PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
SONY SEL50F14GM FE 50mm F1.4 GM
[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ
ソニーの50mm単焦点に、新しいF1.4のG Masterレンズが登場しました。ソニー独自の超高度非球面XAレンズを2枚、EDガラスを1枚採用した11群14枚の新しい光学設計で、G Masterならではの圧倒的な高解像と上質なボケを期待してしまう1本。それでいて重さ516g・長さ96mmと軽量コンパクトに収まっているから驚きです。最高の明るさを誇る「FE 50mm F1.2 GM」はもとより、同スペックの「Planar T* FE 50mm F1.4 ZA」よりも軽快に扱うことができ、日常のスナップにもピッタリ。操作系ではクリックあり・なしの切り換えができる「絞りリング」や、絞りリングの誤操作を防止する「アイリスロックスイッチ」、カスタマイズ可能な「フォーカスホールドボタン」などを搭載し、利便性を向上しています。写真好きなら何本持っていても楽しい50mm、さっそく絞りを開いてでかけましょう。
( Photography & Text : Serow )
初夏のような日差しのなか、みずみずしい緑を見上げてワンカット。ピント位置まで4〜5mの距離だったと思いますが、重なる葉の一枚一枚を見事に描写してくれました。複雑にトーンの異なる緑色を描き分け、わずかな距離の違いでアウトフォーカスしていく様も実にナチュラルです。
被写体に近寄ればこんな具合。被写界深度が浅くなってボケも大きくなる一方、葉脈までしっかり認識できる描写力で嬉しくなります。クリアで鮮やかな色も気持ちよさの秘密でしょう。
少し絞ることで周辺減光も改善され、一層端正な印象になります。それでも近めの位置にピントを置けば、大胆に背景を整理することが可能。F2.8まで絞るならF1.4のレンズは要らない・・・と、本当に言えるでしょうか。
遠景でも開放からシャープな描写を見せてくれるレンズですが、空などが大きく入るようであれば少し絞るとバランスの良い画質になります。絞りリングのクリックはスイッチひとつでOFFにすることが可能。スチルだけでなくムービー撮影も見据え、幅広い用途に対応しています。
一体何が写っているのか、なんていうのは野暮なツッコミです。新しいレンズを手にしたら無闇にシャッターを切るのが正常な反応。どうということのないシーンで、光の捉え方やスムースなボケにうっとりできるのが良いレンズを手にした者の特権ですよね。
ちょっと離れた距離にピントを置いたとき、大口径レンズならではの立体感ある写りが美味しいと思います。50mmという焦点距離は伝統的に標準と言われますが、スマートフォンの広角レンズに慣れた昨今では「少し被写体と距離をおいた」感覚に。眼前の世界に没入せず、少し客観的に切り取るスタイルに、本レンズの描写はマッチしますね。
レンズに添える左手にすっぽりと収まるようなサイズですから、街歩きで撮影していても大きな違和感がありません。それでいてカメラを構えてファインダーを覗けば、どこにピントを合わせるのか明確な意志を求められる。ピント位置から離れた被写体はボケて形を失っていきますから撮影は選択の連続です。これこそ大口径単焦点レンズの醍醐味でありましょう。
ポジフィルムを眺めているかのようなリアリティにぐっと来ます。光量が乏しくなっても色乗り艶やかに描いてくれるから頼もしいですね。若干の糸巻型歪曲がありますが、使っていて気になるほどではないと思います。
最短撮影距離付近ではピント面も極薄。背景は蕩けて形を失い、絵画的に整理されます。少し日も落ちてきて、シリアスな雰囲気になりました。
撮る喜びを掻き立てる、新たな50mmの登場
いや、やはり50mmレンズは楽しいですね。一日撮り歩けばズームレンズに慣れた身体も慣れてきて「そうそう、50mmのスナップってこうだったな」という感覚を思い出しました。さっとカメラを構えてファインダーを覗き、気になったものにフォーカスを合わせる。AFもスムースですから小気味よくシャッターが切れて、再生してみれば大口径レンズらしい豊かな表現力にうきうきする。なめらかで美しいボケが被写体を際立たせてくれるから、写真が上手くなったような気がしてしまう。そうしてまたシャッターを切る数が増えていく。
こんなふうに気持ちを高揚させるのは、やはりクオリティなのでしょう。開放からすこぶるシャープでクリアな写りは、まさに一皮剥けたような気持ちよさ。これでいて小型軽量、使い勝手も向上したということもポイントで、一日持って歩くことにも抵抗を感じさせないからこそ撮影に連れ出せるわけです。これを動画撮影に使えば一体どれほど印象的な画が撮れるでしょう。大口径レンズの描写力を知る方に、フィールドに連れ出してそれを活かせる方に、強くおすすめしたい1本です。
( 2023.04.23 )
幅広い表現力を手にしたい方に必携のレンズです。50mm F1.4なんて、何本持っていたっていいのです。
転ばぬ先の杖。