PY撮影ノート vol.4

すこし時間が空いてしまいましたが、実は3月末という後押しで新しい機材を買ってしまいました。前回登場したX-T1の兄弟、X-Pro1です。新しいカメラを手にするとワクワクして、写真を撮りたい気持ちが高まりますね。さて今回は新しいテクニックの話は横において、これまで解説した事項をどう作例に生かしているかを確認しながら、ホームグラウンドの江ノ電周辺を紹介します。おさらいのつもりで気楽にご覧ください。最終目的地は江ノ島某所。さあレッツゴー。

( 写真/文 : A.Inden )

A.Indenの撮影スタイルは歩きながらのスナップ。電車移動を基本に、駅と駅の間を歩きながら撮影します。車、自転車等移動手段はありますが、町を歩きながら心に引っかかったものをポツポツと撮っていくのが性に合っているようです。気になった路地に入って、素敵な被写体が見つかったときは最高ですね。

機材はFUJIFILM X-Pro1、XF35mmF1.4 R、XF18mmF2.0 R。今回はクラシックなスタイルで撮影しようと、セコニックの露出計を引っ張りだしてみました。持っている物は「ISO」が「ASA」という表記になっている古いものですが、形は発売当時(1976/L398)から現在までほとんど変わっていません。ストラップも少し古いものにしようと、ライカM6についていたものをチョイス。絞りを出来るだけ開けたいことと最高画質を得たいことから、感度はISO200(最低感度)、ホワイトバランスはその場の光を自然に写したいのでデーライト(晴天)、モードは気合いでマニュアル(M)、画質はJPEG FineでFUJIFILMの味付けを楽しみながら、RAWで自分だけの表現も試してみたくて贅沢にRAW+ JPEG Fine。セッティングが済んだら、江の電一日乗車券を買って藤沢駅より出発です。

鎌倉〜由比ヶ浜〜極楽寺

鎌倉から湘南にかけてのエリアは海も山もあり、様々なお店の並ぶ賑やかな通りがあると思えばひっそりと静かな路地もあります。歴史の深い建物を巡るのも良いですし、評判のスイーツをチェックポイントにするのも良い。いつ来ても何度来ても発見や出会いがある、お散歩スナップにはうってつけの場所です。普段は大通りを抜けていくのですが、今日は趣向を変えて住宅地を選びながら海まで歩いてみました。いつも訪ねる場所も通りを一本変えただけで、新しい景色に出会えますね。

マンションの花壇の古い切り株から少し出ている緑が気になり近づいてみると、下の植物が空洞を抜けて出てきていました。生命はたくましいですね。風化した木の表面と若葉の対比を強調しようと、開放で面のピントを意識しながら撮影しました。

住宅地を抜け海のすぐそばにある鎌倉海浜公園に到着。湘南の海は南の方向に広がっているので、海に向かって撮影するときは基本逆光になります。逆光の条件を生かして、二人でスケートボードを楽しむ小学生を撮影してみました。シャドウに露出を合わせて撮影するとハイキーになり、春らしい優しい光があふれた写真になりますね。

海の近くまでくると、置き去りにされて風景と同化したような被写体に多く出会えます。昨年の夏に遊び回った自転車も、冬の間はお休みでしょうか。忘れ去られた感じを表現してみようと露出を少しアンダーに、構図も被写体を真ん中に撮影しています。露出をアンダーにすると被写体が風景にとけ込んでしまうのですが、金属部分に空の写り込みを反射させる事によって、自転車の輪郭が浮かび上がるようにしています。

路地を覗いたらペンキで書かれた看板が気になって、誘われるがまま初めてのお店「カフェルセット」へ。お散歩スナップは適度に休憩を入れるのがコツです。それまでに撮った写真を見なおしたり、次の目的地を考えたり、美味しいものを楽しんだり。少し脚を休めながら、お気に入りのファーバーカステルのパーフェクトペンシルとお店の小物を生かして撮ってみました。面のピントを意識してスプーンの位置を少し奥にずらしています。鉛筆、テーブルの表面、スプーンの質感でお店のイメージが伝わりますか。

 

稲村ヶ崎〜七里ヶ浜

極楽寺から江ノ電を一駅乗ると、ここからは海を身近に感じる風景が続きます。海は南側に広がって日中は逆光となり、きらめく海を撮影するには良いポイント。七里ケ浜駅近くの駐車場は江ノ島を西に眺める事ができる絶好の夕日スポットです。

稲村ケ崎の駅を降り、坂の上から光る海が見えたらすぐに海岸です。砂浜で遊ぶ少女達を狙ってみました。海はよく撮る被写体なのでカメラのテストもかねてオートで撮影。露出補正なしで少しアンダーになりましたが、少女達の思い思いの姿がシルエットになって、いい感じですね。カメラのオート機能は、各メーカー、カメラによって個性があります。新しいカメラを手に入れたときは、よく撮る風景で、露出、ホワイトバランスを確認してください。カメラの個性とうまくつきあう事が、写真表現の幅を広げてくれます。

七里ケ浜駐車場下の海岸では、大勢の人たちがそれぞれのペースで楽しんでいます。先ほどの写真とは違い、人の表情や服装が感じられるように露出を上げています。光の条件や砂浜の色は上の写真と同じですが、露出によってこんなにも違う事が分かります。

 

鎌倉高校前〜腰越商店街〜江ノ島

また電車に乗り、海が見えるプラットホームが有名な鎌倉高前駅で下車。ここから線路沿いに西へ歩けば、江ノ電が道の真ん中を走る腰越商店街に辿り着きます。昭和の匂いが残る街並みを散策しながら、江ノ島へ向かうとしましょう。

11時過ぎに藤沢を出発して、夕暮れ時に江ノ島到着。この日は風が強く潮で霧がかかったようになり富士山は見えませんでしたが、4月は夕日がちょうど富士山の近くに沈む季節です。場所により富士山と太陽の関わり方は違ってきますが、いい条件の撮影ポイントを探せばダイヤモンド富士が撮れるかもしれませんね。

やっと最終目的地「藤波」に到着。この純米冷や酒を飲みたくて江ノ島まできました。とびっきりの撮影ポイントを期待していた方、ごめんなさい。写真はあまり勤勉に撮るのではなく、楽しみながらが一番だと思うのです。とろっとした感じが美味しそうでしょう? これも写り込みを・・・おっと、野暮な話はやめて素直にお酒を楽しむとしましょう。

夏が訪れる前の江の電周辺は、まだ人も少なくゆったりとした時間が流れる素敵な場所です。疲れたら立ち寄れるお店も多くあり、マイペースで撮影を楽しめます。ぜひお気に入りのカメラを持って出かけてみてください。復習の意味で作例を紹介してきましたが、今まで紹介したテクニックでは解説できない作例が沢山残ってしまいました。要するにまだまだ紹介しなければならない技があるという事ですね。さて、第4回はティーブレイク。次回からバリバリ新しい技法を紹介していきます。それでは。

( 2014.04.30 )

<参考情報>
路地裏で偶然見つけた: 「カフェルセット」
最終目的地: 「藤浪」
※おすすめは海の見える2階と約17種類から選べる2品定食。大勢だと、いろいろな種類が楽しめますね。

<使用機材>
カメラ: FUJIFILM X-Pro1
レンズ: XF35mm F1.4 R / XF18mm F2.0 R
露出計: SEKONIK スタジオデラックス

<バックナンバー>
Vol.01: PHOTO YOKOHAMA 2014 -「写り込み」
Vol.02: 河津桜 -「順光、逆光」
Vol.03: 「ピント」のお話