シグマ社インタビュー[02]

シグマのオフェンシブなスタイルは「超効率」に支えられていた

工場内は格子状に整然とセクションと工作機械が並び、その気になればいつでもレイアウトを変更できる

工場内に招き入れられ、まず現場の整理整頓が行き届いていることに感心。通路ですれ違うスタッフの皆さんから例外なく丁寧な挨拶をいただく。そして生産セクションに足を踏み入れた瞬間驚くのです。何処から何処へ行程が流れていくのか、一目見ただけではまるでわかりません。つまり、生産セクションのスペースはきれいに格子状に配列され、整然と行程と工作機械が並んでいるのです。時折スタッフの方々が生産品の入ったトレイを持って目的の箇所まで移動。車の生産ラインになじみのある筆者は、いささかセンセーショナルでした。車のラインはたとえれば「大河」。そのラインに沿ってまさに全てが流れ込んでいきます。対して、シグマの生産現場は、街の中を縦横無尽に走る運河のようです。しかも、工作機械やそれに付随する行程は、その気になってしまえば変更できてしまうのです。このあたりに、あの縦横無尽な製品ラインアップの秘密が隠れていそうですね。

金型の製作チームが生産工程のほど近くに。さらに金型設計チームが現場で設計を行う

生産の現場とは、人と技術、素材とエネルギー、そして想像と理論、全ての調和で支えられるものであり、図面通り・想定通りに事が運ばないことはままあるのです。非常に高度に設計された金型でも、現場のインスピレーションでより品質を高めるための提言が生まれたり、そんな場合でも現場近くで設計チームが作業を行っている。これは非常に合理的かつ効率的であり「なるほど」と思わされます。

こんなものまで作ってるの??・・・驚きの内製率

シグマはそのビジネスモデルから、1つの製品を設計し一気にドライブをかけて大量生産・・というスタイルではありません。どちらかといえば「少量多品種生産」のスタイルとなります。必然的に単一のパーツのロット数も膨大な数になるわけではないため、生産を外注依頼するとコストの高騰を招きます。これは最終的にエンドユーザに跳ね返るだけでなく、製品の競争力にも影響を及ぼします。したがって、非常に汎用的なパーツで十分にコストダウンの進んだ物以外は基本的に内製となるそうです。さて、その一端を皆様にご紹介いたします。

「超効率」はオールラウンドプレーヤーを生む

少量多品種生産の最大のメリットは、柔軟な対応力とそのスピードにあることは想像に難くありません。また、1人のスタッフが幾つもの行程に理解がおよぶこととなり、結果としてオールラウンドプレーヤーの生まれる苗場のような環境を作り上げることでしょう。工場を案内していただく際に、山木社長が発した一言が大変印象に残っています。「弊社の試作チームは仕事がかなり早いと思います。工場および設備環境等によるものもありますが、何かを試しに作ってみようという時に、即座に対応できる力は非常に高いと思えます」・・・私には何処か誇らしげに聞こえました。市場のニーズをつぶさに見つめ、それに一つ一つ応えていった積み重ねが、あの前衛的かつ重層的な製品ラインアップを支え、そしてこれからも私たちの「あったらいいな」を追い続けていってくれるのではないかと感じるのです。

さて、次のページではもう少し工場の模様を紹介いたします。

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