PHOTO YODOBASHI
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SONY SEL2870GM FE 28-70mm F2 GM vol.1 vol.2
[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ
ソニーの「FE 28-70mm F2 GM」です。このレンズについては発売直後の2024年12月にシューティングレポートをしていますがこれはその第2弾。レンズの概要や写りについては第1弾で説明されているので、ここで改めて重ねる必要はないでしょう。ではなぜ第2弾か。今回はシューティングレポートというよりは、「スナップのお供としての使い勝手」という視点で本レンズをご紹介したいと思います。
あらかじめ被写体が決まっている撮影ならともかく、あてどもなく歩き回り、何が飛び出して来るかわからないスナップ撮影では、機材はできるだけ軽くて小さい方がいいのは自明の理。多少のことは犠牲にしてでもこの点を重視すべきなのは、みなさんも経験からよくご存知でしょう。その点、このレンズは重さ918g、外形寸法92.9×139.8mmと、お世辞にも軽くて小さいとは言い難い。それなのにスナップ? そうです。その「敢えて」の部分に今回は挑戦してみました。
( Photography & Text : NB )
まず最初に言っておきますが、「大きくて重い」といっても、性能を考えたら決して大きくも、重くもありません。ここで言っているのはすべて相対的な話。
スナップだからと言っていい加減なフレーミングでもいいというわけではありません。被写体に正対して水平・垂直がきちんと出ているかどうかで出来栄えが大きく変わってしまう場合、当然一発では決まらないわけで(私はこれが大の苦手です)、何度も撮り直すことになります。息を止めて構図を決め、ファインダーの隅々まで確認し、よし!と満を持してシャッターを切るものの、確認するとアレ? 延々これの繰り返し。やがて呼吸は荒くなり、腕は震え、中腰姿勢により足腰が限界を迎え・・やはりこういうシチュエーションでは大きくて重いレンズは不利・・と言いたくなりますが、大きくて重いレンズだからこそ、この結果が得られるわけです。
一本だけ差してある日傘。回り込んだ光の感じからして、外は強い日差し。音はどうしょう? おそらく静寂。あるいは蝉時雨か。これだけで物語が成立しそうです。ごく薄いピント面とシャープな描写がもたらす存在感。こちら側に向いた柄の先端がすでにボケていますが、ここまでピントが合っていたら、写真の雰囲気はだいぶ変わっていたでしょう。蕩(とろ)ける後ボケも良いですね。
これも薄いピント面が効果的です。そして毛羽立ちのような、薄いベールがまとわりつく感じのボケ。シャドウもハイライトも、ちゃんと破綻(という言い方が適切かどうかはさておき)する。良いレンズです。
最短撮影距離は38cm。このカットが最短まで寄って撮ったものかどうかは覚えていませんが、まあ最短付近でしょう。テレ端ならこのぐらいには撮れます。なんにせよ寄れるズームは、およそスナップで出会う被写体なら何らか対処のしようがあります。
打って変わって遠景。ここまで距離があっても、人物や岩場が浮き立つよう。立体感がすごいです。遠くにうっすら見える陸地や、沖合に浮かんでいるブイの描写にも注目です。
距離や対象物によって後ボケの雰囲気が大きく変わるのも、このレンズの一粒で二度おいしいところ。遠くの木々や地面に生える草のそれもそうですが、とりわけ人物の頭上あたりに見えるプログレッシブな後ボケときたら。これは前ボケの影響を受けてこうなっているのでしょうか。ムンクの絵を思い出しました。
こういう場合、シャッターチャンスがやってくるのを待つ派ですか? 待たない派ですか? いずれにせよ基本的には1チャンス1カットなので、どちらにピントを合わせるかでも悩みますね。これも障子の桟(さん)がわずかに歪んでいたり、反対に古いガラス特有のわずかな歪みが表現されていなかったとしたら、それはとても残念なことだと思うのです。
撮ったものをあらためて精査してみると、撮影カット数の6割以上がテレ端、つまり70mmで撮ったものでした。スナップ撮影に単焦点レンズで臨む場合、盲目的に広角レンズをチョイスしがちですが、何でしょうこの矛盾は。でも不思議なことに70mmだといい感じにフレーミングできるんですよね。その意味で28-70mmという焦点域はとてもスナップ的だと思うのです。
このレンズじゃなきゃ撮れないんだからしょうがない
大きくて重いといっても、センサーが露光している時間はわずか数百分の1〜数千分の1秒。それぐらいが我慢できない筈がないでしょう。結論から言えばそういうことです。大丈夫。このレンズでスナップ、行けます。
もちろんスナップ撮影向きではない面は多いです。撮影している時間より持ち歩いている時間の方がはるかに長いので、まずはその問題があります。さらに、大きなレンズはどうしても周囲に警戒感を与えがちです。持っているだけですれ違う人にジロジロ見られますし、カメラを構えたら構えたで、レンズを向けた先にいったい何があるのかと訝しがられます。ルール/マナー違反は論外ですが、一部の人たちの行動によって、写真を撮る人に悪いイメージが定着しかけていると、時として感じないわけでもありません。とにかく大きなレンズは(私たちが考えている以上に)目立つのです。結果的に、咄嗟にレンズを向けるという動作に躊躇が生まれる。これはスナップ撮影では致命的です。
でも、です。やっぱり軽くて小さなレンズとは写りが違うのです。あとは、「スナップだから」という理由でどこまで妥協するか(あるいはしないか)という、ただそれだけの問題。理想論は時として窮屈です。妥協も大いに必要でしょう。デメリットを考えたら、そこまで大きな違いではないのかもしれません。こんな時、「並べて較べて初めて分かる程度(の違いしかない)」という言い方をよくしますが、そんなもの、常にベストを求める人にはなんの慰みにもなりません。どんな時でも妥協できない、真の写真探究者向け。
( 2025.06.27 )
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