PHOTO YODOBASHI
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TAMRON 17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXD Model B070
[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ
ソニーEマウント向けレンズで快進撃を続けるタムロンから、新たにAPS-Cフォーマット用の標準ズームレンズが登場しました。「TAMRON 17-70mm F/2.8 Di III-A VC RXD Model B070」という製品名からもわかるとおり、F2.8通しの標準ズームレンズになります。画角は35mmフルサイズ換算で25.5~105mm相当となる4.1倍のズーム比。フルサイズフォーマットと比べ同じF値でのボケ量が小さくなるAPS-Cフォーマットでも、F2.8の開放時でフルサイズのF4相当のボケ量が得られますから、本レンズを用いることでAPS-Cフォーマットでもフルサイズ向け24-105mm F4と同等の結果が得られるといえます。しかも実際のF値は1段明るいですから、より高速なシャッター速度を使えますし、ISO感度を1段低く抑えることにも使えます。しかも小型で軽量。常用はもちろんのこと、サブカメラにマウントするレンズとしても最適といえるのではないでしょうか。実際に手にしてみると、その軽快感ゆえ存分に振り回して楽しめます。では早速実写レビューをご覧ください。
( Photography & Text : Naz )
マウント面からレンズ先端まで119.3mmと全長の長さはあるものの、作例撮影で使いましたα6500のようなコンパクトなボディと組み合わせれば、軽快感はフルサイズのシステムでは得られないもの。ボディと合わせた重量は978g、α7 IIIにFE 24-105mm F4 G OSSを組み合わせた重量は1,313gだそうで、約3/4に抑えられているということになり、軽快感が全く異なるのも納得の重量差です。しかも、F2.8の開放値を持ちながらテレ端が105mm相当まで伸びていますから使い勝手は抜群です。なお、このスペックは世界初だそうです。
ビルの壁面で反射した光が車や路面を照らしていました。シャープなズームレンズとなれば、背景のボケに多少煩さがつきものですが、このレンズではそんな心配は杞憂でした。二線ボケになりやすいタイル舗装の目地も手前から奥へとなだらかにボケていますね。焦点距離は約46mm、フルサイズ換算70mm相当となればF4相当のボケ量でもこれだけ背景を溶かしてくれます。
輝度差の大きな条件ですが、ハイライトからシャドウまで画に破綻は見られません。シャープなレンズではコントラストが高く硬い描写になりがちな条件でも硬くなりすぎないのがタムロン。開放からこの描写だと絞る必要を感じませんね。
フラットな光の条件。F2.8の開放で人物より手前の階段にピントを置いてみました。誇張のないなだらかなボケにより、似たパターンが続く被写体でも物の前後が手に取るようにわかります。
フルサイズ換算75mm相当です。テレ端の105mm相当は遠くの物を引き寄せられるほどの倍率まではないものの、標準域を多用するスナップ撮影では、フレームを追い込む自由度はより高くなります。インナーフォーカスによるAFも静かで素速く正確でした。電子補正前提の設計となっていますが、補正後は歪曲が一切なく気持ちのよい直線を描いてくれます。
逆光では条件によってはゴーストが出ることもありましたが、画が破綻するような派手なものではありませんでした。こういった逆光で輝度差の大きな条件では、光源からのゴーストだけでなく、枝葉の周囲に色収差が出やすいものですが、ボディ側の電子補正をOnにしておけばご覧の通り、その兆候すら見られません。なお、ボディで倍率色収差補正をOffにしても色収差はほぼ見られず、レンズの基本設計で十分に抑制できていることが伺えます。
他のタムロンレンズと同様に、線の細い描写です。シャープですが、硬くならない絶妙な描写こそタムロンの真骨頂。葉の手触りや湿度などもリアルに感じさせる見事な再現描写です。
フェリー、防波堤、富士山に月と欲張ってみました。このサイズでは見えませんが、等倍にした画像では防波堤の人が持つ釣り竿までしっかり写っていました。
小さな漁港の週末。キラキラと水面に反射する陽射しが滲んで美しいですね。私はこの写りを見ただけで「このレンズは買いだ」と思ってしまいました。
ホワイトバランスで夕方の色調を強調してみました。砂浜手前のシャープな描写からなだらかにボケていく様が美しいですね。こういった砂浜もボケがザワつきやすい被写体ではありますが、嫌味なく抑えられていると思います。また背後の人物の周囲にも色収差は見られません。手前の隅を見ても、描写の甘さはほとんど気にならないレベルまでよく抑えられています。
スリムなレンズゆえ中心部から外れるに従い口径食がわりと大きく出るようです。また玉ねぎ状の年輪ボケは、条件によっては少々目立つかもしれません。
最短撮影距離はワイド端で0.19m、テレ端で0.39mとレンズ先端のフードが被写体に当たりそうなところまで迫れます。こちらはテレ端70mmの最短撮影距離にて撮影。もうビールジョッキの泡を写すレベルですが、マクロレンズではないためもう少し離れて絞った方が安定した画質が得られます。
ヒットメーカーが放つ自信作。
いかがでしょうか。タムロンのEマウントズームレンズはどれもスリムで軽量。現代レンズらしくクリアでシャープな写りはもちろんのこと、ズームレンズらしからぬ線の細い描写と柔らかさのある上品なボケ味で、どのレンズもヒット作となっています。そこへ登場しました本レンズも、他のレンズと同様にしっかりと「タムロンらしさ」が感じられ、欲張ったスペックでも写りでは妥協しないというタムロンの自信の程がうかがえます。今回は試せませんでしたが、高速で静音なステッピングモーターを採用することで動画撮影にもしっかりと対応し、自慢の手ブレ補正は、極めてナチュラルな動作により撮影者にその存在を意識させないレベルに達しています。レンズ本体にはフォーカスリングとズームリングのみというシンプルなレイアウトとなっていますが、ボディ側と連携したダイレクトマニュアルフォーカスや瞳AFなどにもしっかりと対応し、ボディ側の補正機能を活用した撮影結果は目を見張るものでした。お別れが寂しく思えてしまう、作例撮影がとても楽しいレンズでありました。
APS-C向けレンズだから実現できたであろう、F2.8通しの標準ズームレンズが10万円以下で手が届くという、本レンズのヒット間違いなしの自信作。どうぞご自身でも手にしてその実力と端正な写りに驚いていただけたらと思います。
( 2021.01.21 )
APS-Cフォーマットαシリーズにベストマッチングな標準ズームレンズ。フルサイズに遜色ない結果をもたらしてくれます。しかも軽快!
レンズ買ったポイントで十分まかなえますね。ちょっといいレンズにはちょっといいフィルターを奢ってあげましょう。