PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
Canon EOS M6 / SHOOTING REPORT
スマートフォンでも十分な写真が撮れる時代、それでも私たちがカメラを持つのは、そこに残しておきたい光景があるからです。
たぶんキチンとしたカメラの写りや手応えを知る人ほど、大切な瞬間を前にして機材に妥協ができなくなるもの。画質・性能・大きさ・重さのバランスをどこに見出すかが次なる悩みとなるのでしょう。そんな時に選択肢として輝くのが、コンパクトで良質なミラーレス一眼の存在です。
EOS Mシリーズも世代を重ね、キヤノンらしく基本性能をしっかりと成熟させ、写真撮影に対してストレートなモデルを生み出してきました。本機EOS M6はコンパクトなボディに最新のスペックを凝縮した、EOS Mシリーズの魅力を体現する1台。この軽快さを活かすべく、旅に日常にと連れ出してスナップ撮影を味わってみようと思います。
( Photography : Z II / Text : Serow )
まずは機能の確認から。EOS M6はスペックのほとんどは最上位モデルであるEOS M5と同様です。M5との違いは "EVFを内蔵しない" ということ。その分ボディが一回り小さくスマートであることが本モデルの魅力といえるでしょうか。EVFを内蔵しないとは言っても、ご覧の通り外付けのファインダーが用意されています。こうしてみると往年のコンパクトカメラを連想される佇まいながら、決して懐古主義的ではないのが新鮮ですね。EOS M5のレビューも併せてご覧いただきつつ、本レビューではM6の軽快さに注目していきたいと思います。
荷物は軽いほうがいい。
旅に出て町を歩けば心は高揚していますから、はじめのうちは疲れを感じることはないものです。ところが半日・一日と経つ頃には、手にした荷物の負担が少しずつ蓄積してきて、シャッターチャンスひとつを億劫に感じてしまったりする。こうなってしまうと本末転倒で、翌日は交換レンズをホテルに置いてしまうとか、なるべく機材の軽量化を図っている自分に気づきます。
軽さは正義。EOS M6を鞄に入れて出かけてみると、そんな当たり前のことを改めて感じるのでした。特にパンケーキレンズを装着した時など、とにかく軽快なんですよね。EF-Mのレンズ群もカメラに違わずコンパクトで、交換レンズを複数持って歩くことが現実的に行えるのは、このぐらいのシステムが限度なのではないかと思います。良くも悪くもEF-Mレンズはまだレンズラインナップが限られており、手を出しやすいタイミングですから。
レンズ交換式のカメラが真価を発揮するのは望遠での撮影かもしれません。大きな機材を持たずともこれだけ引き寄せた画が撮れるのは、昔から写真に触れてきた人間には隔世の感があります。
一日歩きまわったあと、日が暮れてから触れる町の姿も旅の楽しみのひとつです。新しいモデルが出る度に高感度性能は良くなっていますが、この時間帯でも撮る意欲が減退していないということが、実は評価のポイントという気がします。
「気持ちよさ」って何だろう。
軽量コンパクトなボディですが、操作に確かなフィーリングがあり、撮っていて楽しいのがこのカメラの魅力のひとつだと思います。この「感触」というのはスペックに表れない部分で、実際に使ってみなければわからないものですが、この違いをもたらすものは一体何でしょう。おそらくはシャッター音、振動、AFや各種レスポンスの速度など、メカのもたらす極めて微妙な違いに起因するのだと思います。それを感知する能力が備わっているのだから、人体というのは大したものですね。小気味よいシャッターフィーリングで撮影枚数が増えていく。EOS M6、なかなかいい感触をしています。
ほぼ画面一杯にAFのフォーカスポイントがあるのですが、AFのスピードや精度については撮影の間あまり意識することはありませんでした。意識することがないというのは、逆に言えばネガティブな印象を感じさせない、高いレベルにあると言えるかもしれません。シャッターチャンスをしっかりと捉えられる実力。いわばカメラの基礎的な運動神経がしっかりしているのでしょう。
なにかの光景を前にして「いいな」と思った心のうごき。これを言葉で伝えるのが詩人の仕事なのですが、それがうまくできないから私たちはシャッターを切ります。そんな気持ちに呼応するように、心地よくシャッター音が響きます。
どれだけ写れば満足するの?
約2430万画素のAPS-CサイズのCMOSセンサーと、映像処理エンジンDIGIC 7。これまでのモデルだって十分に良く写っていたというのに、センサーや処理エンジンが新しくなればやはり唸らされてしまうのが人間です。コンピューターもスマートフォンも、数年経てばスペックが一新してアップグレードしてしまう世の中ですから、嬉しい悩みともいえるのですが。さてEOS M6の生み出す6000×4000ピクセルの画を見て、どこか不満な点を挙げる必要があるのかと考えてしまいました。個人的には「これだけ写るんだから、あとは撮るだけ」というのが素直な感想です。もう機材のせいにはできない時代になってしまいましたよね。
ディテールまでリアルに写し撮るカメラの力が、写真を見返す喜びと、また撮りに出かけようという想いを強くします。時に肉眼では見えていなかったものを見せてくれるから、写真は楽しいのです。
撮られる側にとってカメラがどうあるべきか。そんなことを考えたことはありますか? モデルさん相手なら大きなフラッグシップ機が相応しくとも、身近な人や子どもたちなら小さなカメラのほうが圧力は少ないはず。場に溶け込むことも重要ですね。
何を撮りたいのか。何が必要なのか。
製品というものには作り手の哲学が滲むものです。EOS M6を手にしていると、さすがに長年カメラを作ってきたメーカーと言おうか、写真を撮る道具として随所に見られる工夫や、削ぎ落としたものが感じられる気がしました。操作系もインターフェイスも奇をてらうことなくシンプルで、初心者にも使いやすいものだと思います。一方ダイヤル機構などは慣れてくると便利で、上級者ほどニヤリしてしまうものでしょう。軽くて、小さくて、いつでもキチンと写真が撮れる。そういう道具がEOS Mシリーズであり、EOS M6なのです。あまり大きなカメラには踏み込めないビギナーはもちろん、お手持ちのシステムが少々重くなってきた中上級者の方にもジャストフィット。EFレンズ群をお持ちであれば当然活用できますし、潔くEF-Mレンズだけで臨むのも腕の見せどころですよね。
あなたの撮りたい光景はどこにありますか? 仰々しい装備が必要ですか?
ミニマルなEOS M6のセットを持って、ゆっくり写真と向き合う時間を、どうぞ存分にお楽しみください。
( 2017.06.01 )
はじめてEOS Mシリーズに触れるならとびきりのセット。コンパクトなシステムで十分じゃないかと思わせてくれる力があります。どんなふうに鞄に収めるのか、旅慣れた方ならそんな楽しみもお判りですよね。
こちらは、標準ズームレンズ1本にEVFがセットになったキットです。まずはじめの一歩はここからで十分ですね。
シルバーのボディは、クラシカルな印象で幅広い層の方々にお持ち頂けるデザインです。
精悍でよりコンパクトなイメージのブラック。レンズやEVFとのスタイルのマッチングを考えるのも一興です。
こちらもEF-M15-45mm F3.5-6.3 IS STMとボディのセット。ボディはシルバーです。より軽快感が増し、爽快感もあります。初心者の方はもちろん、お子さんのいらっしゃるママさんにもおすすめのキットです。
標準ズームに望遠ズームがセットになったレンズキットは、オールグラウンドな撮影に対応できます。はじめてのレンズ交換式カメラという方にはいちばんのおすすめキットがこちらです。
高倍率ズームEF-M18-150mm F3.5-6.3 IS STMとEVFがセットになっています。35mm判換算で約29-270mmと幅広い焦点距離域をカバーしていますので、このレンズが1本あれば日常的な撮影はほぼこなすことができます。
EOS Mシリーズに対応するEF-Mマウントレンズとしては初の高倍率ズームレンズEF-M 18-150mm F3.5-6.3 IS STMをセットにしたキットです。スケール感のある風景写真からポートレート、望遠撮影まで、EOS M6とこの1本で幅広い撮影が可能です。
標準ズームEF-M15-45mm F3.5-6.3 IS STM とボディのセットです。35mm判換算約24-48mmと見た目に近い標準域をカバーするズームレンズですから、軽快にスナップ撮影ができます。
携行性の高いレンズがあれば、おのずとカメラの出番も増えるというもの。EF-M15-45mm F3.5-6.3 IS STMは、ズームレンズとはいえ44.5mm、130gと小型軽量。小さなEOS M6のボディにぴったりの1本がセットになったレンズキットです。