PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
Voigtlander COLOR-SKOPAR 18mm F2.8 Aspherical
[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ
嬉しいことに、フォクトレンダーのXマウントレンズの拡充が進んでいます。マニュアルフォーカスレンズは、ダイヤル主体でシンプルに操作できるXシステムとの相性も抜群です。パーツのデザインに機能的な必然性があるので、機能美を纏わせたコーディネイトが可能になるのですね。しかも本レンズは、薄型のパンケーキスタイルを採用。ミニマムデザインと機能の両立は、道具に求める美学における一つの理想でしょう。本レンズもマウントから23cmほどしか出ておらず、重さもたったの115g。そのルックスの良さと潔さが故にマウントしただけで8割方満足してしまうのですが、肝心の写りにも唸るものがあります。どうぞご覧ください。
( Photography & Text : TAK )
本レンズの焦点距離は18mm。フルサイズ換算で28mm相当の画角となり、カテゴリーとしては広角です。小さくて広角だと使いやすい印象を持たれがちですが、ワイドに表現する場合は少しコツを要する画角かなと思います。特に中間以遠の距離においては思ったほど広くないというのが私個人が28mmに抱く感覚で、少し引いてみると自分の期待する広さに近づける印象があります。感覚の話なので個人差はありますが、少し遠目から構図を意識していくと広さを実感できると思います。もちろん広く見せる必要がない場合はこの意識は不要です。例えば気になったものを拾い集める場合は、構図は無視してとにかく真ん中に捉えるようなスタイルを取るでしょうか。多面性を持った面白い画角だと思います。
APS-C対応でF2.8なのでボケに大きな期待を寄せるようなレンズではありませんが、逆を言えばピントが合いやすいので気になった空間をサッと切り取るのに適した、速写性に優れたレンズでもあります。階調再現力も素晴らしいですね。中々ややこしい光ではありますが、トーンを丁寧に拾い上げてくれました。
この手のレンズは絞ってパンフォーカスで切り込んでいくのも面白いでしょう。マニュアルフォーカスレンズといっても、一度ピント範囲を決めておけばフォーカシングに要する時間は0秒。生粋のスナップレンズですね。この瞬間も左右の人物配置が整った瞬間に撮影しています。階調もコントラストも絶妙で、移りゆく街のディテールを余すことなく拾い上げてくれました。
ガラス越しとは思えぬ解像力、ヌケの良さに痺れます。専門店として当然のディスプレイですが、真夏に見ると新鮮で面白かったのでほとんど構図は考えずに寄ってみました。先ほどは中間以遠では広さを感じにくいと申し上げましたが、寄ると十分な広さを感じられる上に不自然な距離感の誇張も無く使いやすいところも28mmの特徴かなと思います。「広角は寄れ」という格言がありますが、まさにその通りです。
開放から極めて高い逆光耐性を持つレンズですが、ここは絞って光芒を見てみました。10枚の絞り羽根による10本の光芒、いいですねえ。
最短撮影距離は0.17mと、かなり近くまで寄ることができます。前ボケには柔らかさがありますが、後ボケは距離や被写体によっては賑やかになる傾向はあります。これくらい距離を置くと目立たなくなりますが、これは非球面レンズの特性でもあり、そのおかげで軽量化を実現しているのです。
思わず片足を乗せたくなるようなボラードの質感も素晴らしい。ピントまで少し距離を取ると背景はこのような感じでぼけます。少し角があって背景の選択によりシビアになるかもしれませんが、私個人はまったく気にならないですね。長く合衆国に住んでいたのでボケを最重要視していないからかもしれませんし(あちらでは基本的に絞る人が多い)、とどのつまりは現場に持ち合わせた機材で撮る世界が全てです(笑)。
それにしてもシャープです。開放でこれですから。目立った周辺減光も認められず、色再現のバランスもこれまた良好です。コシナがフォクトレンダー銘で出した初期のレンズは青かった(笑)。それはそれで楽しかったですけどね。
背景が溶けるわけではありませんが、ピントのキレが良いので分離する力が高く、貼り付けたようにも見えます。
フレンドリーで腕が鳴る1本
スペック上は平凡に聞こえますが、実は奥が深いレンズです。この世界には28mmを苦手とする「28mmフォビア」が一定数いるようで、いや、私もその一人で引くことを知らなかった時は特にそうでした。広角だから広いという思い込みと、言うほど広いわけではない現実とのギャップにやられてしまい、いつしか手にしなくなっていた時期もあります。思い込んでいる「広さ」には個人差があると思いますが、21mmや24mmのようにすんなりと撮れず「思っていたのと違う」と感じたら、自分の距離感、ひいてはものの見方を振り返ってみても損はしないでしょう。ボケに頼らないことも軽自動車で運転の練習をするようなもので、上達への特効薬となるかもしれません。少なくとも私はそう信じて、道半ばながら精進しております。既に使いこなしている方には「何言ってんだ」という話ですが。ともかく、レンズの存在すら忘れるほどにコンパクトでルックスも申し分なく、かつ速写性も高い本レンズは一度理解すれば家族のように寄り添ってくれるでしょう。これ1本だけの旅なんて、考えただけでワクワクしませんか。
なお、フジツボ型の携行性に優れたフードも付いてきます。何をすればマニアが喜ぶのか、全てお見通しですね。
( 2024.08.29 )
シルバー自体貴重な選択肢ですが、フォクトレンダーでは常識。現行品のうちに手に入れておきましょう。
まあ多くの場合ブラックから先に売れます。どちらもカッコいいですからね。金属鏡胴もまたフォクトレンダーの常識です。
恐竜といえばT-REX。恐竜フィギュアといえばシュライヒ。ほぼ非可動だとポーズ設定にセンスが問われますが、さすがの迫力です。
T-REXのマーク・ボランのポートレートも収録。個人的ベストは阪急電車と写ったデヴィッド・ボウイ。