PHOTO YODOBASHI
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SONY α7 V / SHOOTING REPORT
バランスの良さで汎用性に優れる、みんなの「無印α7」。4年ぶりに待望の進化を遂げました。初代7の衝撃は今でも心に残っていますが、もう5代目の「V」になるのですね。先代からの主な進化点を列挙してみました。かなりのアップグレードです。
- 約3,300万画素の部分積層型センサー「Exmor RS」(α初)
- 「BIONZ XR2」画像処理エンジン(α初)
- 最大16段のダイナミックレンジ(α初)
- AIプロセッシングユニット搭載で被写体認識
- ブラックアウトフリーで30fps連写
- プリ連写機能
- AI学習によるオートホワイトバランスの精度向上
- 4軸マルチアングル液晶モニター
- 4K/60pでクロップなし(4K/120pはクロップ)
- 中央7.5段、周辺6.5段の手ぶれ補正
センサーと画像処理エンジンが新開発、AFに被写体認識が加わり、連写も快適になり、4K/60pでもレンズ本来の画角が使え、モニターや手ぶれ補正といった撮影サポート機能も強化されています。「ベーシック」とはいえ、かなり強力なカメラです。今導入できるものは出来る限り載っけたような内容で、上位機と肩を並べる、あるいは凌駕している点さえあります。ただ私個人が最も衝撃を受けたのは、他のどのαにも真似できない「16段」のダイナミックレンジ。Exmor RSとBIONZ XR2の最強コラボに、やられちゃったのです。ダイナミックレンジが1段上がると明るさは倍になりますが、15段との違いは数字以上です。特にスチル主体の方、これだけで買う価値があります。先代のIVから値上がりしてはいますが、この中身ならライバル機と比較しても決して割高ではありません。このカットもよく木の幹の様子がかろうじて見える露出で撮っているのですが、空の青みが、光の拡散具合が、いつもと違います。
( Photography & Text : TAK )
写真のワークフローを根本から変える、DR16段。
こちらのカットは日没前に撮影しています。当然撮って出しです。今までの感覚だと、いわゆるHDR的な後処理を施す前提で、露出をどちらかに振って撮影するでしょう。ところが、現地でファインダーを覗いて分かりました。このカメラは、後処理を必要としない露出が撮影時に選べるのです。その場で写りを確認できるのがデジタル最大の長所ですが、編集不要の完成品レベルとして現場で仕上げられる本機は、デジタル最大の長所を最大級に体現したカメラと言えます。たとえ最適な露出で撮れなかった場合でも、編集で挽回できる幅が違います。無論人間の視神経には及ばないものの、必要な階調がワンショットに収まってしまうというのは、ゲームチェンジングです。写真クリックで原寸も是非ご覧ください。

もはや中判の水準ではとも思うのですが、これだけ分厚いダイナミックレンジがあると、もうのめり込むようにハイキーで撮ってしまいます。デジタルはシャドウには強いがハイライトは、、、という固定観念が吹き飛ばされ、嬉しくてたまらないわけですよ。左後方のハイライトの美しさ、緑の壁のハイエスト周辺のふわっとした雰囲気からは、光そのものの存在すら感じられます。白の中の白、その間のステップの細かさ。もちろんある程度からは飛ぶのですが、そこまでの連なりもスムーズです。この雰囲気が出せるなら、ブライダルやポートレート撮影でも大活躍してくれるのではないでしょうか。ちなみに、手ぶれ補正も超強力です。こちらの現場も十分に明るかったのですが、ハイキーにするためにシャッター速度をかなり落としました。このカメラならではの白は、手ぶれ補正力のおかげでもあるのです。

中々の輝度差ですが、カップやテーブルのディテールが伺える露出にしても(これとて相当なシャドウ情報)、床やカップのハイライトに階調が生き残っています。今までの感覚では、特に湯気を写したい場合は床のハイライト自体を避ける構図を選んでいたと思うのです。それがハイライトを入れたままでも湯気がそれとわかる露出で写ることが分かり、躊躇なく湯気にフォーカスできました。まさに離れ業。この比類なきDR16段が、本機のポジションを確固たるものにしています。

冴えわたる頭脳、スピード。
祝、AIプロセッシングユニット、無印にも搭載!被写体認識AFの対象は、人物、動物、鳥、昆虫、車、列車、飛行機。そしてこれに、「オート」が加わりました。上位機である「α1 II」や「α9 III」も既に対応していますが、ベーシック機にも搭載されたのは後発の強みでもありますね。同ユニットを初搭載したα7R Vをレビューした時、そのうち認識対象さえ自動で判断してくれるようになるだろう、みたいなことを書いたのですが、割とすぐにそうなりましたね。このカットでは「鳥」を選んでいますが、短い時間で試した限りでは、オートの状態でフレーム内に複数のジャンルが混在する場合は、人を優先する傾向が認められました。もちろん対象のサイズにもよりますが、どうやら人優先のようです(IVとの比較もしています。被写体認識非搭載のIVは人の顔にピントが行きました。Vは人の瞳に一直線でした)。ちなみに室内でフィギュアを2体並べての実験も実施しています。1体を寝かせた状態で、もう1体を立った状態で置いたところ、立っている方を認識しました。ポピュレーションが納得するような、より典型的な人としての姿を捉えるようなセッティングがされているのでしょうか。とはいえ、何をもって「典型」とするのか。開発陣にも相当な苦労があったことと思います。AIさんも毎日24時間勤務で、相当ディープにラーニングしたのでしょうね。お疲れ様です。

電子シャッター時、秒間30コマまでの高速連写が可能です。ダイナミックレンジこそ最大15ステップになりますが、ブラックアウトフリーなので、素通しファインダーのごとく、撮像を常に見ながら連写できます。このあたりも、完全にクラス超えですよね。ローリングシャッター歪みは、「α7 IVの約4.5倍」を謳うセンサー読み出し速度とあって、裏面照射型より遥かに軽微です。これならスポーツ撮影も十分こなしてくれるでしょう。もちろん(完全)積層型を採用したα1 IIや、グローバルシャッター搭載のα9 IIIには及ばないものの、それらに次ぐレベルの好成績ですから。この現場ではこれ以上引けなかったのですが、別の現場でもっと遠くから通過する電車を撮った時は全く歪んでいませんでした。連写速度を随時ブーストできる機能も備わっていて、割り当てたカスタムボタンを押すだけで、ドライブモードに関わりなく、押している間だけ最大秒間30コマまでブーストさせることができます。こちらのシーンでは元々はスナップ用に「1枚撮影」モードに設定していました。そしていざ列車が来たところでブーストを作動!便利です。毎秒60回の高速AF/AE演算も効いています。右側から突然高速度で現れた列車。連写開始後の数枚は微妙に後ピンでしたが、以降のカットではジャスピンに修正されていました。データ処理もとにかく速い!CFexpress Type Aカードにて記録したのですが、書き込みも超高速ですぐ次の撮影に移行することができました。ともかく、これらは新型センサーと処理エンジンがなせる技です。読み出し速度においては更に上の世界がありますが、コストもスピードも両立できる部分積層型をスタンダード機に採用したことは、理にかなっています。

オートホワイトバランスの精度、確かに上がっています。特にデーライト時にそう感じることが多く、昼間はオート固定で全く問題を感じませんでした。ただ、夜間のミックス光下では部分的に色転びのような現象も見受けられました。このカットにおいては、右上ビルのタイル部分が肉眼で見た時とは違って紫ががって見えます。アングルを少し変えて空も入れてみましたが、これも青というより紫寄りでした。ただミックス光による影響が大きくなるほど難易度も高くなるので、これを以て「欠点」と評するのは残酷でしょう。今後のAIの進化次第で、解決も時間の問題なのかなとも思います。いずれにしても、現時点で最も頼れるAWBのひとつであることは間違いありません。

もはや常用レベルの、ISO 12800。この状況で絞り込む余裕があるのです。

このカメラにしか写せない、光と闇。個人的に最も色気を感じる部分です。

αにはいろんなおばけがいるよ。スピードおばけ、ゆがまないおばけ、かいぞうりょくおばけなど。α7 Vはなにおばけかな?

今度の進化は、魂を揺さぶる。
写真でまず大切なことは、露出、ピント、タイミングです。その全てにおいて、α7 Vは素晴らしい仕事をしてくれます。懐の深い16ストップのダイナミックレンジ、素早く正確で賢いAF、それに追随する高速連写機能。基本がしっかり固められているので、構図などに意識を集めることができます。とにかく、頭脳的な部分も身体的な部分も高次元に鍛えられていて、様々なシーンにおいて技術的な限界を感じることなく、躊躇なく撮影を始められるカメラ。それがα7 Vというカメラなのだと思います。これより上はα1 IIやα9 IIIあたりになりますが、そこはまた予算から何からがらりと変わってきます。そこまでの性能は要らないけど、とにかく確実に綺麗な写真や動画が撮れる一台、お仕事にもしっかり使えるバランスの良い一台をお求めなら、α7 Vをおすすめします。
最後にあえて繰り返します。ダイナミックレンジ。特に白。本当に美しい!白白言い過ぎて洗剤の宣伝のようで申し訳ないのですが、前頭葉をすっ飛ばして魂に働きかけてくるのです。写真をやる人間にとって、階調は何よりのご褒美ですから。表現の幅が一気に拡大するので、撮影前のコンセプトやイメージ作り、さらには撮影計画にもさらなる自由をもたらしてくれるでしょう。趣味の道具としても相当に魅力的で、ソニーレンズはもちろん、ツァイスや他のサードパーティを通った光も見てみたい。もちろん、オールド遊びの母艦としても、、、ぐふ、ぐふふ。
液晶モニターが4軸マルチアングルになり、ドット数も210万に倍増しました。もうひとつ嬉しいのは、光軸からずれないチルト状態に、ワンタッチでセットできること。バリアングルも便利ですが、チルトまでの操作は増えます。
もちろん、そこからさらに展開させて、バリアングルとして使うことも可能です。「実はチルトが好きなんだよね」という方も、「やっぱりバリアングルでしょ」という方も、みんなが幸せになれるモニター。無印にも付いて、良かった!
先代のIVと並べると、一見したところ違いがわかりません。培ってきた操作感覚のまま、移行できます。また、IV用の縦位置グリップが使えます。
モニターが変更された分だけ後方への厚みが若干増し、重さも27gだけ増加しています。サイズも3型から3.2型に大型化しています。軍艦部左のモデル名の枠は無くなりました。
HDMIタイプA端子、(マイク)端子、(ヘッドホン)端子、USB Type-C端子(USB PORT 1)、USB Type-C端子(USB PORT 2)を搭載。Type-C端子が2基あるのがポイントで、Port 1はUSB 3.2に対応し高速なデータ通信も可能です。充電給電とデータ転送が同時に行えるのは便利です。
2基のカードスロットを搭載。SLOT 1はCFexpress Type AおよびSDXC/SDHC UHS-II/UHS-Iメモリーカードに対応します。
上がV、下がIVです。実はグリップの中指がかかる部分、その形状(えぐれ具合?)が若干変更されています。写真ではちょっとわかりにくいかもしれませんが、握った感じは割と違っていて、重いレンズを付けても握りやすくなりました。
こちらも上がVです。よく見ると親指がかかる部分の貼り皮の形状や面積も違いますね。手の大きさや形など個人差はありますが、個人的には、この変更もグリップ感の向上に寄与していると思います。
( 2025.12.22 )
その名に似合わず、とんがった所も持ち合わせた、化け物ベーシック。何とクリック一つで、飼い慣らすことができます。
もうお持ちの方も、そうでない方も。本当に色んなαに使えますからね。
「どうせ予備電池を買うなら、チャージャーもあったほうがいいな」という方、セットでいかがですか。
「電池2本になるんだったら、同時に充電できた方がクールだよね」という方へ。USB PD対応電源およびUSBケーブルをお持ちでなければ、別途お買い求めください。
そうなんです。IVの縦位置グリップがそのまま使えちゃうのです。
今回使用した「大三元」標準ズームレンズ。カメラの性能を最大限に引き出してくれます。
速度と安定性が光るCFexpress 4規格。連写も動画も安心です。
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