PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
FUJIFILM X-T1 / SHOOTING REPORT
独自のセンサーによって高い画質を実現しながらもアナログの操作感にこだわったプレミアムなカメラボディと、高性能なXFレンズ群を擁するフジフイルムのレンズ交換式ミラーレス一眼、Xシリーズ。何かと注目を集めるこのラインナップに、新たに「X-T1」が加わりました。ハイエンドのX-Pro1から始まったシリーズは着実に機種を増やし、昨年登場したX-M1/X-A1でラインナップをローエンドまで拡大、そして今回のX-T1は、X-Pro1とX-E2というハイエンド2機種の間に入るポジションに。とはいえX-Pro1より新しい設計ですから、現時点ではXシリーズ最高のスペックを誇ります。1630万画素のX-Trans CMOS IIセンサーとEXR Processor IIの映像エンジンを組み合わせ、フルサイズのセンサーにも迫る勢いの高い画質はX-E2からそのままに、X-T1では加えて大きなトピックが3つ。1つ目は防塵防滴を実現した総マグネシウム製のタフなボディ。2つ目はデジタルカメラのファインダーとして「世界最大」を誇るEVF。3つ目はアナログ的な操作感をより高め、多数のダイヤルを配置して実現した高い操作性。ミラーレスカメラとして考えられるものは全部載せているとも言える贅沢な仕様、まずは作例をご覧ください。
( Photography & Text : Naz )
光を通したガラスは中間のトーンがあまり無くハイライトとシャドーで構成されているため、カメラにはなかなか厳しい被写体です。ローパスフィルターレスのセンサーから描き出される画のキレは素晴らしく、肉眼では滑らかに見えるガラス表面の細かな凹凸さえも克明に描いています。また写真全体を見渡しても、高いダイナミックレンジにより、ハイライトの窓からディープシャドウのテーブル周辺まで、どの領域でも情報を失うことなく緻密に描写しています。
カップ・ソーサーの花柄模様の上に塗られた釉薬による艶やかなガラス質の再現が素晴らしいです。また、テーブルに敷かれたクロスそれぞれの素材の違いも丹念に描かれ、肌触りの違いをしっかりと感じ取れるリアルな質感描写。レースの立体感も素晴らしいですね。
光に透けた赤い葉が美しいです。太陽が画面に入るギリギリのアングルでの撮影ですが、SUPER EBCコーティングは逆光耐性も優秀で、テレ側の開放でも破綻することなくシャープに像を結び、背景の空も滑らかにトーンが連なっています。
X-Trans CMOSセンサーの高い解像力とフジならではの色再現による安定の超高画質。
X-E2に続き、像面位相差センサーを内蔵することでより高速なAFを実現。高速な画像処理エンジンと組み合わせ、カメラ全体がレスポンスよくきびきびと動作します。また、ローパスフィルターレスによる解像感はとても高く、元画像をモニターで等倍表示してみたところ新聞の記事が読めてしまうほどでした。これは解像力あるレンズとそれをしっかりと受け止められるセンサーが高い次元で組み合わさることで実現できたもの。今回の実写レポートでは、キットレンズとなるXF18-55mm F2.8-4で撮影しましたが、単焦点レンズに迫るキレのよい写りは交換レンズとして抑えておくべき1本であり、最初の1本としては十分すぎるくらいです。
フィルムメーカーとして長い時間積み重ねてきたこだわりの色再現はもちろん健在で、特に赤をたいへん美しく再現してくれる印象です。作例ではフィルムシミュレーションモードの「PROVIA」に設定して撮影。ホワイトバランスの精度も高く、ほとんどの条件でオートのままで十分でした。
単なる懐古趣味としてではなく、道具として突き詰めた先にある「カメラらしい」スタイル
数多くのパラメータを設定するデジタルカメラでは、ボタンとダイヤルを組み合わせた“液晶画面ありき”のインターフェイスが主流ですが、Xシリーズの上級機では、独立したダイヤルでの操作体系を大切にしています。軍艦部にはシャッターダイヤルと露出補正ダイヤル、レンズには絞りリングといった具合に機能があるべき場所にあり、カメラをひと目見れば設定値が把握できるようになっているのです。加えてX-T1では、これまでのレンジファインダーカメラのようなスタイルから、EVFを光軸上に移し一眼レフカメラのようなスタイルへとスイッチ。軍幹部左右の各ダイヤルには、ISO感度やドライブモード、測光モードまで専用のダイヤルやスイッチが加えられました。フィルム時代のカメラを彷彿とさせる「カメラらしい」スタイルには共感を覚える方も多いのではないでしょうか。しかしこれは単なる懐古趣味的なものではなく、「撮影する道具」として操作性を突き詰めた結果生まれてきた必然的なものでしょう。上のカットを撮影する際も、目の前を通り過ぎてゆく高速なボートもカメラを構える前に適切な露出値へ設定し、狙い通りのタイミングで捉えることができました。
強化ガラスで保護された液晶モニターはチルト式になり、様々な撮影スタイルに対応可能です。また、デジタルカメラとして「世界最速」・「世界最大」を誇るEVFは、236万ドットの有機ELによる見えのよさだけではなく、その大きさ・広さを活用してマニュアルフォーカス時のフォーカス用画面をフレーム用画面と分けて表示したり、横位置と縦位置とで撮影情報の表示を変更するなど、光学ファインダーにはできない新しい提案もされています。また、拡大、ピーキング、そしてデジタルスプリットイメージと、マニュアルフォーカス時のアシスト方法は多彩。じっくりとピントを追い込みたいときにも、ファインダーの秀逸さを実感できます。
Xシリーズの高感度性能は、画像処理エンジンのチューニングを進めた結果、拡張ISO感度51200まで設定可能に。作例で設定したISO3200が常用できるレベルとなり、もはや特殊な感度ではないと感じさせてくれます。また、開放F値の明るい単焦点レンズに頼っていた夜間や室内など暗所での撮影が、優れた高感度性能と手ブレ補正機能があれば、ズームレンズなどでも撮影できるのです。スゴい時代になりました(笑)。
システムカメラとしての完成度を高めた、Xマウントボディの決定版。
Xシリーズのニューフェイスは、80箇所のシーリングによる防塵防滴に-10度の耐寒性能まで詰め込み、総マグネシウム製のボディによってこれまでにないタフさを備えたカメラになりました。またファインダーを中央に配置したことで、EVF・レンズ・三脚のネジ穴が光軸上に揃い、三脚使用時のフレーミングも緻密に追い込むことが可能です。大きなレンズを使用するときの重量バランスやバッテリー容量にも配慮された縦位置グリップも新たに用意され、多彩なアクセサリーによってシステムカメラとしての完成度が飛躍的に高まった印象です。フルサイズのセンサーに迫る高画質を、コンパクトで軽量なAPS-Cサイズのカメラで実現していることで、これまでよりも多くのフィールドで活躍できるものに仕上がっています。
クラシカルなルックスとは裏腹に、しっかりとトレンドもを抑えています。露出・ISO・ダイナミックレンジ・フィルムシュミレーションモード・ホワイトバランスと5種にもなる多彩なオートブラケティング機能。高速なUHS-II対応のSDXCカードスロットを世界初搭載。Wi-Fiによるスマートフォンとの連携では、撮影データの転送だけではなくライブビュー表示やリモート撮影も可能、等々。メインのシステムとして長く付き合えっていけるXマウントボディの決定版に仕上がっているX-T1。スナップからスポーツ・風景写真まで、あらゆるシーンで傑作を生み出してくれる信頼できる1台です。
( 2014.02.13 )
今回の撮影で使用した18-55mmとのセット。高性能な単焦点レンズの揃ったXマウントレンズですが、荒天時などズームレンズの活躍する場は意外と広いものです。
レンズ交換式Xシリーズユーザーの方はこちらを。バッテリーはシリーズ共通です。
本体に加え、縦位置グリップ内にもバッテリーを収納可能。これにより、700枚とほぼ1日安心して使えるバッテリー容量を確保しました。
グリップを大型化し、小型のボディでもしっかりとホールディングできます。クイックシューに対応したレールを備え、三脚にダイレクトに装着可能。
カメラらしいスタイルのデザインですから、このレザーケースをつけて首から提げるとよりエレガントな佇まいになります。