PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン

FUJIFILM X-T30 III / SHOOTING REPORT
Xシリーズではエントリークラスとなる、X-T30の3型が登場しました。注目すべきは画像処理エンジンの刷新です。最新の「X-Processor 5」に進化し、画質、処理速度、AFの検出力などが向上。電池消費も抑えられています。動画機能においては、6.2K/30P 4:2:2 10bit(しかもオープンゲート)のカメラ内記録にも対応するという充実ぶりです。また、富士フイルム独自のカラーサイエンス「フィルムシミュレーション」のために用意されたダイヤルを装備しており、撮影時に画作りを直感的にコントロールできます。今ご覧いただいているものは高彩度の「Velvia/ビビッド」モードでのカットですが、豊かな色彩で見上げた時の感動が蘇ってきます。そして驚きのフレンドリーな価格。高性能高画質との整合性が崩壊しているのでは?(笑)スペックを二度見してしまいましたが、サービス満点の富士フイルムではよくあることです。Xユーザー以外の方でも、かなり気になる存在ではないでしょうか。
( Photography & Text : TAK )

裏面照射型約2610万画素が紡ぎ出す、安定の画質。雲の輪郭や立体感、ビルの窓の解像感、明暗の描き分け。高画素の上位モデルと比較しても、特に不足を感じることはありませんよね。使用したフィルムシミュレーションは、同社の定番であるポジフィルムを再現した「PROVIA/スタンダード」です(以下、断りのない限りこの設定)。コントラストも割としっかりしていて、RAWデータに比べて見た時の印象により近くなります。

明暗のもっとはっきりしたシーンですが、いかがでしょうか。スタンダードな画素数を用いるアドバンテージとして、階調性能の高さが挙げられます。これだけの輝度差でも、ハイライトもシャドウも自然に描き切ることができるのです。データ量が抑えられ、メモリの負担が少ないのもポイントです。

肘掛けのツヤ重視で露光したデータのシャドウを持ち上げて現像していますが、やはり元データに階調情報がたっぷりとあるので、編集もしやすいですね。この距離とシャッター速度でもピタリと像が止まりました。軽快さを重視した本機は手ブレ補正非搭載ですが(使用したズームレンズには搭載されています)、画素数を抑えることでブレ耐性が向上するメリットもあります。

道頓堀は相変わらずのカオス。フィルムシミュレーションは迷わず「Velvia/ビビッド」に設定しましたが、街の活気と自分のベルビア(フィルム)の記憶に鑑み、デジタルとしてはやり過ぎなくらいに調整してみました。いや、これくらいはやらないと大阪の街には失礼でしょう(笑)。以下3枚、フィルムシミュレーション遊びが続きます。

「クラシッククローム」はデジタル独自のモードで、従来のフィルムをシミュレートしたものではありません。既存フィルムの再現に終わらず、より深化させ新しいものも産み出していく、富士フイルムの精神を体現したようなモードと言えるでしょう。青みを帯びた雰囲気、濡れた路面の様子はもちろん、シャドウのトーンが美しい。傘の色が渋めに出てくれたのも狙い通りです。やっぱりフィルムシミュレーションは楽しいですね。これがあるから、富士フイルムを選ぶようなものです。

こちらは「ASTIA/ソフト」モード。「Velvia/ビビッド」であれば、車両の前面などのシャドウがどんと潰れます。好みや目的次第ですね。ちなみに彩度において、両者にほとんど差はないと思います。AF認識対象は鉄道にセット。車両の「ツラ」をビタ〜ッと追い続けてくれました。認識対象は他にも動物、鳥類、車、バイク、自転車、飛行機、昆虫、さらにドローンまで、様々な被写体を捉えることができます。このレベルのAF認識が付いたエントリー機も珍しいと思います。

モノクロの「ACROS+Rフィルター」です。素の「ACROS」に加え、「Ye」「R」「G」フィルターを反映させたモードも選べます。この場合は「R」が髪の輪郭の輝きが最も出ていました。世界最高の粒状性を誇るモノクロフィルムの名を冠したこのモードは、フィルムのような自然な粒状感をも再現。また、彩度をゼロにしただけの一般的なモノクロモードとは違って、ミドルからハイエストにかけてはトーンが硬めになり、シャドウは柔らかめのトーンになる特性も持っています。まさに、このカットの通りですね。なお、本機では全20種類のフィルムシミュレーションが搭載されています。どれを選ぶか、考えるだけでもワクワクしますね。

高感度耐性も文句なし。ISO6400で解像感や質感がダメージを受けることもなく、ザラザラも全く目立ちません。これだけ写ってくれれば、スナップなどでは三脚要らずでしょう。わずか378gの軽量ボディ(電池、カード含む)で、ス〜イスイと撮り回れます。


色も足取りも、自由自在。
スタイリッシュでコンパクトな見た目に反して、上位機に引けを取らぬ画質で相当気合の入ったカメラに仕上がっています。身に付けるように気軽に持ち歩けるので持ち出す機会も増え、シャッターチャンスに巡り合う確率も上がります。いざその場に居合わせても、賢いAFがガッチリ捕捉。高画質の静止画はもちろん6K動画だって撮れてしまうのですから、お得以外の何物でもありません。そしてフィルムシミュレーションがとにかく楽しい!軍艦部の一等地に設けられた大型のダイヤルをカチカチと回しながら、画質を作り込んでいく。これは「撮る時に、画作りも意識すると面白いよ」というメッセージです。もちろん、RAW撮影をしておけば、PCで「X RAW STUDIO」を立ち上げカメラを接続すれば、撮影後でも同じことができます。これだけ中身が詰まったカメラが、、、もはや繰り返しますまい。一台目のカメラとしてはもちろん、他のボディをお使いの方にもお勧めします。そして他メーカーのユーザーの方、富士フイルムならではの世界をぜひ覗いてみてください。
軍艦部左側にはフィルムシミュレーション専用のダイヤルが。各パラメーターをさらに自分好みに調整した「レシピ」も登録可能です。シミュレーションの解説を見るだけでも、意識アゲアゲになります。入出力端子は、φ2.5mmステレオミニジャック(マイク、リモートレリーズ兼用)、USB Type-C USB 10Gbps、HDMIマイクロ端子(Type D)を装備。
人類全体が共感する、ダイヤル主体のアイコニックな外観が素敵です。シャッターボタンには機械式レリーズケーブル用のテーパーネジも切ってあります。シャッター速度ダイヤル右手には「AUTO」レバーを搭載。カメラがシーンを判別して、最適な設定までやってくれます。予期せぬシャッターチャンスが訪れた際、使ってみるのもいいでしょう。

チャコールシルバー、シルバー、ブラックの3色から選べます。どれも魅力的で、購入を決断した後に色で迷うパターンです。楽しくお悩みください。
( 2025.12.10 )
今回の撮影で使用したシルバーボディとズームレンズ「XC13-33mmF3.5-6.3 OIS」のキットです。クラシカルな雰囲気をお好みならオススメです。ズームレンズの広角端は20mm相当とかなりワイドで、ストリートから風景までダイナミックに切り取ることができます。
引き締まったブラックのレンズキット。「ザ・カメラ」なルックスが何にも変え難い魅力です。「カメラといったら黒でしょ」、全くもってその通りでございます。
こちらはチャコールシルバーのレンズキット。誰とも被りたくない方。そのカッコ良すぎるポリシーを全力でサポートいたします。
シルバーボディのみをお求めの方へ。
ブラックボディのみ。
チャコールシルバーボディのみ。
バッテリーは予備があった方が安心です。
一本目の単焦点をお探しの方。悪いことは言いません。騙されたと思って、こちらの標準レンズをお求めください。幸せになれます。
交換レンズの増殖。その心理的障壁は2本目から劇的に低下します。こちらの中望遠はいかがでしょうか。間違いなく名レンズで、罪悪感は瞬時に消失します。
液晶もしっかりと保護しておきましょう。
