PHOTO YODOBASHI
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SONY RX1R III / SHOOTING REPORT vol.1 vol.2
カメラ業界では、単焦点レンズと大型センサーを組み合わせた、写りに拘った高級コンパクトカメラが近年、賑わいを見せています。その先駆けとなったのは2012年に登場したソニー「RX1」から始まったシリーズ。当時はフルサイズセンサー搭載のカメラは一眼レフとライカM系のみで、フルサイズセンサーにレンズフィックスカメラというだけでも相当にセンセーショナルな登場でした。その上、コンパクトな外観に似合わない、驚くほどの写りに写真愛好家たちの心を鷲掴みにしたのを鮮明に記憶しています。その後「RX1R」、「RX1R II」が登場してから随分経ち、誰もがシリーズ終了かと思っていました。しかし、約9年ぶりに「RX1R III」は驚きの復活を遂げたのです。
前モデルとの大きな違いは、センサーが61MPへ画素数を大幅にアップし、それに伴い画像処理エンジンも高速処理を可能にするBIONZ XRを採用したことです。処理速度の高速化に加えAFはAI処理に特化した「AIプロセッシングユニット」を新たに搭載したことで高精度の被写体認識を実現。さらに豊富な画素数を活かし、50mm、70mm相当の画角にワンタッチで切り替えが可能なステップクロップ撮影機能が搭載され、使い勝手も大きく進化しているようです。バッテリーは大型の「NP-FW50」にアップグレードし、高画素化などによる大きな電力消費に対応しています。これほどの進化をしながら、ボディの総重量は前モデルより軽量化を実現しているのは流石。ボディサイズは高さと奥行きのみ、前モデルよりわずかに大きくなっていますが、スペックを考えれば十分にコンパクトといえるでしょう。パワーアップしながらもサイズや重量を前モデル並に維持するためか、ファインダーはポップアップ式から固定式へ、背面液晶も固定式にそれぞれ変更となっています。このあたりの設計はソニーの並々ならぬ小型化への拘りを感じます。それでは早速、気になる写りをご覧ください。
( Photography & Text : Z II )

レトロな観覧車ですがまだまだ現役。速くなったAFにより、もたつくことなくよいタイミングで撮れました。撮って出しのJPEGですが、露出をハイキーに振っても不自然なトーンジャンプはなく、粘り強さは流石です。

街撮りの何気ないシーン。背景のボケからほどよく浮き立ち、ハイライトに照らされた髪や男性の白いTシャツの皺まで質感豊かに描いてくれました。もしこれが28mmなら背景がこれほどボケないですし、50mmでは少々狭く感じたり緊張感が出てしまうこともあります。35mmは周辺の雰囲気も写り込ませながらボケも活かせる画角なのだと思います。

人の眼では追いつかないほどの解像感ですね。歴代のRX1R系は、その時、最高レベルの画素数を持ったソニー製センサーを採用してきました。本機も同様に61MPのセンサーを採用し緻密な描写はこれまで以上の印象です。新たに電子シャッターが搭載され、静止画では1/8000秒が可能になりました。メカシャッターの絞り開放時は1/2000秒が上限なので、シーンによっては強い味方になりそうです。
ZEISSレンズらしい濃厚な色乗り、そしてキレも見事。その上、ざわつかない滑らかなボケがいいですね。

目の覚めるようなコッテリな発色と立体感、艶感など、どれをとっても申し分ない写りです。

前ボケも後ろボケ同様にクセがなく、物体の形状がわかる程度に自然です。

空の表情から建物や岩壁まで明暗差がありますが、ダイナミックレンジの広さが効いています。確かに水面すれすれで撮るなら、チルト液晶が便利だったかもしれません。しかし、チルト液晶を搭載すると厚みも重量も増すでしょう。バッテリーを大型化しながらボディサイズを据え置き、500gを切り先代を凌ぐ重量とするために、固定式の液晶を採用したのかもしれません。今回じっくりと試写する中で、その選択は素晴らしい英断だなと感じ入りました。

何気ない写真ですが経験的にこういうカットは、いいレンズにいいセンサーがないとなかなか成立しないように思います。画の中にある微妙な変化を精密に描き分けられるからこそなのでしょう。


ソニーの哲学が込められた工芸品というべきカメラ
歴代の「RX1」がそうであったように28mmでもなく50mmでもない「35mm F2 ZEISSゾナーT*レンズ」を変えなかったこと、便利な機能をあえて盛り込まなかったことは「RX1R III」の肝だと感じました。つまり、このレンズ特有の色気ある写りを残しつつ、コンパクトさ、描写力を追求し、必要な部分のみアップデートしたカメラです。歴代モデルのユーザーは「これだよね!」と思われる方も多いと思われます。ソニーの最高画素数センサーを惜しみなく投入し、使いやすさと高性能を両立させ、小型化に拘るのは、カメラに限らず多くのソニー製品に通じる哲学を感じます。このようなカメラを作れるのは、もはやソニーだけのような気がします。小型化への拘りに加えレンズからセンサー、映像エンジンのような基幹部品を全て自前で用意できるからこそ実現できたのかもしれません。 勝手な想像ですが「α1 II」のような万能機とは対照的に「RX1R III」もまた、小型軽量を得意とするソニーが目指したもうひとつのフラッグシップカメラかもしれません。あなたの旅の相棒として、この先多く出会う素晴らしいシーンを残してください。
35mmの画角は人の視野に近いため、スナップや風景撮影に使いやすく、標準レンズとして愛用する方も多くいらっしゃいます。
ほぼ同じ位置からステップクロップ撮影機能を使用して70mm相当の画角へ変更しました。クロップするとおよそ1500万画素相当ですが、ご覧のとおり十分な画質を得られます。
最短撮影距離はマクロモードに切り替えることでレンズ先端から約14センチまで寄れます。柔らかな被写体も瑞々しく捉えることができました。
軍艦部はフラットになり、すっきりとしたことでサイズが増したことを感じさせません。
アイカップは着脱が可能なので、ファインダーを隅々まで確認したい方は常時装着しておくのがいいでしょう。
ステップクロップ撮影は液晶からワンタッチでチェンジできます。初期設定ではシャッターボタン周辺のC1ボタンに割り当てられており、簡単に切り替えることが可能です。
オプションのレンズフード「LHP-1 J2」とボディケース「 LCS-RXL」を装着すればより精悍な印象に。装着したままバッテリー交換や給電も可能です。
( 2025.08.11 )
現時点で最も小さなフルサイズコンパクトカメラ。それだけでも一見の価値があります。
アップグレードしたバッテリーですが、予備があると旅先でも安心してシャッターを切れます。
精悍になったボディをより格好よく見せる金属製の専用フードです。レンズ保護のためにもおすすめです。
手に馴染みやすい形状の専用のボディケース。装着したままSDカードの交換や三脚の装着が可能です。
片手でホールドするシーンが多くなるカメラですから、サムグリップを装着することでホールド感が安定します。
長く愛用するためにも液晶を傷や汚れ、衝撃から守ってくれるガラスシートを貼っておきましょう。
