PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
SIGMA 28-45mm F1.8 DG DN | Art
[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ
広角28mmから標準に近しい45mmまでをカバーする大口径標準ズームレンズ「SIGMA 28-45mm F1.8 DG DN | Art」がシグマから登場しました。今回レビューをお届けするのはソニーEマウント用となります。本レンズは全域でF1.8が使えるフルサイズ向けズームとして画期的な存在。ズーム倍率は1.6倍と少々控えめな守備範囲ですが、開放1.8通しと画質を優先した結果でもあるのかなと推察されます。思い起こせばズームレンズ黎明期の広角ズームの焦点域も確かこの辺りだったような。いずれにせよ開放値によるボケを活かした表現が楽しめたり、高感度に頼らずともクリアな描写が得られるだろうという期待が大。しかもそれがArtラインの画質で堪能できるとなれば本レンズの守備範囲にも納得がいくというものです。近頃の動画ニーズに照らしても、広角ゾーンの低倍率ズームレンズの引き合いも多いことから注目の一本となることでしょう。直径87.8mm、全長153.4mmというサイズ感はさすがはArtレンズという堂々たる存在感ですが、重さは950gと心理的な目安ともなる1kgを切っています。そんなシグマの意欲作がどのような描写性能を見せてくれるのか気になるところ。では早速ご覧いただきましょう。
( Photography & Text : KIMURAX )
空をバックに主役を入れるには、ある程度の広いフレームで被写体に寄りたくなるものです。本レンズのワイド端は28mmとなっており、いわゆる広角域の真ん中たりの焦点距離ですから何かと重宝します。前日夜までの集中豪雨の名残で、ブロンズ像から1mほど離れると泥濘状態でしたので引くに引けず。28mmまでズームできてよかった、というシチュエーションでした。もし35mm単焦点レンズでは少々窮屈だったでしょう。絞り開放ですが逆光にもかなり耐性があるという印象です。
ズーム域中間の35mmでの撮影になります。単焦点レンズをやり込んできた方々にとっては馴染のある画角でしょうし、如何様にも調理できてしまう万能な画角。そういったことからも35mmを中心にズームできるというのが本レンズの価値であるようにも思います。解像力はもちろん色乗りもよく、実にリアリティのある再現です。
本レンズのテレ端は45mmとなっており、標準50mmとほぼ変わらぬフレームで切り取ることができます。セールストーク的には標準50mmまでカバーすると謳えた方が、印象的ではあるかもしれませんが、その5mmのために躯体の肥大化や価格に影響があるのであれば45mmというスペックに不満は感じません。それにしてもF1.8の被写界深度の浅さが効いていますね。キリッと立ち上がったピントピークの描写は素晴らしいの一言。
切れ味鋭い描写のレンズですが、前後のボケ味は柔らかいですね。2線ボケはどうかなとフレームしたのですが、あっさりと溶かされています。
絞り込んでも線は太くなるようなことはなく、ラインを繊細にトレースしています。このあたりはやはりシグマのArtレンズだなと。画が平坦になるようなこともなく、奥行きがきちんと感じられます。
カメラ側で歪曲補正をOFFにすると樽型傾向の歪曲収差が確認できますが、補正ONならご覧の様に整うのでまったく問題ありません。
F1.8のピント面はとにかく薄いのですが、AFは素早く正確に合焦してくれるので安心。絞り開放から解像力はキレッキレで、Tシャツの繊維まで実に忠実に描き切っています。光の影響を受けやすい反射する素材をフレームすると様々な色が出てきても不思議ではないのですが、拡大して見てもそんな気配はまったく感じさせません。
素材の硬さはもちろん、その手触りまでもが伝わってくるかのような描写です。
F1.8通しズームの胸すく写り。
フルサイズミラーレス向けのズームレンズで開放F1.8通し。話題性に富んだスペックを引っさげ、しかもシグマが優れた描写性能を約束する“Artライン”での登場でしたから、試写の前から期待値がかなり高くなっていたのは確かです。実際に使ってみると、解像力、ボケ味、AF、操作性など各方面がよく練られているなと感じ入った次第です。1.8通しズームなんだから細かい所には多少目をつぶって、、、という言い訳を許さない流石はArtレンズ。絞り開放からトップギアのキレのある像を結び、ボリューミーなボケを存分に楽しむことができます。絞り込んでいっても線が無粋に太ることもなく、コンスタントに胸のすくような写りで応えてくれました。これだけの性能を発揮しながら最短撮影距離は30cmという近接性能も侮れません。F1.8がもたらすボケ味を堪能してください、というシグマからのメッセージの様にも感じました。本レンズは35mmの単焦点レンズを愛用しているという人には、なかなか使い出のあるズーム域となるのではとも想像します。表現力に富んだよく写るレンズは、ついつい手が伸びてしまうもの。今日は気合を入れて撮りたいな、という時に頼れる一本はぜひ揃えておきたいですね。
( 2024.07.25 )
スチルにムービーにと使い出のある、F1.8通しの広角ズームレンズ。シグマ渾身のArtレンズを作品作りにお役立てください。
反射率0.1%。レンズ性能を妨げずに前玉をしっかり守ってくれる、頼もしさでお選びください。