PHOTO YODOBASHI

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FUJIFILM X-H2, XF 35mmF1.4 R, MCEX-11, Photo by Naz

マクロエクステンションチューブ MCEX-11

PHOTO YODOBASHI富士フイルムのXマウント用純正アクセサリー「マクロエクステンションチューブ MCEX-11」を紹介します。マウントアダプターのような見た目のリングですが、このリングのマウントはオス側もメス側もXマウント。何ができるかというと、この中間リングをボディとレンズの間に挿入することで、手持ちのレンズを簡易的なマクロレンズに変えてしまえるのです。多くのレンズでは、レンズを繰り出す(撮像面からの距離を長く取る)ことで無限遠より手前のものにピントを合わせることができますが、実際に繰り出す量は最短撮影距離でもわずか数mm。そこに本製品を用いることで強制的に11mm追加で繰り出し、レンズの最短撮影距離を超えて近接撮影ができるようになるのです。要するに、いつも使っているレンズにこの中間リングをマウントするだけで、いつもとは異なる世界を写し出せるということ。とはいえ、マクロレンズのような万能さはなく、制約もいくつかあります。例えば中間リングを装着した状態では、近接以外の撮影はできなくなりますし、ピントが合う範囲もかなり限定されます。またレンズの設計値を超えて使うわけですから、収差が大きく出るなど写りにも影響はします。一方で本製品の優れた点として、電子接点を備えているため「AFが可能」ということが挙げられます。これはピントがシビアなマクロ撮影ではありがたいことです。では早速作例を見ていきましょう。

( Photography & Text : Naz )

FUJIFILM X-H2, XF 35mmF1.4 R, MCEX-11, Photo by Naz

本レビューでは、Xマウント誕生以来のロングセラーである「XF35mmF1.4 R」をマウントして使用しました。レンズ単体での最短撮影距離は28cm、最大撮影倍率は0.17倍となりますが、MCEX-11を使用することにより、最短撮影距離は約半分となる15.3cm、最大撮影倍率は0.47倍へと大きくクローズアップが可能になります。なお、最短撮影距離は撮像面からとなるため、実際にはフードの先端から被写体まではわずか数センチ。気をつけないと被写体にぶつかってしまいそうな距離です。作例は金属板の上にできた水滴を撮影したもの。もっと甘い描写になるかと思っていましたが、緻密に描かれている印象です。

FUJIFILM X-H2, XF 35mmF1.4 R, MCEX-11, Photo by Naz

花ではなく、敢えてその先にある茎に注目してみました。肉眼ではなかなかここまでは見えませんね。細かな毛に生き物が持つリアリティを感じました。

FUJIFILM X-H2, XF 35mmF1.4 R, MCEX-11, Photo by Naz

庭先で葉の上に乗るクモ。忙しく動き回る小さな生き物を撮るのはなかなか難しい。風で葉が揺れ、撮影者自身も前後に動いていることもあり、ピントが少し甘くなってしまったようです。AFも動作しますが、ややのんびりとしたフォーカスをするXF 35mmF1.4 Rの場合、ピント合わせはカメラを構える身体ごと前後させてしまった方が早い場合もあるようです。

FUJIFILM X-H2, XF 35mmF1.4 R, MCEX-11, Photo by Naz

光の差し込んだ網戸の網にフォーカスしてみました。本製品を用いて撮影を行う場合、基本的にマウントするレンズの描写傾向が反映されますが、浅い絞りでは甘い描写となるため、数段絞って使うのが実用的です。


FUJIFILM X-H2, XF 35mmF1.4 R, MCEX-11, Photo by Naz

塀にとまり羽を休めていたトンボ。逃げなければ動かずじっとしていてくれますから、昆虫の中では比較的撮りやすい被写体なのかもしれません。見慣れた昆虫とはいえ、子細に見るのは子どもの頃に昆虫の図鑑を手にした時以来。精密なつくりに改めて驚かされます。ピントはかなり浅くなるため、3段絞ったF4でも羽根の先端は溶けてしまっています。

FUJIFILM X-H2, XF 35mmF1.4 R, MCEX-11, Photo by Naz

FUJIFILM X-H2, XF 35mmF1.4 R, MCEX-11, Photo by Naz

FUJIFILM X-H2, XF 35mmF1.4 R, MCEX-11, Photo by Naz

  • FUJIFILM X-H2, XF 35mmF1.4 R, MCEX-11, Photo by Naz
  • FUJIFILM X-H2, XF 35mmF1.4 R, MCEX-11, Photo by Naz
  • FUJIFILM X-H2, XF 35mmF1.4 R, MCEX-11, Photo by Naz

被写体のサイズ感がわかりやすいもので絞り値を変えテストしました。球面収差がレンズの最短撮影距離時より大きく出ますから、開放ではピントが甘くなり、周辺の像も崩れることがあります。F4でもまだピントは浅く、F8ぐらいで描写が安定してきました。F16まで絞るとボケはほとんどなくなり、全体的にクッキリハッキリと描写。ただ絞り込んだ場合は、シャッター速度が遅くなるため、三脚の使用が必須となります。

FUJIFILM X-H2, XF 35mmF1.4 R, MCEX-11, Photo by Naz


PHOTO YODOBASHI

身近なところにある小さな世界に目を向けてみよう。

軒先の植物や虫などの小動物、そして生地やガラスなどのテクスチャーそのもののような、普段見逃していた日常の中にある小さな世界を撮ってみました。マクロレンズのように周辺まで安定した描写は望めないものの、そういった小さな世界にまずは触れてみる…という目的なら本製品でも十分に果たせるように思いますし、想像していたより面白く感じました。子どもの頃、虫めがねを手に身の回りの様々なモノを見たときのような感覚を思い出しますね。そんな身近にあるものたちでも、いつもとは異なるように写せることから、暑い時期や雨の日などなかなか撮影できないような条件でも、新鮮な気持で撮影を楽しむことができました。

今回は敢えて標準域の単焦点レンズにしてみましたが、撮影可能範囲が狭いこともあり、構図に自由度を作りやすいズームレンズの方が向いているように感じます。また画角の広いレンズでは、ワーキングディスタンスも極端に短くなりがちなことから、中望遠〜望遠あたりの画角が使いやすそうです。本格的なマクロ撮影を行うならば、純正レンズとして用意された60mmや80mmのマクロレンズをおすすめしますが、「近接撮影ってどんな感じ?」とその入口に足を踏み入れてみるというのなら、気軽に始められる中間リングはおすすめできる1本、いや1輪ではないかと思います。価格も手頃ながら、純正品だけあって造りや質感もよく、少々重いレンズをマウントしても安心して使用できるでしょう。

なお、このマクロエクステンションチューブには、撮影倍率をより高められる、繰り出し量16mmのMCEX-16も存在します。最短撮影距離が14.0cm、最大撮影倍率は0.61倍とさらにアップしますが、MCEX-11と比べ扱いはより難しくなることから、まずはMCEX-11で手軽に近接撮影を楽しんでみることをおすすめします。

※純正レンズと本製品を組み合わせたときの最短撮影距離と最大撮影倍率の一覧はこちらからご覧いただけます(PDF)。

( 2024.09.02 )

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わずか11mmのリングが撮れる世界を変えてくれます。気軽に始めるマクロの世界をお楽しみください。

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こちらは16mm版。

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本レビューで使用したレンズです。

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キレのいい連写は昆虫の撮影にも役立ちました。バリアングル液晶もアングルフリーで重宝します。

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より本格的にマクロ撮影を行うなら、こちらをどうぞ。50mmに近い画角で常用も可能な1本です。

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マクロ撮影にどっぷり使うなら、等倍撮影も可能な中望遠マクロレンズをどうぞ。

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