PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
SONY SEL135F18GM FE 135mm F1.8 GM
[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ
CP+開催の前日、ソニーからリリース予告されたEマウント用単焦点望遠レンズ「SEL135F18GM」。ブース内にはハンズオンコーナーも用意され、実際に試された方も多いことでしょう。その予告通り4月19日に発売となりましたのでレビューをお届けします。型名の末尾に付されているのはGMの文字、そうですG Masterレンズです。かれこれ4年ほど前でしょうか、それまでのGレンズをさらに超える光学性能を備えたG Masterレンズがラインナップに加わったのは。「高解像」と「ボケ味」という一見すると相反する(ザックリ言ってしまうと硬と軟ですからね)その二つを高い次元で両立させたレンズの称号それがGMです。とさらっと書いてしまいましたが、かなり凄いことでそれを可能にした立役者が、0.01ミクロンレベルの表面精度を持つ超高度非球面XA(extreme aspherical)レンズ。「SEL135F18GM」はそれに加え、スーパーED(特殊低分散)ガラスやED(特殊低分散)ガラスを組み込むというリッチな光学系を有しています。焦点距離は、望遠域への入り口でもある135mm。F1.8という大口径をもってしてどのような画を紡ぎだしてくれるのか?前置きはこのぐらいにして、ソニー渾身の9本目となるG Masterレンズの写り、隅々までたっぷりとご覧いただきたいと思います。
( Photography & Text : KIMURAX )
メルヘンチックな雰囲気とでも申しましょうか、とても柔らかなボケ味ですね。前ボケ、後ボケ、ともに自然に溶け込んでいます。適正露出で撮影したカットは、フォーカスした花弁の輪郭をピシッとトレースしていたので、少々馴染むようにトレースしていたハイキーに振ったこちらのカットを掲載しています。
少々雲が覆いだした時間帯でしたが、春めいたほんわかとした空気感が欲しくてハイキーに。それなりの距離はあるものの、フォーカスした三人の後姿はキリッと。かといって硬くなりすぎることはなく、デフォーカスエリアとのバランスも良好です。それがこのいい塩梅の立体感を生み出しているのですね。
お嬢さんの髪の照り返しからもわかるように、猛烈な昼下がりの日差し。背景の桜の花が反射して玉ボケになるような条件ですが、ボケ味が暴れませんね。いわゆる普通のレンズだったら背景がざわついてかなり目立ってきそうなものですが、実によく踏ん張っている。というか巧くいなしているという印象です。少々離れてはいるものの、克明に表情を捉えつつもほっぺたを優しく描くあたり、これぞポートレートレンズと呼ぶに相応しい描写力です。AFも瞬時に合焦するので欲しい瞬間を逃しません。
色乗りも良好。ちょうどビルで影っていた軟調なシーンですが、メリハリのある描写ですね。明るくヌケのよい単焦点レンズらしい写りですし、4240万画素を有するα7R IIIのセンサーへ、しっかりと光の情報を届けていることが窺い知れます。
日は傾きつつもまだまだ力強い光を放っていました。その日差しでフェンスのボケが二線傾向になったり、少々悪目立ちしても何ら不思議ではないシチュエーションですが、それも皆無といっていいでしょう。強風で倒されていた主役の、ちょっとくたびれたようにも感じる佇まいを、ノスタルジックに捉えることができました。
大きなボケも魅力ですが、何がボケているのかを何となくわかるところまで、少し絞ってあげる必要も時にはありますよね。
弾ける水の表情。拡大してみるとそこへの映り込みが見てとれます。丸みを帯びた水滴自体がレンズのような働きをするので、その輪郭に色収差が現れやすいものですが、しっかりと抑えられていますね。すっきりとクリアです。
光の乏しいシーンでも、明るいレンズなら高感度に頼らずに手持ちで臨めるのがいいですね。F1.8の大口径ですから、さすがに絞り開放では周辺の玉ボケに口径食が見られます。しかし縁取りが強く出ないためか、これはこれで画の世界感にはピッタリ。
また撮影に出かけたくなってしまう、魔性のレンズ。
寄っても引いても叙情的な画に仕上がってくるもので、自分の腕が上がったのでは?とつい錯覚してしまうのです(笑)。もちろん一朝一夕にそんなことが起こるはずもなく……まさしく本レンズのお陰さまさまであることは明白なのであります。135mmというとポートレートに用いられることの多い焦点距離とあって、ポートレート専用というイメージを持っていらっしゃる方も中にはおられるのではないでしょうか。いえいえ、ここまでご覧頂いたように遠景だって絞り開放からキリッと解像してくれますからね。ストリートスナップ的にブンブン振り回してみたいという衝動に駆られたのは、おそらく私だけでは無いと思うのです。露出をハイキーに振って柔らかさをたたえた画に仕立てるもよし、アンダーに振って解像感をより際立たせるもよし。なんなら適正露出のままでもグッとくる画があれよあれよとものにできてしまう、実に表現力に長けた隙の見当たらないレンズです。これだけよく写ると、また次の日も撮影に出かけたくなってしまう。正直クセになるのです……そう、いつの間にやら中毒になっているという、ホント困ったレンズです。たった二日の撮影でもう虜です。試したつもりが、手元に置いておくようになってしまう自分がいるのがコワイです。
( 2019.04.21 )
ご遠慮なさらず、ご自分の写真にどっぷり酔い痴れてください。
薄型設計、ソニー純正ツァイスのT*プロテクターで大切に。