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ROLLEIFLEXOLOGY

ROLL 5 : テレローライで観察する京都的デザイン

ニョキッと伸びた二本のレンズ。ムービーカメラのようでもあり、特殊任務を帯びたような雰囲気さえ漂う二眼レフ。「テレローライフレックス」、通称「テレローライ」がやってきました。「レンズ交換ができないからこそ、ローライフレックスは美しいんだよ」なんて言っていた気もしますが、真四角写真を始めて以来、これに圧縮効果が加わると面白いことになるだろうなと思っていたのです。 テレローライにはカールツァイス製の 135mm/F4レンズ、「Sonnar」(35mm版換算で80mm相当)が付いています。ファッション写真を主眼に開発されたそうですが、最短撮影距離が2.5mという長さで、ローライナーというクローズアップレンズをつけて距離を縮めて撮影することも多かったそうです。とはいえ、この2.5mという距離はストリートではなんら問題ありませんし、少し距離を置いてじっくり観察する感覚で撮れることを意味します。テレローライで何を観察するか…思いついたのは日頃感じている京都らしい「デザイン」。散歩する度に「これは京だな」と思う物件に遭遇するのですが、テレローライで撮ったらうまい事収まってくれるんじゃなかろうか、とまあそんな次第なのです。ではいってみましょう。

( 写真 / 文 : TAK )

Tele-Rolleiflex (Sonnar 1:4/135mm), FUJICHROME PROVIA 100F, Photo by TAK

「明治十九年、綾小路烏丸東」などと読めますが、草書体ですね。落ち着いた色と吹き付けの質感。壁ひとつとっても 街全体の雰囲気を構成する大事な要素の一つなのです。ちなみに明治19年(1886年)の主な出来事を調べてみると、ウィーンでフロイトが開業、アトランタでコカコーラ販売開始、ノルマントン号事件、伊勢谷丹治呉服店(伊勢丹)開業などとなっています。カメラ界ではこの頃にロールフィルムの原型が発明され、イーストマン・コダック社が送り出した「ボックスカメラ」により一気に普及していきました。

Tele-Rolleiflex (Sonnar 1:4/135mm), FUJICHROME PROVIA 100F, Photo by TAK

こちらは最近の文字ですが、「ん」の書き方にポリシーと安らぎを感じます。実に「うどん」らしさにあふれたデザインで、コンピューターのフォントにはない魅力があります。メニューにも京都らしさが溢れておりますね。個人的には「けいらん」に惹かれるものの、こういうところの「中華そば」も気になります。

Tele-Rolleiflex (Sonnar 1:4/135mm), FUJICHROME PROVIA 100F, Photo by TAK

戦後復興期、効率最優先の流れを組む建築様式でしょうか。戦前のモダン建築と比べると「様式もへったくれも…」なのかも知れませんが、今となっては「それもまた味」。見つけるとちょっと嬉しいのです。

Tele-Rolleiflex (Sonnar 1:4/135mm), FUJICHROME PROVIA 100F, Photo by TAK

「碁盤の目」の京都市街地ではめずらしいクランクですが、角にぶつかる事故が多いのです。中央下部をご覧ください。黄色く塗られた石と、その向かいの黄色いブロックのようなものがありますね。京都では「いけず石」(いけず=意地悪)なんて言われているのですが、トラブルを未然に防いでくれているのも事実です。サイズ、形状、カラーリングも様々。「作者」の個性が出ています。

Tele-Rolleiflex (Sonnar 1:4/135mm), FUJICHROME PROVIA 100F, Photo by TAK

日本人の暮らしを豊かにしてくれた工業製品たちが、小さな空間にさりげなくディスプレイされています 。ビルの入り口付近だったと思いますが、こうやって道ゆく人に「見世」る発想が洒落ています。ちょっとした「日本のインダストリアルデザイン展」を見ているようで、街歩きがいっそう楽しくなります。

Tele-Rolleiflex (Sonnar 1:4/135mm), FUJICHROME PROVIA 100F, Photo by TAK

機能に徹し無機質にも見えるフェンスと仏教建築との融合。

Tele-Rolleiflex (Sonnar 1:4/135mm), FUJICHROME PROVIA 100F, Photo by TAK

こちらはお寺の土塀。瓦を使って補強しながらデザイン的にも洗練されています。遊び心からかもしれませんし、格を示す狙いもあるかもしれません。東西の通りに面しているので、夕刻には光を計算に入れたのかと思うほど輝いてくれます。

Tele-Rolleiflex (Sonnar 1:4/135mm), FUJICHROME PROVIA 100F, Photo by TAK

あんまりカメラの話をしていませんでしたね(笑)。目の高さにあるものをまっすぐ撮るならアイレベルが一番ですが、ローライフレックスはアイレベルでも撮影できる仕組みになっているのです。ただしピントを合わせるファインダーは上下左右逆像なので、街頭でスナップを撮ろうとすると目が回ってしまいます。こういうデザインの被写体であればノープロブレムですが。

Tele-Rolleiflex (Sonnar 1:4/135mm), FUJICHROME PROVIA 100F, Photo by TAK

こんなところでお茶できたら素敵ですね。ハイライトの粘り。フィルムにはじんわり来る良さがあります。

Tele-Rolleiflex (Sonnar 1:4/135mm), FUJICHROME PROVIA 100F, Photo by TAK

ウチとソトとをつなぐトンネル状のアプローチ。その奥は光が差すようにデザインされています。手前が暗くて視線の先が明るいという演出があるからこそ、ついつい覗いてみたくなりますし、入っていくと気分が変わるのです。 予約した店がこういう風に奥まっていると、それだけで得した気分になりますしね。

Tele-Rolleiflex (Sonnar 1:4/135mm), FUJICHROME PROVIA 100F, Photo by TAK

京都の町名表示板とアールヌーボーのランデブー。一番よく見かける表示板は「仁丹」なのですが、こちらは「フジイダイマル」(現在の「藤井大丸」)製です。元々は民家などの壁に貼ってあったのかもしれませんが、建て直し後も残してディスプレイしている家もよく見かけるのです。何百年も前のものだけでなく、ちょっと昔のものも残すって素敵だと思いませんか。

Tele-Rolleiflex (Sonnar 1:4/135mm), FUJICHROME PROVIA 100F, Photo by TAK


中望遠二眼でタウンウォッチング。写真散歩に奥行きを。

中望遠レンズを搭載したテレローライは、正方形のキャンバスに対象を歪めずにまっすぐ描くことができます。普段は気にも留めないような文字や壁や建物などにも目がいき、詳細をじっくりと観察したくなってくるのです。そもそもなぜ目がいくかといえば、撮り手がデザインに興味を持ったからに他なりません。デザインは単に気分で決められるものではなく、何らかの目的をもって作られていて、端的にいえば問題の解決を反映したものです。そこに注目することで、時代の背景や人々の暮らし、夢にさえも想いを馳せることができます。文字、形、空間。デザインに目を向けることで、カメラ散歩もまた違ったものになるでしょう。デジタルでもフィルムでもカメラは何でも良いのですが、なぜローライフレックスか。カメラを抱くように持ち下を向いて撮影する作法自体が、対象をゆっくりと愛でる気持ちにさせてくれる。鉛筆削り器のようにフィルムを巻き上げる時の感覚が平和的。ファインダー像が何とも美しい。優しいシャッター音が「撮った!」というより「撮らせていただきました。ありがとう」という気持ちにさせてくれる。そんなところでしょうか。

( 2017.09.22 )

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ソニーやナショナル(パナソニック)など、日本の家電が世界を席巻した頃のプロダクトデザインを、当時のカタログを複写することで紹介した楽しい一冊。「大百科シリーズ」を思わせる小ぶりで凝縮感たっぷりの製本もツボを心得ていて、部屋にコロンと置いてあるだけでもオシャレです。

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綺麗でカッコよくて有名なものだけが被写体ではありません。撮影中、通りかかった人に「何があるの?」と言われた方は少なくはないと思いますが、そんな方の心の拠り所となる一冊です。「トマソン」と聞いてピンと来る方も含め、是非とも読んでおきたい街歩きのバイブルでしょう。

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12枚しか撮れないのではなく、12枚で一区切りがつくのです。

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え?見てはいけないものを見てしまいました。

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