PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
Canon EOS R3 / SHOOTING REPORT
デジタルEOSとしては初の「3」を冠した、キヤノンEOS R3のレポートをお届けします。いろいろと機能てんこ盛りのボディですが、現時点で35mmフルサイズセンサーの画素数としては"美味しい"と想像される約2410万画素のセンサーを搭載し、スチル/映像の両方でハイレベルな要求に応えてくれるカメラのようです。メーカー自ら「無双」と謳うボディですが、並べ立てられたスペックを見ればその通りなのでしょう。まずはスチルにて、そのあたりを検証してみましょう。作例とともにこのボディに詰め込まれた機能と、結果としてこのカメラがスチル方面で何を我々に与えてくれるのかについて綴ってみたいと思います。
( Photography & Text : K )
LOOK & FEEL
さっそく外観を確認していきましょう。EOS Rシリーズでは初めて最初から縦位置グリップ一体型のボディとなりました。もはや一眼レフと変わらぬ姿となりましたが、重量感はさほどでもありません。大口径の長玉をつけるにはこれぐらいのサイズでないと厳しいこと、また、大容量のバッテリーを飲み込むためには必至な姿であると考えられます。しかしミラーレスカメラも、カメラの世界で本流になったのだなあと隔世の感が。
背面はキヤノンお馴染みのインターフェイス群。何気に便利なのがAF-ONが記されたAFスタートボタン/スマートコントローラー。例えば親指の腹で、トラックパッドの如くAFポイントを移動できたりするのですが、どのメーカーにも載ってくれないかなあと思う便利なインターフェイスです。底辺部分がないコンパクトなボディに比べてボタン類も余裕のある配置であり、操作時の手や指の動きをよく考えられて操作感は抜群。
OVERVIEW
約2410万画素とし、スチルではスピードをUP、またAFのトラッキングなどが手厚く盛り込まれて動体撮影などに強く、高感度側の撮影幅を持たせてあります。なお、動画では6K60pを実現、4K/120pなどのハイフレームレートも実現。スチル/動画とボーダレスなカメラに仕上がっています。高画素機であるEOS R5との比較スペック表となります。
EOS R3 | EOS R5 | |
---|---|---|
発売時期 | 2021年11月 | 2020年7月 |
イメージセンサー | フルサイズ CMOSセンサー 2410万画素 |
フルサイズ CMOSセンサー 4500万画素 |
画像処理エンジン | DIGIC X | |
常用ISO感度 | 100〜102400 | 100~51200 |
連続撮影速度 | [電子シャッター] 30コマ/秒 [メカシャッター] 12コマ/秒 |
[電子シャッター] 20コマ/秒 [メカシャッター] 12コマ/秒 |
AFシステム | Dual Pixel CMOS AF II | |
選択可能測距エリア | 横90% × 縦100% | |
自動選択時AFエリア分割数(最大) | 1053分割(スチル)、819分割(動画) | |
AFフレーム選択可能ポジション(最大) | 4779(スチル)、3969(動画) | 5940(スチル)、4500(動画) |
人物検出 | 瞳・顔・頭部・胴体 | 瞳・顔・頭部 |
動物検出 | 瞳・顔・全身 | |
乗り物検出 | 車・バイク | ー |
ボディ内手ブレ補正 | ○ | |
ファインダー | 0.5型、576万ドット | |
測距輝度範囲 | EV -7.5~20(スチル)、EV -4.5~20(動画) | EV -6~20(スチル)、EV ‒3~20(動画/8K) |
マルチコントローラー | ○ | |
液晶モニター | 3.2型 415万ドット |
3.2型 210万ドット |
動画撮影 | 6K 60P 4K 120P フルHD 120P |
8K 30P 4K 60P フルHD 120P |
対応バッテリー | LP-E19 | LP-E6NH LP-E6N LP-E6 |
バッテリーグリップ | (縦位置グリップ一体型) | BG-R10 |
大きさ | W150.0× H142.6 × D87.2 mm | W138.5 × H97.5 × D88.0 mm |
本体重量 | 822g | 650g |
PHOTO GALLERY
さて実写でのテストです。スピード方面のカットを試すべきカメラですが、画の素の力を見るために光のない光景にレンズを向けてみましょう。35mmフルサイズでは、10年ぐらいの間、2400万画素程度が解像力・階調再現力・高感度特性と一番バランスが良いのではないかと感じていました。一眼レフのEOS 5Ds Rあたりから高画素機も一枚皮が剥けた感じを受けて、今日に至っては2400万画素あたりが35mmフルサイズセンサーの画素数において下限あたりになるのでしょう。現時点で果たしてどう感じるかなと撮ってみれば、解像力などで不満を感じることはありませんでした。高画素機になると、ここからギュッと緻密さが増していく感じなのですが、2400万画素で本当に必要十分といった印象です。キリッと写りますから。解像力以外に目を向けると、光のない、しかも明暗差の殆どない「白」しかない景色で、いろんな白がきちんと表現できる包容力に感じ入るものがあります。
2012年ごろの2400万画素と明らかに違うのは、これだけコントラストのない光の下できちんと「粉雪」が写るところです。なんと表現するのが適当なのかはわからないのですが、画作りに吟じられたものを感じます。昔ならもう少し露出を切り詰めてハイライトを大事に、現像時に黒を締めて・・と後処理を行ったところですが、目で見た通り、メリハリのない光をストレートに撮って成立します。後処理的にはあと少しハイライトを詰めたいところですが、そうするのは、なんだか勿体ない。ページ一番上が、寄せ付けない厳しい寒さ、2枚目はその中でハッとさせられる美しさ、3枚目(このカット)は柔らかくも、だからこそ無情にも降り積もると感じる雪景色。様々な雪景色を描き分けてくれる、そんな力を感じます。
雪に埋もれて線路の見えない富良野線。本州で暮らす私たちにとって、北海道の雪景色は美しいものですが暮らすとなるとなかなか。如何ともし難い大いなる自然を感じさせられます。視界を埋め尽くす落ちてくる雪、さすがにAFでリアルタイムに車両にフォーカスを合わせてもらうのは困難な状況、しかし黒く落ちる木々にはきっちり反応してくれるため、シャッターボタン半押しで車両が来るまで待機し、撮影しました。
感度を上げていっても、普通の使い方であればこのカメラの持つ感度上限に至ることは殆どありません。強烈に効く印象の手振れ補正も相まって、実に広い撮影領域を持つカメラだと感じます。
強烈なトラッキングとスピード
映像で6K60pなどが収録可能なのだから「秒間何コマ」などというのはさほど驚きませんが、動体の撮影での被写体トラッキングの機能はやはり強烈な機能だと実感します。人物や動物のトラッキングに加えて、車やバイクも追加となりました。一度喰らいついたら、あとはシャッターボタンを押しっぱなし。その中からベストカットをチョイスしてください。まさにスチルと映像の境界が曖昧となる感覚が味わえると思います。作例のように「いま、そんなに降る??」という降雪の中では、雪にピントを持っていかれることもあります。確実さを求めるなら、被写体の動きを予測してAF+DMF(ダイレクトマニュアルフォーカス)またはMFがベストでしょう。しかし今日初めてカメラを手にした人でも、ある程度撮れてしまう。これがプロダクトの世界における進化というものだと思います。ファインダーを覗きながら、被写体を捉え続けるのに感動してしまいました。
日常にEOS R3を持ち込む意味
ミラーレスカメラがマーケットの中で存在感を示し始めた頃から、我々もすっかりカメラとは小さくなったものと思い込んでいます。そこへ来て、このEOS R3はかつての一眼レフにおけるフラッグシップのような出立ち。大きさはそうですが、手にしてみると「あれ?」という軽さを感じます。パワーが必要だからこそ電源が強化され、縦位置グリップが付く。ボディサイズが大きくなるからこそ、インターフェイスやグリップなどにも余裕を持った設計が行える。確かに見かけから想像する重量より軽いのですが、ボディのバランスが抜群に良いのだろうと感じます。大口径の単焦点レンズや長玉をマウントするシーンでは、それを余計に感じられます。これまで見てきたミラーレスカメラのような取っ付きやすさは薄いかもしれませんが、普段使いにも用いてみようという気になるのです。そして、今のこのタイミングで、万事の方向を追って搭載されている2410万画素です。画はやっぱり余力があって美味しい。また、万事の方向を追ってるからこそ、どんなシーンでも使えるということだと思います。
下道をトコトコと走っていると出会した、かわいらしい無人駅。どこが水平で垂直かわからないのでフレームの難しい駅舎でしたが、シャドーからハイライトまで本当によく粘ってくれる画作りです。
裸電球を見たら、まあ、とりあえず撮りますよねえ。こちらも階調再現が素晴らしい。なんという潤いのある写りでしょう。また、50mm近辺の大口径は何撮っても楽しいものです。
一筋の強い光が差し込む中で、あとはほぼ真っ暗。とりあえずハイライトが飛ばないように露出を決定して撮影。シャドーがどれぐらい後処理で立ち上がるか、その具合はどうかと確かめたカットです。ご覧の通りRAWデータにはシャドー部にきっちりデータが残っていて、データの厚みを感じさせられました。
スピード&パワーが生み出す「余裕」
スチルで動体を捕捉してあらゆる光の下で写し止める力、映像方面のアウトプットを生み出すだけの処理能力、メーカーが「無双」と謳うのも納得の仕上がりを感じさせるカメラでした。スポーツ系のカメラマンの皆さんはもちろん、スチルと映像のボーダーを行ったり来たりするような依頼を受けることが多いカメラマンの皆さんに間違いなくおすすめできるカメラであることは間違いありません。テスト中に私が感じたのは、画から感じる包容力でした。スピーディーな処理と出力で求められるサイズの落とし所で決まった画素数だろうと思いますが、それをこなすだけではなく、厚みの感じられる画を叩き出すところに感じ入りました。表現が難しいのですが、フィルム時代から慣れ親しんできた「写真らしさ」を感じる画です。このあたりを求めている人にもおすすめできると思います。そもそも、いま現時点で「なんでもできるカメラを」という方にはうってつけの1台に仕上がっていると感じます。メーカーのキャッチに負けた感があって何だか口惜しいのですが。
( 2022.03.04 )
EOS伝統の「3」を冠したキヤノン渾身のミラーレスボディ。ここに誕生です。
お金で買える安心、スペアバッテリーもお忘れなく。
EOS R3の高速性、動画性能を遺憾なく発揮するには、大容量かつ高速なメディアは必須です。必要な投資、惜しむことなく手に入れましょう。
作例撮影でも使用しました超望遠ズームレンズ。コンパクトに仕上がった1本です。