PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
Tokina FíRIN 20mm F2 FE AF
[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ
トキナーから登場しました、ソニー・フルサイズEマウント向けとなる「Tokina FíRIN 20mm F2 FE AF」をご紹介します。ご存知の方も多いと思いますが、ミラーレスカメラ向けのプレミアムなブランド「FíRIN」シリーズとして、第一弾となる「FíRIN 20mm F2 FE MF」が昨年登場し、PYでも実写レビューをご紹介しました。今回第二弾として投入されたのは、同じ光学系のAF版。光学系が同一となれば、MF版の特長であった“美しいボケを楽しんでいただける超広角レンズ”という性格に変わりはありません。元々趣味性の高いレンズですから、マニュアル操作でピントや露出を追い込む楽しさや故障の少なさなど、MF版の良さももちろんありました。とはいえ、超広角でのピント精度や実用性を踏まえれば、AFレンズとしての再登場は歓迎すべきことでしょう。焦点距離は20mmですから、標準ズームレンズの広角端よりもワイド。しかもF2の大口径を実現していますから、低照度下での撮影や超広角でボケを演出させたカットなど、新たな表現へと導いてくれる1本となるのではないでしょうか。
( Photography & Text : Naz )
陽春
寒かった冬が過ぎ、春が来たかと思えば一気に暖かな陽気となりました。陽射しはずいぶんと力強くなり、外へ出れば鮮やかな色彩が溢れています。こんな季節は花や新緑をたっぷり撮りたくなるものですね。今回はそんな4月の関東を中心に本レンズをマウントして撮り歩いてきました。
まず、本レンズをカメラにマウントして最初に感じたのは、「実に立体感のあるレンズ」だということ。これはファインダーを覗けばすぐに感じていただける、本レンズ最大のポイントです。「F2」という開放値は想像していた以上に被写界深度が浅い印象で、ピントの合ったところと外れたところを明確に描き分け、数メートル離れた被写体でもその前後はしっかりとボケてくれます。このなだらかに連なる描写や柔らかさのある美しいボケ味など、超広角レンズとして主張しすぎない個性こそがこのレンズの個性でもあり、しかも上がりを見れば高い性能や存在をしっかりと感じることができるものに仕上がっています。風景や建築など超広角らしい被写体もいいですが、スナップやポートレートにも積極的に使ってみたくなる描写と言えるでしょう。
最短撮影距離は0.28m。描写性能を担保するためにも仕方がないのでしょうが、「あと5cmでもいいからもう少し寄れたら」といったシーンが撮影中に何度かありました。恐らくこのレンズの良好なボケ味をもっと引き出したいと思うからこそ出てくるものなのでしょう。たいへん素晴らしい性能を持っていますが、本レンズの唯一といっていい不満はそこだけです。
- 本レンズはやや樽型の歪曲があり、直線の入った被写体では少々気になるレベルではないかと思います。スペック表によれば光学補正対応レンズということで、今回は現像ソフトにて補正を加えたものをご覧いただいています。
- 開放でこの描写、この立体感。超広角レンズでこれだけ前後をしっかりと描き分けられるレンズもなかなかありません。せっかくの「F2」ですから、積極的に開放を使いたいものです。
- MF版では角形フードでしたが、AF版は一般的な花型フードとなりました。その遮光性能は良好ですが、フレームに強い光源が入る場合は、ゴーストが出やすいようです。ファインダーで確認しながら撮影できますから、少しカメラを動かしていただければ出ないポジションが見つかるでしょう。
- 大きな画像を見ると四隅でやや描写が甘くなりますが、それも四隅以外の描写能力の高さと比べてのもの。しかも開放です。一般的な超広角レンズと比べても良好な部類となるのではないでしょうか。風景撮影などで気になる場合は、少し絞ると安定感がより増した描写となります。
(サムネイル画像のクリックで大きな画像をご覧いただけます)
ボケ味と立体感を存分に楽しめる、素直な描写の超広角レンズ。
いかがでしたでしょうか。一般的な超広角レンズは、否が応にも「特殊なレンズを使っている」ことをファインダー越しに意識させられるものです。しかし本レンズは、画角が広いということ以外に超広角レンズにありがちな癖がなく、すっきりとした素直な描写に感じました。立体感ある描写に加えボケも積極的に活かせますから、着けっぱなしにしていても不便さを感じることがなく、様々なシーンで撮影をお楽しみいただけます。そのスペックからしても玄人好みなキャラクターではありますが、癖のない素直な描写ゆえ、どなたでも扱いやすいレンズに仕上がっています。また今回のAF化により、MFであることから購入を躊躇していた方にとっても安心してご購入いただけるのではないでしょうか。
鏡胴はしっかりとした金属製で頑丈さがあり、幅広のピントリングも操作しやすいものになっています。またマット調のブラック塗装も質感が高くていいですね。絞りリングのない鏡胴は少々あっさりした外観に見えますが、トキナーらしい質実剛健さを感じる高品質な道具として仕上がっています。トキナーの自信作、機会があればぜひ手にしてみてください。
( 2018.05.11 )
AF化により少々お値段が上がりましたが、得られる恩恵はプライスレス!持ち歩くのがとても楽しいレンズですよ。
前玉を守ってくれる頼れる保護フィルター。ここは贅沢しちゃいましょう。