PHOTO YODOBASHI
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GODOX TT350
暗い場所や被写体の影を明るく照らすための機材には、連続して照らすものと瞬間的なものがあります。瞬間的なタイプの代表がフラッシュ。被写体を明るくするのはもちろんですが、発光時間が短いため、速いシャッタースピードと同じ効果が得られます。上の作例はシャッタースピードを遅くして七夕の笹をブラして撮影したものです。フラッシュなしだと短冊全てがブレてしまいますが、フラッシュを使うことで瞬間的に光が届く範囲の短冊はブレずに写ります。
今回のレビュー、上の作例を撮影したフラッシュ「GODOX TT350」を紹介します。フラッシュは発光量を示すガイドナンバー(GN)や調光方式の違いで様々なものが発売されています。本フラッシュはGN36でTTL調光、マニュアル発光に対応したタイプ。TTLに対応したフラッシュは、カメラの設定と連動して自動で光量(露出)が決まり、簡単な操作で撮影することができます。キヤノン、ニコン、ソニー、フジフイルム用がラインアップされており、各カメラのTTLに対応しています。今回はフジフイルム用を使いフラッシュ任せで撮影してみました。
( Photography & Text : A.Inden )
本フラッシュは全長140mm、幅62mm、高さ38mm、重さ210g(電池を含まず)と小型軽量。小型ながらGN36(105mm、ISO100)と十分な光量を持っています。照射角は24mmから105mmレンズ(35mm判フルサイズ換算)をカバー。ヘッドの回転角は左右0〜270度、上下-7〜90度です。またハイスピードシンクロ、第二幕シャッターシンクロにも対応しています。そしてワイヤレス調光は、X1フラッシュシステムに対応し、30mまでの範囲内で可能。調光グループは3グループ、チャンネルは16chを装備。電源は単三電池2本を使用します。
- 内蔵している広角ディフューザーパネルを使用すると照射角が14mm(35mm判フルサイズ換算)に拡張されます。
- キャッチライトパネルを取り出しヘッドを上に振って撮影すると、被写体の目の中にキャッチライトを入れることができます。
- 付属品のディフューザーを取り付けると光が柔らかくなります。
全ての機能は背面にあるディスプレイで設定、確認をします。MODEボタンで各モード(TTL、マニュアル、マルチ発光)を選び、SETの周りにあるダイヤルで細かな設定を変えることができます。
- TTL自動発光モードです。特殊な使い方をしない限りほぼこのモードで撮影が可能です。SETボタンを押し周りのダイヤルで光量を調整します。露出補正はカメラと同じ考え方。表示+0.7はオーバーな露出です。−3〜+3の範囲で調整が可能です。
- M手動発光モード。ダイヤルを回しフラッシュの光量を決定。1/16〜1/1の範囲で調整が可能です。カメラの設定と連動しないため「GN=被写体までの距離(メートル)×絞り値」の計算式で、適切な光量を決定します。TTLに対応していないカメラを使用するときはこのモードで撮影します。
- Multiストロボ発光モードは、連続発光で多重露光のような写真を撮ることができます。ディスプレイの4が発光回数、1Hzが1秒間に発光する回数です。このディスプレイの表示は1秒間に1回の発光が4回行われるということです。
補助光として使用
フラッシュはメイン光源として使うのが一般的ですが、逆光で暗部を明るくする補助光としての使い方もあります。上の作例はTTLモードで露出補正を−1.7にして撮影。ほんの隠し味程度に光を当てることで自然な写真を撮ることができました。フラッシュの発光条件を変えたのが下の作例です。
左の作例は室内灯のみで撮影。暗くて色も出ていませんね。明るくするためカメラにつけたフラッシュを直に当ててみました(右の作例)。明るくなり色も出てきましたが、あまり美味しそうではないです。ではカメラにつけたままで、もう少し美味しそうに見えるように撮ってみましょう。
バウンス撮影
ヘッドが回転するタイプのフラッシュは、カメラにつけた状態でバウンス撮影が可能です。光を天井や壁にバウンスさせることで光を拡散させ、柔らかな光で撮影することができます。下の作例は、カップの後ろにある白い壁にストロボをバウンスさせて撮影したもの。フルーツのシズル感が出て美味しそうに撮ることができました。料理写真は窓際で柔らかい逆光で撮影すると美味しそうに撮れます。バウンスすることで、その条件を再現しています。
マルチ発光
Multiストロボ発光モードは、シャッターを押すと指定されたスピード(Hz)と回数でフラッシュが発光します。被写体が連続して動く様子を一枚の写真で撮ろうとすると、それなりの機材が必要ですが、このモードであればコンパクトな機材でも撮影が可能です。上の作例は上から落ちてくるカードを20Hz(1秒間に20回発光するスピード)、3回発光で撮影。1枚の写真にスペードの7が3回写っています。撮影の注意点は、発光が終わるまでシャッターが開いていること。上の作例は余裕を持って1秒で撮影しています。
日中シンクロ
日中シンクロは、逆光で影の部分を明るくする、背景を暗く落として手前の被写体を浮かび上がらせるなど、明るいところでフラッシュを発光させるテクニック。この作例はカメラ設定で全体の露出をアンダーにし(−2補正)、暗くなる帽子はフラッシュ光で適正露出にしています。今回はカメラのシンクロスピードの上限1/250秒で撮影していますが、本フラッシュはハイスピードシンクロに対応し最高1/8000秒まで撮影が可能とのことです。
フラッシュ無しで撮影すると、シャドーは暗く落ち、空に投げられた帽子はシャッタースピード1/250秒ではブレてしまいます。
動きを止める
上の作例は透明なアクリルケースに球を入れケースを動かしながら撮影したものです。TTL調光で撮影するとフラッシュの発光スピードが速いため、動いている玉もピタッと止まります。
小さなフラッシュ一台で広がる撮影バリエーション
フラッシュ撮影は敷居が高いなと思っていましたが、「GODOX TT350」を使ってみると面白い撮影が簡単にできます。しかもコンパクトで持ち運びも便利。この手軽さなら日常的に持っていて、アイデアが湧いたときや撮影条件が厳しい時(逆光など)に使うことで、撮影できるシーンが大幅に広がるのではと思いました。そして何よりもありがたく感じたことは、TTL調光の正確さ。カメラの設定を変えたり、フラッシュに付属のアダプターをつけたり、さらにバウンスで撮影しても露出はほぼ設定通り。カメラにつけてTTLモードにするだけで思い通りに写真を撮ることができました。これならフラッシュが初めての方でも安心して使うことができますね。多くの機能を持ち価格も控えめな本フラッシュは入門機として最適。自信を持ってお勧めできる一台です。
( 2024.09.24 )
この価格でこの機能。フラッシュ入門には最適な一台。
こんなレトロな佇まいのフラッシュもあります。
こちらはキヤノン用
こちらはニコン用
こちらはソニー用