PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン

FUJIFILM X half / SHOOTING REPORT
発表と同時に大きな話題となりました、富士フイルムのコンパクトカメラ「FUJIFILM X half(X-HF1)」の実写レビューをお届けします。本機は縦長配置とした1型センサーに単焦点レンズを組み合わせており、縦横比4:3のフォーマットから、フィルムカメラ時代のハーフサイズフォーマットのカメラを連想させるものとなっています。カメラの名前に「half」が付くからといって、1型センサーの半分だけ使っているわけではありませんのでご安心ください。搭載される単焦点レンズは10.8mm、フルサイズ換算32mm相当と扱いやすい画角となっています。メーカー曰く「写ルンですで慣れ親しんだ画角」なんだそう。
本機はデジタルカメラに往年のフィルムコンパクトカメラを彷彿とさせるギミックを電子的に搭載したデジタルカメラとなります。遊び心が溢れすぎてしまったのか、そこに注目が集まり賛否両論を生んだわけですが、見方を変えればそれだけ気になる方が多かったということなのでしょう。フィルムメーカーである富士フイルムのカメラで光線漏れや期限切れフィルムまで再現するとは攻めているのは間違いないようです。一方でカメラとしての基本的なところを見ていくと、コンパクトカメラとしては大判の1型センサーにそこそこ明るい単焦点レンズ、ライブビュー可能な背面ディスプレイのほか、光学ファインダーをも備えています。注意点があるとすればJPEGオンリーであること。RAWがないということはフィルムシミュレーションも一発勝負、後がけはできません。それでは縦長写真が続く実写レビューをご覧ください。
( Photography : Naz & A.Inden / Text : Naz )
濃厚な夏の青空。強い陽射しが降り注ぐ条件ですが、白い雲は飛んでしまったものの、シャドウ部は潰れることなく再現してくれました。ダイナミックレンジの広さは大判センサーが持つ余裕といえるかもしれません。
接写はレンズ先端から約10cmまで。画面の中心から外れた位置にピントを置きましたが、周辺も流れず、期待以上にシャープに写してくれました。近接ではボケ量も大きくなりますね、そのボケ味も良好です。
重厚感あるいい雰囲気に撮れました。背面ディスプレイは2.4型と小さく、水平・垂直を正確に出すような精密な撮影にはあまり向いていません。それよりかは、視野率約90%の光学ファインダーで「こんなもんでしょう」とある程度のアバウトさを持ってテンポよく撮影するのが向いているカメラだと感じました。
写り込みのある厚いガラス越しの被写体です。迷いそうな条件でもAFはかなり正確な印象。ただし、光学ファインダーにはAFポイントも露出値も表示されませんので、ピントや露出を外していても撮り終えるまではわかりません。でも、例え失敗していたとしても「まあいいか」と思ってしまえるのは、このカメラに与えられた最も優れたポイントなのだと思いました。
カメラを普通に構えれば縦長のフレームとなりますから、縦位置のカットが多くなるのは当然のこと。ただ縦横比が4:3ですから、3:2のフォーマットほど縦長すぎる感じではなく、慣れてしまえば安定した構図で撮りやすく感じました。このカットのようにカメラを床に置いて上下2分割の構図で撮るなんてのもいいですよね。
懐かしい日付け入りも丁度いい加減に脱力させてくれます。なんか細かいことがどうでもよくなりますよね。
色再現の正確性はさすがといったところです。
基本的にはかっちりと描きながらも、画に厚みがあり、ハイライト部に柔らかさを残している描写に富士フイルムらしさを感じました。なんというか、手を抜いていないように感じるのです。
写真にとって最も大切なのはタイミングなんだと、このカメラを使うことで改めて思い知らされました。

夏のお祭りをフィルムカメラモードで。撮影が終わり、スマートフォンの専用アプリで現像するまで撮影結果を見られないという、敢えてフィルムカメラの不便なところもしっかりと再現。撮影枚数は36・54・72枚から選択可能で、この画像のようにコンタクトプリントのような1本分を並べた画像も一緒に得られます。撮影後には、デジタルカメラで忘れていた「撮り終えた達成感」が得られるという副次的な効果も。フィルムカメラモードでは、AFのほか、往年のフィルムコンパクトカメラが備えていたゾーンフォーカスにも対応。付属の出来のいい被せ式レンズキャップを外し忘れると、未露光カットを量産・・・なんていう昔を思い出す失敗も再現可能です(苦笑)。

巻き上げレバー風の正式名称「フレーム切り替えレバー」で巻き上げる動作を行うと、ハーフサイズのカットを2枚並べてプリントしたときのように連続した2枚を左右に並べた画像が得られます(それぞれ単独の画像も保存されます)。2枚の組写真のようにストーリーを意識して、並べる被写体を選んでみるのも楽しいですね。ACROSのモノクローム写真は、緻密でシャドウの締まりがいいです。

撮影の「楽しさ」全部入りカメラ。
誤解を招きそうな表現ではありますが、本機をひと言で表すと「高級トイカメラ」。これまでトイカメラといえばおもちゃの延長で写りはそれなり・・・というものでしたが、本機はトイカメラ的な撮影の楽しさを持ちながら、ちゃんと撮ればちゃんと写る写真機としての性能をしっかり有しているように感じました。そこがこれまでのトイカメラとは異なるところでしょうか。加えてカメラの造りも意外としっかりしていて、軍艦部のエッジの美しさはXシリーズを名乗るに相応しい高い質感といえるでしょう。強いていえば、絞りダイヤルやメインスイッチと巻き上げ風レバー等の可動部に少々の心許なさはあるものの、ここの質感を上げてしまうと「肩の力を抜いて(初めてカメラを手にした時のように)撮影そのものを楽しむ」という意識から遠ざかってしまっているような気がしました。この「肩の力を抜いて」という撮影体験、意外と忘れてしまっていませんか? 美しい景色や大切な人、特別な瞬間をかけがえのない思い出として記録する。このカメラはそういった心動かすものを写すために存在しているのかもしれません。ファインダーを覗いて撮影していると、そんなことを改めて考えさせてくれるカメラでした。
シャッター周辺。シャッターボタンを同軸としてメインスイッチと巻き上げレバー風のレバースイッチ、露出補正ダイヤルが並びます。
縦長の背面ディスプレイの横にはフィルムカメラの裏蓋の窓のような形状のフィルムシミュレーション表示。背面ディスプレイと同様にタッチパネルで、スワイプで切り替え可能。よく練られた楽しいインターフェイスです。
カラーは3色展開。塗装の質感も良好で、それぞれに格好よさがあります。レンジファインダーの採光窓風の位置にあるのは内蔵フラッシュ。
( 2025.08.29 )
精悍なブラックボディ
クラシカルな印象のシルバー
クールな雰囲気が格好いいチャコールシルバー
背面ディスプレイはしっかりと保護しておきましょう
X Halfにぴったりのフード、こちらはシルバー
こちらはブラック、本体に合わせてお選びください
片手でもしっかりホールドができるサムグリップ、こちらはブラック
ホールド性を高め手ぶれしにくくなるグリップもどうぞ、こちらもブラックです
予備バッテリーもあると安心です
複数バッテリーを運用する方は、充電器も揃えておきましょう
