PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
Canon RF28mm F2.8 STM
[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ
キヤノンから「最初に手に入れる交換レンズ」を念頭に開発されたであろう1本をご紹介。最初に申し上げてしまいますが、レンズ沼にどっぷり首まで浸かっている皆さんにこそおすすめの1本です。いわゆるパンケーキレンズに属するものですが、まずはそのコンパクトさが特長の1つ。とにかく小さく軽い。重量はなんと120gです。プラスチックモールドの非球面レンズが搭載されているのですが、このあたりも軽量に一役買っているのでしょう。「プラスチックレンズ??」と目くじら立てることなかれ。もっと凄いのは2枚ほど円形のレンズではないのです。ハイ、四角形です。しかも断面を見るとスマートフォンに搭載されるような複雑な形状(詳しくはキヤノン製品HPを) ある種、色物に見えてしまうかもしれませんが、結構よい仕事をしてくれるレンズです。ぜひ作例をご覧ください。
( Photography & Text : K )
小さく軽いのは正義である
最近どうにも腑に落ちないことがあります。カメラからミラーがなくなって機材のコンパクト化が進みそうなものの、なんだかやたらとカメラとレンズが大きい。戦隊モノが最終的に宇宙征服にまで物語が進むが如く性能の追求に一路突き進み、結果としてサイズが大きくなるのは理解できます。しかしレンズでいえば、一時が万事毛穴の中まで写りそうなレンズが必要なわけではありません。もう少しある意味の逆方面というか、そんな製品とラインアップが増えてほしいなと常々思います。
私事ですが、先日九州の門司港から大阪までを自転車で旅してきました。まさに上の写真の自転車です。道中写真を撮りたい。できればスマホではなく贅沢を言えば35mmフルサイズで。私にとっての写真とは、その行為的にはファインダーを覗いて撮影すること。そして仕上がりが高画質であることなのです。そうでないと撮る気がしません。そして写真だけが趣味ではなく、何かと一緒に写真も楽しみたいわけです。そうなると、カメラとレンズにはもう少しサイズダウンしてもらいたいと思うわけです。自転車は人力で進むわけですから重量は最小限であってほしい。持ち運べるサイズにも限りがあります。叶えてくれる機材はそうそうありません。手にしたのは本レンズとEOS RPの組み合わせ。自転車のフレームに取り付けたバックに入るサイズであり、ともかく軽いのです。この組み合わせは本当に嬉しい存在なのです。
旅の前にある程度試し撮りはしていました。そして、その写りに納得していたのです。このレンズは小さく軽いだけじゃない。写りは実に力強く、ともかくよく写ります。画面隅々まで文句のない描写で、RAW現像の際に周辺光量の補正だけOFFにしてしまいます。力強い描写に、周辺光量低下のトンネル効果がどことなくクラシカルで、撮るのが楽しいのです。個人的には28mmの画角は苦手なのですが、旅に持ち出すには記録的要素も大きいため、なにかと潰しが効いて良い塩梅。そして画角こそ似たようなものであれ、言うまでもなく写りはスマホとは別世界のものです。
解像力も大変高く、周辺までアラがありません。EOS RPは少し描写に線の太さを感じるため、他の機種だとまた印象も変わるかもしれません。しかし、マッチングは大変良いと思います。繰り返しになりますが、レンズを取り付けた際のサイズ感はEOS RPでなければ実現できません(35mmフルサイズであれば)
EOS RPとの組み合わせは、わりとコテっと色が乗って、初期の頃のEOS 5Dあたりを思い出します。いや、いいなあ。他のボディでも試してみたいところ。
九州と本州を結ぶ関門橋を真下から。実に力強い描写です。周辺光量の補正はOFFにしています。こんなゴリッとした写りをするかと思えば、繊細なものは繊細に写ったり。不思議なレンズです。
階調の特性としては大変コントラストが高いと感じますが、とはいえ、結果として階調の乏しい画にはなりません。現像ソフトでトーンカーブで少し締めています。つまり締められるほど階調に密度が感じられるのです。
日の入り後の路地で。殆ど光が回らない中で、この立体感、存在感。
食器や椅子の立体感が素晴らしい。窓からの光が部屋の奥へと減衰して届くその様。正直、現場で見ていた光景よりも美しく写っている気がします。
寄ると薄っすらですがベールがかかるような柔らかさが伴います。ピントを置いた箇所は実に素直に解像されます。
「もう1本」持ち出しておくレンズとして、手に入れておきたい。
なにせ小さく軽いレンズですから、持ち出しやすく、忍ばせやすい。撮影行において被写体の追いかけやすさを考えれば、バッグの中はズーム主体で構成され、特定の目的に応じて単焦点を1〜2本なんて組み合わせが多くなります。理想を言えば光の入口の選択肢は多いほどよいわけで、できる限りレンズもたくさん持ち歩きたいわけです。そんな中でも、本レンズであれば「もう1本」と入れられてしまいます。今回の自転車旅は、この組み合わせのみで周ったわけですが、面白いなと思ったことを1つ。延々600km近くペダルを漕ぐわけで、正直なところ写真を撮るなんて余裕はないわけです。そうはいっても記録的にも写真は撮っておきたい。当然スマホも持ち出しているのですが、スマホで撮るときもあれば、カメラで撮るときもありました。似たような画角なのですが、スマホであれば画面で無造作にズームし、パチっと撮って終わり。カメラでは、単焦点レンズですから動いてポジションを変えたり、屈んでアングルを変えたり。ああでもないこうでもないとやるわけです。スマホのほうは「写して記録しておこう」という色合いが濃いですが、どちらも記録っちゃ記録で、不朽の名作が生まれるわけでもなし。大した違いはない(笑)しかし思うのは、手段が短絡化されると楽しさも目減りしやすいかなと。手に入れるにリーズナブル、ポケットに入れるにコンパクト。そして、スマホと同じような画角であり、目の前のものがおおよそ写り込む難しさ。ぜひ「面倒臭く」楽しんでください。写真ってそういうもんでしょう。
( 2024.08.08 )
小さく軽く、写りもいい。もう1本と忍ばせるのにもよい広角レンズです。
前玉の保護にも役立つ、格好いい薄型のフードは別売です。
本レンズにピッタリな小型ボディのRP。フルサイズでこのプライスも魅力的です。