から70-200mmのズームレンズをズーミングしながら、こちらも14コマ/秒、AF-Cで撮影。(※自動車のナンバープレートは加工してあります)
ISO 50
ISO 100
ISO 200
ISO 400
ISO 800
ISO 1600
ISO 3200
ISO 6400
ISO 12800
ISO 25600
ISO 51200
ISO 81200
ISOの変化
Nikon D6が対応するISO感度は、ISO 100〜102400。拡張感度としてISO 50相当への減感とISO 328000相当への増感も可能です。ISO感度の変化をシャドーがないハイキーな状況、シャドーがあるローキーな状況でそれぞれ撮り比べてみました。
上の作例は真ん中の鳩の目にピントを合わせています。ツルッとした陶器なのでピントの山が掴みにくく解像感が感じにくい被写体です。感度が高くなるにつれ若干解像度が落ち、コントラストが高くなる傾向が見られます。撮影目的にもよりますが、作品撮りにも使える実用的な感度としては鳩の目がしっかり解像し、陶器の質感も感じられるISO 12800ぐらいではないでしょうか。またISO 50での撮影はISO 100より若干コントラストが高くなったように感じられます。(※サムネイル画像のクリックで原寸画像を表示します)
ISO 100
ISO 200
ISO 400
ISO 800
ISO 1600
ISO 3200
ISO 6400
ISO 12800
ISO 25600
ISO 51200
ISO 128000
ISO 160000
ISO 204800
こちらの作例でも傾向は同じでした。ただコントラストがあるため、ピントピークがシャープに見え、実用感度を超えたISO 204800でも十分な解像感が感じられます。ISO 25600からシャドー部にノイズが若干乗りますが、気になる感じではありません。実用感度ISO 128000を超えるあたりから連写するとコマによって若干色味が変わる傾向が出ましたが、画像処理ソフトでカバーできる範囲ではないかと思います。
どちらの作例も常用のISO感度では手ブレするようなスローシャッターの明るさの下で撮影したものですが、カメラが持つ高感度性能が最高速のシャッター速度を超えてしまいました。これはつまり、あらゆる状況で任意のシャッター速度を自由に選べる能力をセンサーが持っているということ。もちろんISO感度を下げれば画はよりリッチなものになりますが、限界の状況下ではまずは撮れることが大事だとするならば、これほど頼りになるものはありません。
ニコンのフラッグシップ機は一眼レフだ。
いかがでしたでしょうか。デジタル一眼レフカメラとして求められる多くの機能をカバーし、そしてその機能は常にトップレベルが求められるという業務用の高速機、改めて恐れ入ったというしかない出来栄えです。D6の試写を終えた後、最高峰の舞台でスポットライトに照らされ、躍動感あふれた演技をする選手の姿を、このカメラを使えば自分でも緻密に描写することができるのでは?と、確信に近いようなものを感じました。その確信は、クリアな実像を見せるアイレベルの光学ファインダー、手にフィットするグリップ、シャッターが落ちる精度、14コマ/秒という高速連写でも正確に稼働するミラー等の、長い時間をかけてブラッシュアップされてきたひとつひとつのカメラの部品がうまく協調・調和し、撮影時の気持ちよさや「確実に撮れている」という絶大な信頼感へと繋がっていくような気がします。
ミラーレスカメラの勢いがいい時代ではありますが、シャッタータイムラグの小ささと実像が見えるファインダー、一眼レフの良さはこの2点にあります。ただこの2点を最高のものとして提供するには、これまでニコンが積み重ねてきた歴史に裏打ちされた技術力と経験が大きくものを言うのだと思います。デジタルカメラの分野でも技術革新が進んではいますが、その点においてはまだ一眼レフシステムに一日の長があると言っていいでしょう。
ボディだけで重量は1.4kgを超え、コンパクトさとは無縁とも思えるなボディサイズを誇りますが、これもあらゆる状況で不足なく動作する信頼性のために必要なもの。高性能なレンズをマウントすれば、バランスは想像以上によいものです。ましてやこのボディ、手にして高まらない写真愛好家の方はいないのではないでしょうか。
( 2020.06.29 )
ニコンDひと桁シリーズの完成形、登場しました。供給不足もアナウンスされていますので、ご注文はお早めに。
耐久性とクリアな見えを求めるなら、ハイエンドな保護ガラスをどうぞ。この製品、高級機向けにしか作られていません。
バッテリーも最新版にアップデートされました。形状は同じですから、D4以降のボディでしたらご使用いただけます。
スペアバッテリーの数だけバッテリーカバーもお忘れなく。こちらもD4からご使用いただけます。
チャージャーも必須アイテムですね。D4以降のボディでご使用いただけます。
ニコンの大三元は14mmスタート。写りのよさで人気の1本です。
ボディとセットで揃えたい、F2.8通しの標準ズームレンズはこちらをどうぞ。
本レビューでNikon D6へマウントしました望遠ズーム。これを持っていれば間違いのないと言える1本です。