PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
SONY SEL24F14GM FE 24mm F1.4 GM
[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ
高い描写性能と集光力、そして使い勝手にも拘った「Gレンズ」の頂点に君臨する「G MASTER」シリーズ。その称号は、本来であれば両立の難しい“高解像力とボケ味の美しさを高い次元で両立させた”という名レンズが揃っています。これまで大口径ズームレンズと望遠〜超望遠域の単焦点レンズを7本ラインナップしてきましたが、いよいよ広角レンズにも展開が始まります。その最初の1本となるのは、標準ズームレンズの広角端としても馴染みの方が多い24mmレンズ。そこへF1.4のハイスピードレンズとして「SEL24F14GM FE 24mm F1.4 GM」が登場しました。
本レンズの最大のポイントは、大口径F1.4の高い描写能力、そして小型軽量。10群13枚のレンズ構成のうち、超高度非球面レンズ(XAレンズ)を2枚、特殊低分散ガラス(EDレンズ)を3枚採用し、高解像度が求められる風景撮影や点光源の再現性が求められる星空撮影にも対応する描写能力を持ちながらも、F1.4の大口径を実現しています。しかも11枚の絞り羽根を採用するなどボケ味も徹底的に拘っているようです。これまでにリリースされてきたG MASTERレンズはどれもそのボケ味がたいへん素晴らしいものでした。それだけに本レンズにも自ずと期待が高まります。また、贅沢かつ複雑なレンズ構成ながらも、Eマウントのショートフランジバックを活かした設計や新開発のAFモーター「ダイレクトドライブSSM(DDSSM)」を採用することで、小型軽量化を達成。92.5mmの全長に445gの重量は、同スペックのレンズでは最軽量とのことで、今回レビュー撮影を行いましたα7R IIIとの組み合わせでは計1102g。これはフルサイズ一眼レフに同スペックのレンズを合わせた重量と比べても大幅に軽量・コンパクトな仕上がりとなっています。
前置きが長くなりました。それではG MASTERシリーズ最初の広角レンズ、その類い稀な描写性能をたっぷりとご堪能ください。
「闇」の色を見たことがあるか
シャドーを愛でる
G MASTERレンズの描写を信じて、思い切りローキーな世界に浸ってみました。思った通り絶妙のコントラストで、シャドーの中にもシャドーが滑らかなグラデーションの中に表現されていました。谷崎潤一郎の”陰翳礼讃”の中の「『灯に照らされた闇』の色を見たことがあるのか。」という言葉に感化され、それを表現するためにフィルムサイズを大きく、現像は軟調にしシャドーの階調を大事にしていた時期がありました。FE 24mm F1.4 GMで撮影すると、機材をデジタルに変えてから忘れていた、そんな感覚を思い出しました。
ソニーのG MASTERシリーズの描写は、コントラスト、彩度が高い映像に慣れた目には、一見頼りなく感じることがあります。しかしそれは、階調をなだらかなグラデーションで表現した柔らかなトーンから受ける印象です。画をじっくりと見てみると、ハイライトからシャドーまでの光を大事に拾ってきていることがわかります。α7S IIで画素数を抑えてまで一画素あたりが受ける光の量を増やし、階調を大事にしたソニーらしい結論の出しかただと思います。
豊富な階調を楽しむ。デジカメの進化と共に、レンズもまたステージをあげてきたようです。(A.Inden)
開放での撮影です。ピントピークは岩の質感がしっかりと再現され、ザラッとした触り心地さえも感じさせます。岩の左下、ピントピークと柔らかい後ろボケとの効果で、岩肌が浮き出したように感じさせます。後ろボケは柔らかいですが、崩れる事なく海の煌めきや波の雰囲気が十分感じられます。
解説はいらないですね。周辺まで崩れることなく、どこまでもシャープに描写されています。葉一枚一枚の立体感も見事ですね。さらに、豊かな階調が木々の間にこもっている湿気を感じさせ、クリアーな描写のなかに独特の空気感が感じられます。
(サムネイル画像のクリックで原寸画像をご覧いただけます)
やわらかな秋の日
一歩先をいくソニーが放つ高性能コンパクト大口径レンズ。
カメラの高画素機化が進む一方で当然レンズの性能もそれに対応せざるを得ないわけですが、レンズの性能を上げるということはサイズも重量も大きくなってしまうのが大きな課題です。今回登場したFE 24mm F1.4 GMはかなりのハイスペックに対して小ぶりで軽いという印象でした。ボディに装着して電源を入れると背面液晶に映し出されるライブビュー画像はすでに凄いボケとキレ。またソニーがどえらいレンズを出してきたなぁと、それが第一印象でした。そしてシャッターを切るとその写りは見ての通り猛烈なキレと自然で柔らかなボケ、歪みも滲みもほとんど感じません。いったいなぜこれほどの写りとコンパクト化が実現できたのかが不思議になるほどでした。調べてみると、さすが一歩先をいくソニーさん、センサーの未来を見据えたレンズ設計をしているとのことで、超高精度の非球面レンズXAレンズを作り出せたのがレンズの小型化に大きく関係しているようです。それに加えてボディ側でレンズの各種補正を微調整ができますのでさらなる小型化も可能になったわけです。
外装もとても質感が良くスタイリッシュです。またムービー撮影用に絞りのクリック切り替えスイッチが付いていますからムービー撮影用としても活躍の場はありそうです。今回は撮れませんでしたがこのレンズでムービーを撮影できたらと想像しただけでいい画が撮れそうです。
まさにセンサーのリーディングカンパニーであるからこそ、一歩先のそのまた先を見据えたレンズ作りに感服しました。少々お高いですが安心して長く使えるこの「SEL24F14GM FE 24mm F1.4 GM」は間違いなくお買い得と言えるでしょう。(Z II)
柳の木のそばでキラキラと透けた葉と歩く人を撮ろうと待っていると、頼んでないのに葉を触ってくれるという演出をしてくれました。なんてことのないシーンが一々かっこよく撮れます。
庭園で曇天が映る池を眺めていると同じく曇天を見上げている亀がいて、まるで鏡の中の自分を見ているような気持ちになりました。しっとりと色が乗り何を撮ってもドラマチックに写るレンズってそうそう無いです。
(サムネイル画像のクリックで大きな画像をご覧いただけます)
フルサイズ・Eマウント最初の24mmは、いきなりの上がりレンズ
いかがでしたでしょうか。中心部は当然としても、確かな情報量を持つ繊細な描写が隅々まで行き渡っています。絞り込んでの広角レンズらしいダイナミックなスナップ撮影や定番の風景撮影はもちろんですが、24cmの最短撮影距離を活かして室内撮影やテーブルフォト、そしてポートレートまでこの美しいボケを表現のひとつとして引き出すことができるのではないでしょうか。以前、SEL85F14GM FE 85mm F1.4 GMで撮影した時にも感じましたが、G MASTERレンズは単に高コントラストでシャープな描写をするというのではなく、線が細さを感じるシャープさに滑らかなトーンが組み合わされ、柔らかくも実に上質な描写と感じました。そのDNAは本レンズにもしっかりと受け継がれているようです。サムネイルのカットに原寸画像を入れていますが、42MPのα7R IIIとの組み合わせでも解像不足を一切感じず、むしろ余裕すら感じる程で、光学性能に加えてレンズの組み立てや調整で追い込まれている精度の高さにも感心した次第です。
24mmとなると、標準ズームの広角端や広角ズームレンズでカバーする焦点距離ですから、開放F2.8クラスのレンズだと「敢えて単焦点で」という理由を見つけにくい方も多かったのではないかと思います。一方でF1.4クラスの大口径レンズは広角レンズとはいえそれなりに気合いの求められる大きさ・重さが一般的であり、1本加えればカメラバッグの重量が明らかに変わることに躊躇された方も多いのではないかと思います。本レビューで紹介しました「SEL24F14GM FE 24mm F1.4 GM」は、ズームレンズでは実現不可能な美しく大きなボケ味を演出可能な明るさを持ちながらも、F2.8クラスよりも少々重い程度の普段使いにもってこいのハンドリングのよさを達成し、このレンズにしか実現できないキャラクターをしっかりと魅せてくれています。しかも、フルサイズEマウントレンズでは初の24mm単焦点。少々値は張りますが、この1本を手に入れてしまえばもう24mmレンズ選びで迷うことはないと言えるのではないでしょうか。
( 2018.10.28 )
少々値は張りますが、G Masterシリーズの名に恥じない上質な光学性能をどうぞご堪能ください。小型・軽量ですから、カメラバッグのあの空きスペースにしっかり収まるのではないかと思われます。
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写真を見るだけが学びではない。文字で光のことを考え、そして学ぶ。