PHOTO YODOBASHI

ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン

FUJIFILM GFX100RF, Photo by K

FUJIFILM GFX100RF / SHOOTING REPORT

久しぶりにガン!と頭を殴られるかのような衝撃の1台が登場です。いわゆる中判デジタル、富士フイルムで言うところの「ラージフォーマット」のセンサーを搭載したレンズフィックスカメラ。1億200万画素ですよ! もういろんな「?」が頭に渦巻くと思うのです。「止まるのか?」「大きさは?」「レンズ固定?」「値段は?」「何撮るの?」といった感じに。分かります。主要な構成はGFX100S IIと同様ですが、レンズシャッターを搭載、AF速度のアップや内蔵NDフィルター(4段分)を搭載。さらにDCI4K 30pの映像収録に対応し、13+StopのF-log2に対応。外部SSDへの収録となりますが、Apple ProResにも対応し、映像方面の機能実装も抜かりなしときました。はてさて、いったいどんなカメラなのか順を追って解説したいと思います。

( Photography & Text : K )


PHOTO YODOBASHI

センサーサイズを思えば、素晴らしくコンパクトなカメラ

皆さん気になるのは、まずサイズですよね。テストを通じて感じるのは中判カメラを扱っているような印象は一切ありませんでした。135ライクなカメラサイズそのものです。実際のハンドリングの印象は、本当にスナップ撮影などがお好きな人が企画・開発に携わっているのだろうなと感じさせられるものでした。

  • PHOTO YODOBASHIGFX100RFの幅は133.5mm。X-Pro3の140.5mmとX100VIの128.0mmの中間というサイズ感。90.4mmと高さは少しありますが、このコンパクトなボディにラージフォーマットのセンサーが搭載されているのは驚きです。バッテリー、 メモリーカードを含んだ重量は約735g。グリップ形状もよく考え抜かれたホールドしやすいものです。
  • PHOTO YODOBASHI付属品のロープタイプのストラップには肩当てがついていました。フードやフィルターを装着するためのアクセサリーリングと角形フードに加え、49mmのプロテクトフィルターも付属。これらの付属品の作り込みが素晴らしく、実に所有感を満たしてくれます。感心したのがストラップの仕上がりと絶妙な長さ。約116cmと首から提げてダブつかせない適度な長さであり、たすき掛けにも対応できると思います。写真の他に、バッテリー、USB Type-Cケーブル、ACアダプターも付属しています。
  • PHOTO YODOBASHI軍艦部はX-Proシリーズ、X-Tシリーズ、X100シリーズに似たアナログ主体のダイヤル配置。シャッターダイヤルを持ち上げて回すことでISO感度も設定可能。親指で操作しやすい位置に露出補正ダイヤルが並びます。またシャッターボタンにはメインスイッチの他、同軸で前側のダイヤル、デジタルテレコンバーターの機能を割り当てたレバーが縦に並んでいます。その横にはカスタム可能なレバーも配置(初期設定はビューモードの切り替え)。
  • PHOTO YODOBASHI背面には親指で簡単に切り替え可能なアスペクト比切り替え用のダイヤルが備わります。ラージフォーマットのセンサー故に高画素なままクロップ撮影が行えます。クロップなしの4:3に加え、3:2、64:32、6:9、6:7、16:9、1:1等富士フイルムの往年のパノラマカメラTXシリーズや中判のワイドフォーマットカメラ等、9種におよぶ多彩なアスペクト比から選択が可能。
  • PHOTO YODOBASHIレンズ先端の化粧リングを外し、アクセサリーリングとプロテクトフィルターを装着した状態。フードはバヨネット式で装着します。リングは金属製でフォーカスリングと同様の処理が施されています。絞りリングには太鼓型の突起が2箇所設けられ、カメラをホールドする左手の親指と人差し指での操作性が高められています。
  • PHOTO YODOBASHI背面のチルト式ディスプレイは3.15型 約210万ドット。有機ELのEVF(0.5型 約576万ドット)は素晴らしい見えで、EVFの右横にはフォーカス切り替えスイッチ(シングル/コンティニュアス/マニュアル)を配置。その横はアスペクト比設定、AEL/AFLボタン、背面ダイヤル。ディスプレイ横にはコマンドレバーに加え、メニュー、ディスプレイ、再生、ドライブ切り替えのボタンが縦に並ぶ。他のX/GFXのボディ同様に「Q」ボタンによるクイックメニューの表示も可能です。
  • PHOTO YODOBASHIメディアスロットはSDXCのデュアル。ストラップのアイレットにもブラックの塗装が施されています。細かいことですが、金属製のアイレットが減ってストラップが取り付けられなくなるようなことがないように、アイレットの中にはもう一つの金属製の輪が打ち込まれています。
  • PHOTO YODOBASHI左側面にはマイク/リモコン端子、音声出力端子、本体充電にも対応するUSB Type-Cポート、Micro HDMI(Type-D)端子が備わります。

FUJIFILM GFX100RF, Photo by K

専用設計レンズが1億画素の画力を余すことなく解き放つ

GFX100Sのオーナーである私は、このカメラを手にして最初に確かめたかったのがレンズの描写力です。なにせ、固定式の専用設計レンズ。徹底的に合わせ込めるそのメリットは大きいはずで、ファーストショットから案の定な写りでした。GFXシリーズ用レンズの描写力も素晴らしいのですが、さらに1枚薄皮を剥いで純度を上げたかのように見事にクリアな描写。そしてこのボディのコンパクトさです。普段使いできてしまうカメラの画がこれだけの説得力を持つとなると恐ろしい。1億画素となると解像力は全くもって文句なし。なによりも階調に深みと色にも特段の厚みを感じます。どちらかといえば解像力よりも、階調と色味のほうが個人的には写真として効くと思っています。結果として写っているものに奥行きを感じる=立体感に繋がると思うのです。この写った手の説得力に脱帽。ちなみに、ヨドバシ・ドット・コムで生豆からお好みの焙煎具合で珈琲を届けてくれる「たまじ珈琲」のオーナーさんです。

FUJIFILM GFX100RF, Photo by K

35mm F4(35mmフルサイズ換算で28mm相当の画角)のレンズが搭載されていますが、やはりセンサーサイズが大きいため、かなり背景はボケます。そしてレンズの解像力とセンサー画素数のタッグでピントを置いた位置の素晴らしいキレとシャープさが相まって背景との分離が明確であり、いやはや素晴らしい立体感です。窓の外の濃密なトーンも、はじめてブローニーのカラーネガを使ったときの感動が思い起こされます。

FUJIFILM GFX100RF, Photo by K

光量の乏しい雲天、露出はハイライト優先で切り詰めてもシャドーからハイライトまで濃密なトーンで再現してくれます。しかしこのシャープな写りには感じ入ります。

FUJIFILM GFX100RF, Photo by K

搭載レンズは35mm(28mm相当の画角)で正解だと感じます。なぜなら1億を超える画素があるためです。この種のレンズ固定式カメラにはクロップ機能が搭載されているものですが、GFX100RFにも実装されています。ボディ前面・シャッターボタン下の物理的なレバーにその機能が割り当てられていて、積極的なクロップ撮影を推奨しているのだろうと推察されます。レバーを動かすと実焦点距離の45mm/63mm/80mm相当にクロップ可能で、ファインダーおよび背面液晶に焦点距離が表示されます。なお、35mmフルサイズ換算で約35mm/50mm/64mm相当の画角となります。クロップするのはよいけれど、どうも目減りする画素数が気になってしまうものですが、そもそもの画素数が画素数だけに最大限にクロップしても、まだ約2000万画素もあります。そう考えるとゲンキンなもので、現場でガンガンにクロップしてしまうという。このカットは80mm相当で撮影。本当に気兼ねなくクロップできてしまうため、レンズ固定式である画角制約については頭から消えています。撮り手はありのままで撮影したいのはもちろんなのですが、有効な選択肢としてクロップ機能があると捉えられることが大事だろうと思います。


FUJIFILM GFX100RF, Photo by K

「止まる」

ラージフォーマットのセンサーで1億画素、手ぶれ補正なし。「止まるの?」と恐る恐るスローシャッターを切ります。これが予想よりも遥かに止まるという印象です。もちろん低感度側に固定して、通常の手ブレを抑制する撮影作法を無視してシャッターを切ればブレますが、それでも思いの外止まる印象で、実際の撮影でさほどブレを気にする必要はありませんでした。上のカットは雪の中で手持ち、シャッタースピードは1/15秒です。お堀の石垣を照らす照明に舞い散る雪が浮かび上がっているのですが、このシャッタースピードあたりだと雪の流れ方を見るのに何度もシャッターを切りました。驚くことにどのカットも止まっていました。通常、手ぶれ補正搭載有無に関わらず、このあたりのシャッター速度になれば、私は問答無用に感度を上げてしまいます。そんな危ういシャッタースピードですよね。したがって、1/15秒がかなりの高確率で止まるならまったく問題ありません。今回テストとして意図的にシャッターを切るとき以外は、ほどんどISO AUTOで撮影しましたが、低照度下になるとわりとトントンと感度は上がっていきます。もちろん手ブレを抑制するためでもあるのでしょうけれど、ノイズ処理にも自信があるのでしょう。実際、輝度およびカラーのノイズ処理は実に巧みで、解像感を失うかなり手前の段階でノイズの消し込みは止まっている印象です。画素数が1億を超えて、PC等のモニターにおいても実質的にはかなり縮小された状態で否応なく鑑賞することになります。むしろノイズが余計に立体的な画に見せてくれるような気さえします。そうそう、手持ちでどこまで止まるかな〜?と試してみると、1/4秒まで止まりました。やはりレンズシャッターであること、そしてボディ形状が巧みなことが大きいのではないかと感じます。普段使いを考えると、手ぶれ補正機構を入れればどうしてもボディは肥大化します。非搭載であることが、かえって、このカメラのコンセプトを感じさせ、本気で日常にラージフォーマットのセンサーを持ち込もうということなのでしょう。

FUJIFILM GFX100RF, Photo by K

そこまで感度を上げずともシャッター速度を落として撮影できますが、雪を止めたかったためにISO 3200での撮影。素晴らしい切れ味です。露出は出た目からはかなり切り詰めて-2.7EV。黒はガッチリと締まりますがそこから立ち上がるトーンも豊か。路面の具合や濡れた様の再現も素晴らしい。

FUJIFILM GFX100RF, Photo by K

ISO 3200でも1/4秒しか切れない低照度下で、3カットほどアングルをバラして車のリアエンドを撮影しましたが、なんと3カットすべて止まってしまいました。もちろん手持ちです。フィルム時代に中判で似たようなボディの姿のカメラは多々ありました。フィルムは感度の問題があってそもそも高感度で撮るのもせいぜいISO 3200程度でしたが、135のレンジファインダーではあるまいし、中判で手持ちで1/4秒なんて考えられない世界です。マットな塗装を僅かな拡散光が照らしているような状況でしたが、塗装の雰囲気もよく再現され、妖艶に光が減衰していく様を濃密なトーンが再現してくれました。ボケ味も「作り上げた」ようなものではなく、実に自然で好ましいと感じます。私は日頃からWBについては殆ど太陽光で固定ですが、富士フイルムのカメラはWB・太陽光でのグリーン被りが・・らしいというか、実にフィルムっぽい。

FUJIFILM GFX100RF, Photo by K

ドキュメンタリー系のお仕事にもよいでしょうし、旅に持ち出すには最高のカメラだろうと感じます。なにせ荷物を減らすためにカメラシステムを小さくすることで画質を諦めるどころか、特上の画で収められるのです。前述の通り、画素数の目減りを気にしてクロップを戸惑うこともなく、28〜64mm近辺の画角が得られるのであれば、殆どのシーンを捉えることができます。

FUJIFILM GFX100RF, Photo by K

ラージフォーマットのセンサーといえども、35mmで開放はF4です。カメラからはなかなかの距離の人物にフォーカスを置いて、この背景との分離具合です。さらに距離が縮めば、それはもっと明快となるでしょう。そしてフレームに大きく捉えられた被写体の立体的な写りに繋がるのです。


  • PHOTO YODOBASHI 解像力については今更もうわかりきったことですが、センサーに専用で合わせ込んだレンズを搭載し、圧倒的画素数を持つカメラの破壊力を実感してください。クリックで拡大・原寸画像が表示されます。
  • PHOTO YODOBASHI最短は20cm程度まで寄ることができます。背景は大きな石で、実に細々とした意地悪なテクスチャですが、なかなか自然なボケ味のように感じます。

PHOTO YODOBASHI

富士フイルムのフィロソフィを最も感じさせられるカメラ

富士フイルムのデジタルカメラへの参入は実は物凄く古く、私の記憶が正しければ1980年代後半あたりに世界初のデジタルカメラを発売していたりします。間違っていたらごめんなさい。そこはさておき、皆さんもよくご存知のハニカムなセンサーなど、画に対して確固たる哲学を感じさせ、結果としてハード&ソフトのパッケージングのアプローチも実に独創的なメーカーです。35mmフルサイズセンサーを搭載するシステムを持たず、APS-Cサイズのセンサーを搭載するカメラを中心としながら、それ以上の画質ニーズには、35mmを飛び越えてラージフォーマットのセンサーを搭載するシステムを展開してきました。恐らく、APS-Cサイズのセンサーで35mmフルサイズと同等若しくは肉薄する画を作ることができるという判断の元、少しでもコンパクトなシステムで構築し、それ以上のニーズに対しては、35mmフルサイズよりも若干大きく、それでいて645判ほどではないセンサーを採用し、画質でひとつ突き抜けながらもフィルム時代よりも格段にフレンドリーなサイズ感を提供するという考えがあったのだろうと思います。GFX50シリーズ、100シリーズも、中判デジタルを手持ちで扱うということにぐっと近づけてくれましたが、まさかまさか、135ライクなサイズで市場に放り込んでくるとは思っていませんでした。135ライクなミラーレスカメラも、せっかくミラーがなくなったのにも関わらず、最近なぜかサイズが肥大化しつつあります。日々写真を撮るのに、そう何本も交換レンズは持ち歩かず、できれば「もっと小さく」。そう思うことは少なくありません。このカメラはレンズが交換できませんが、普段使いで握るカメラの画質を強烈に底上げしてくれます。1億を超える画素、なにかかしこまって、被写体にまっすぐ向き合って、肩に力が入って・・そんな気にさせられるでしょう。しかし、それをぜ〜んぶ解してください。思いのままに振り回してください。何の気なしに撮ってください。データカードをパソコンに差し込み、モニターで表示される画にいつも驚き感心させられ、腑に落ちる色に階調が、もっと写真を撮ろうという気にさせてくれること請け合いです。気がついたら、いつも手にしている。そんな姿を開発陣の皆さんは思い浮かべていたんじゃないかな、そう思わされるテストでした。そしてラージフォーマットのセンサーを搭載したカメラで、ある意味で富士フイルムが本当に出したかったカメラなんじゃないかなと、一人のカメラ・写真好きとして夢想します。

( 2025.03.21 )

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ボディにブラック&シルバーを用意するあたりが趣味の心をくすぐり、財政健全化・家庭の安寧を破滅的に打ち砕きます。こちらはブラック。レンズ交換できないが故に悩まれる方も多いのかもしれませんが、選ぶものは少ないに限るのが実は写真の極意?

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こちらはシルバー。シルバーもなかなか格好良いです。

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本編で書き忘れましたが、バッテリーはかなり持つ印象です。しかし備えあれば憂い無し、ぜひご一緒に。

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バッテリー2本を充電できる便利なチャージャー。

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