PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
Nikon D4S / SHOOTING REPORT vol.1 vol.2
"D5"と冠して違和感の無い、大きな"マイナーチェンジ"
D4ユーザである筆者は、D4Sを目の前にして「な、何が変わったの??」というのが最初の印象でした。リリースを読むと、映像エンジンを含めたセンサー周りをはじめ、ボディの細々としたリファインが行われた模様。マイナーチェンジなのに、センサーが置き換わるというのも凄い話だなと思いつつロケに持ち出してみました。ロケ中は、D4よりも僅か(10g)ですが重くなっているのにも関わらず、妙に軽さを感じます。それ以外は、撮影している分には大きく変わった印象はありません。しかしPCで画を開いてみて圧倒的な進化を感じるのでした。
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厚みの出た画作り
画を見た第一印象は、D600で感じた豊富な階調とそれ故に高いコントラストをつけられる画の余裕でした。フォトショップでたとえれば、レベル補正のガンマ操作のスライダを切り詰める側に動かした、そんな印象です。もともとデジタルは中庸な画にまとめざるを得なかったのだと思いますが、階調がかなり出せるようになり、ポジフィルムのダイナミックな描写のような、そんなガンマの当て方が可能になったのだと思われます。この傾向はD600がリリースされたときに強く感じましたが、言ってみればD4にD600からの潮流が加わった、そんな印象です。そもそもフラッグシップで、ローパスフィルターにかけられたコストが違います。1ピクセルあたりの画のピュアさは抜きんでているわけですね。これに厚みのある階調特性が加わって、さらに魅力溢れる画を叩き出してくれるようになりました。PCで1枚目のカットを見て実感するほどの違いです。
タングステン光での色味が変わった
D4を使っていて、タングステン光の色味をコントロールするのに苦労していました。少し黄色側に転ぶ傾向にあり、ポジフィルムの描写が頭にこびりついている筆者は、なんとかそれに近づけようと現像ソフトで格闘するのですが、どうにも上手く行かなかったのです。近づけようにもなかなか近づかない。D4Sでは、WBをデーライトにセットするだけでフイルムライクな色再現に近づいた印象です。これは個人的に一番嬉しいポイントですね。
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僅かな変化、しかし格段にホールディングがよくなったボディ
「軽くなったんだよね」とロケ終了後に編集部で印象について話をしていたのですが「いや10g重くなってるよ」と他のスタッフが。人間の感覚なんていい加減なもんだと笑っていたのですが、D4と並べて比べてみようということに。するとグリップ形状などに細かな変更点が。以下、比較画像を掲載していますので間違い探し的に見比べてみてください。筆者も見逃している部分があるかもしれません。
AFはさらに強くなり、高感度特性も磨きがかかった
今回のロケで28-300mmを多用。高感度特性も1-2段程度、実際の各感度より画がよくなった印象で、ISO AUTOに固定しつつブンブンと振り回して撮影できてしまうのですね。高感度の画がよくても、f値の暗い高倍率ズームを用いてAFがダメなら意味がありませんが、D4と比較して格段に迷うシーンが減りました。歩きロケはともかく荷物の量を減らしたいものです。写欲が減退すれば元も子もありませんから。高感度は元々よかったのですが、なによりAFがさらに強力になったのは大変ありがたいことですね。迷うぐらいなら、最初からMF機でスナップ撮影などは行いたくなりますから。D4Sは、D5と呼んでもよいのではないかと本当に感じる進化でした。確実なアシストを必要とする撮影の強力な武器として手にする価値がある1台ではないでしょうか。
( 2014.03.06 )
フラッグシップを買う意味、それは渡航先に入って直ぐに精力的かつ確実に動けるようビジネスクラスやファーストクラスをチョイスする。そんなものかもしれませんね。「よし、撮れた」というフィードバックのための投資です。ファインダー、AFといったボディ周りも、全てがそれに最適化されているのです。そして、そんなヒリつくような撮影なんてないという人が使ったって勿論よいわけです。フラッグシップの世界に触れて、「買っちゃった・・・」という覚悟で、撮影のテンションを上げるのもアリでしょう。
今回のロケ中、2日間ミッチリ撮り歩いて900カット。減った目盛りは二つ。それぐらい持つバッテリーですが、こんなカメラをお買い求めの人にはスペアは必須だろうと思います。
さらに最高感度があがり、加えてよく効く手ブレ補正機構、F値の暗さもなんのその。高倍率にも関わらず画がよいのがこのレンズの美点です。