PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
SIGMA 300-600mm F4 DG OS | Sports
[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ
シグマのスポーツラインからF4固定の大口径超望遠ズームレンズが登場しました。現在用意されているのはLマウントとEマウント用で、こちらはEマウント用のレビューとなります。F4通しでテレ端600mmというのは記憶違いがなければ世界初のスペック。「あったら良いな」と潜在的に待ち望んでいたような革新的な製品を、相変わらず見事に投入してきますね。超望遠単焦点レンズ600mm F4といえばプロユースの定番。遠方の被写体を大きく捉えるためには持っておきたい、いわば超望遠の標準的存在とも言えます。本レンズはその600mmから超望遠の入り口的な焦点距離300mmまで、「ズームアウトできるロクヨン」とも言えるかと思います。例えばスポーツ撮影などにおいて、引いて全体を写したり、被写体をグッと手繰り寄せて一部を切り取るなんてことも定点で可能になってきます。600mm以上の望遠はクロップ等で対応できたとしても、その逆は不可能。それをF値不変で行えるのは大きな武器になるでしょう。長さはフード無しの状態で約471mm、重さは3,970g。フード装着時にはレンズ単体で4kgを超えてきます。重量級ですが、実践においての使用感はどうか、また想定されるシーンで重要となってくる被写体の追従性や手ブレ補正の効きなど、画質と併せてそのあたりもお伝えできればと思います。
( Photography & Text : TA )
まずは外観から見ていきましょう。こちらはフード装着時。鏡胴主要部は軽量で頑丈なマグネシウム合金、フードはカーボンファイバー製で、外装はともに遮熱性のある白色仕上げとなっています。リング類は左からファンクションリング(白)、ズームリング、フォーカスリング。ファンクションリングは新たに搭載された機能で、フォーカスプリセットまたはパワーフォーカスの機能選択が可能となっています。フォーカスプリセットモードは、左右いずれかに回転させることで、あらかじめ登録したフォーカス位置へフォーカスを瞬時に移動させることができる機能。パワーフォーカスモードは、スムーズなピント送りや、手持ち撮影時にも少ない動きでフォーカシングすることができる機能となっています。防塵・防滴対応で、前玉には撥水・撥油性を持つフッ素コーティングが施されており、ハードな使用にも十分に耐えうる堅牢性も確保されています。
鏡胴側面、三脚座に多機能な操作パネルを備えており、リアには40.5mm径のドロップインフィルターホルダーが備わっています。透明フィルターが標準で付属しますが、市販のフィルターも使用可能とのこと。手ブレ補正のモードは1が通常時、2がパンニングなど向け。OS2は、構図の横位置・縦位置を問わず、カメラを上下や斜め方向に動かした場合でも手ブレ補正が有効に働きます。
フード無しの状態。三脚座には前後に1/4インチネジ、中央に3/8インチネジ、計3つのネジ穴があり、多くのクイックリリースプレートや高耐久三脚に適合します。アルカスイスタイプのクランプにも対応。360度回転でき、90度ごとにクリックが設けられています。クリックのオン/オフを切り替えるスイッチも搭載。また回転機構にベアリングが採用されており回転もスムーズです。キャリーハンドルとしても優秀で、クッション性のある合成皮革カバーが当てられていたりと、手が痛くならないような配慮がなされています。
まず持ち出したのはモータースポーツのフィールド。本レンズをアイレベルまで持ちあげてホールドを続けるのは楽ではありませんが、焦点距離600mmで5.5段分の手ブレ補正効果を期待して、手持ちで撮影しています。焦点距離は520mm付近。カメラを縦でも横でもない斜めに構えていますが、ファインダー像も確かに止まっており、被写体もまたしっかり止めることができました。AFも爆速です。撮影者自身の動きは多少なりとも制限されるものの、ズームリングの位置や操作感も良好で、引いたり迫ったりと画角の自由度の高さはそれを容易く超えてきます。ちなみにトップの画は24時間耐久レースの夜間走行テストを撮影したものです。300mmワイド端、シャッター速度は1/8。暗所での流し撮りも結構な好打率で結果を出し続けてくれました。F4の大口径であること、そして静かに瞬時に合うオートフォーカス。被写体のトラッキングまで問題なく動作し、なおかつ流し撮りを快適に行える手ブレ補正(OS2)の強力なサポートがある。暗い中での撮影も心強いものでした。連写は15コマ/秒に制限(Eマウント)されますが、多くのユーザーにとって十分なコマ数だと思います。
目の前をマシンが一瞬で走り抜けて行く。思いのほか速くて驚いたのですが、ややもすると撮影を諦めてしまうような暗がりの中、サーキットでのスピードにも難なく対応できたのは紛れもなく機材の力だと思います。
横殴りの強風で波が高く、肉眼で被写体を追うのが難しかったのですが、レンズの捕捉能力に随分と助けられました。
ズームインして一部を強調する表現も良いですし、逆にこのようにズームアウトして全体を捉えるのもいいでしょう。構図の自由度の高さがズームのメリット。写りはズームレンズであることを感じさせませんが・・。
ボケも素晴らしく、単焦点のようなヌケの良さ、空気感の巧みな演出に驚きます。やわらかな毛質であろうことを感じさせる髪の毛一本一本、さらには産毛まで緻密にトレースされています。Tシャツの質感もリアルそのもの。
高速で向かってくる新幹線もいとも簡単にピタリと止めます。2次元的な動きだけでなく、3次元的な動きにもしっかり対応します。
線が細くシャープに像を結べば結ぶほど、描写は精細となり、ひいては立体感へと繋がっていきます。何度でも言いますが、写りはもはや単焦点です。
届かなかった瞬間に、手が届く
「この場面で引けたら」「もう少しF値が明るければ」「もっと鮮明に残せたら」・・。本レンズは、その「あと一歩」を埋めてくれる一本だと思います。600mmまで届くズーム域をF4通しで確保しつつ、高速AFや追従性、手ブレ補正にも妥協がありません。昼夜の境目を意識させないその性能には、ただただ感心するばかりですが、その上しっかりと結果を出すのですから本当に大したものです。夜のサーキットは夜の飛行場よりもかなり暗くなります。それでもマシンにピントを合わせ、緊迫した瞬間を逃さず切り取ることができました。しかもそれはノイズが少なく鮮明な写真。あと少し届かなかったシーンがファインダーに収まって、撮れた一枚に思わずニンマリとしてしまう。この喜びこの感動は、ぜひ皆さんにも体感してみて欲しいですね。重く大きなレンズですが、意外とホールド時のバランスは良く、一脚の座りも良いです。本気で撮る人にこそ選んでほしい一本。手にすれば、必ずや表現の幅を確実に広げてくれると思います。
( 2025.06.11 )
間違いのない描写力はレビューの通り。AFも手ぶれ補正も完成度が高く、実践において強力にサポートしてくれました。良い筋トレにもなって運動不足の解消につながる1本。良いことづくめです。
レンズに装着したまま、ダイヤル操作で効果の調整ができるドロップイン式PLフィルター。ガラスや水面などの反射を取り除く効果や、風景写真などでコントラストを高める効果があります。
レンズに装着したまま、ダイヤル操作で効果を調整できるドロップイン式NDフィルター。最大約7段分の減光が可能です。日中でも大きく絞り込まずに低速シャッターで撮影できます。モータースポーツの流し撮りなどに。
長寿の秘訣かもしれません。