PHOTO YODOBASHI
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SONY α7 IV / SHOOTING REPORT
2021年12月17日、ソニーから「α7 IV」が発売になりました。α7、いわゆる「無印」もいよいよ四代目。早速シューティングレポートをお届けします。その前にまずお断りしておきますが、今回はその第一弾、「スチル編」です。2021年の新製品ですから、このα7 IVがスチルにもムービーにも力が入ったカメラなのは当然なのですが、実際に触れてみて分かったのは、それぞれの進化の度合いが半端ないこと。これはそれぞれをきっちり、別建てでレポートせねばなるまい。そう思わせてくれたカメラだったわけです。というわけで第二弾の「ムービー編」はもうちょっとお待ちください。ではスチル編、行ってみましょう。
( Photography & Text : NB )
LOOK & FEEL
まずアウトラインから見てみましょう。違いが分かりやすいように先代のα7 IIIと並べてみました。いずれも左側が「IV」で、右側が「III」です。IVでは正面のバッジは「α7」とあるだけで「IV」はありません(ボディの上部にあります)。
前後からのカットではあまり違いはないように思われるかもしれませんが、IVでは背面液晶がバリアングル式になっており、より幅広い撮影シーンに対応できるようになりました。さらに上から見るともっと大きな違いに気づかれるでしょう。そう、IVはボディがちょっと厚くなっているのです。おそらく動画撮影時の放熱の問題をクリアするためだと思われます。
横から見ると、ボディが厚くなっているだけではなく、グリップ部分も大型になり、より前方に張り出しているのが分かります。これ、実際に両者を持ち比べてみると分かるのですが、IIIよりもはるかに持ちやすい。私は男性としてはかなり手が小さいのですが、それでもIIIは手の中で少し遊んでしまう感じがあったのに対し、IVではぴったりフィット。「掴む」という動作が自然にできる大きさ、カタチになっています。これなら女性でも大きいということはないでしょう。
ボディ背面と右手側のスロットです。スロットはデュアルで、片方のスロットはCFexpressとSDの両方が使えるようになっています。ボディ上面に目を転じると、RECボタンの位置が変更されているのが分かりますね。その他、モードダイヤルが二重構造になっていたり、露出補正ダイヤルから目盛りが消えていることに気づきます。この露出補正ダイヤルにはロック(真ん中の小さなボタン)がつきました。これで勝手に動いてしまうこともなくなります。
こちらは左手側。無駄のないインターフェースの配置は従来通り。
OVERVIEW
スペックを比較してみましょう。まずはセンサーの画素数が2420万画素から3300万画素へと、大幅にアップしています。画像処理エンジンも「BIONZ XR」へとアップデート。ついでにファインダーも大幅な画素数アップが嬉しいですね。また従来の「クリエイティブスタイル」に代わって「クリエイティブルック」が搭載されています。これはα7S IIIに搭載されていたものですが、もちろん動画撮影時にもこのクリエイティブルックが使えます。また、これは第二弾で詳しくレポートしますが、4:2:2 10bitでの動画撮影ができるようになりました。
α7 IV | α7 III | |
---|---|---|
イメージセンサー |
35mmフルサイズ (35.9 × 23.9mm) Exmor R CMOS センサー |
35mmフルサイズ (35.6 × 23.8mm) Exmor R CMOS センサー |
有効画素数 | 3300万画素 | 2420万画素 |
画像処理エンジン | BIONZ XR | BIONZ X |
画像ファイル形式 | JPEG、HEIF、RAW | JPEG、RAW |
クリエイティブルック | ST, PT, NT, VV, VV2, FL, IN, SH, BW, SE, カスタムルック1-6 | - |
クリエイティブスタイル | - | スタンダード、ビビッド、ニュートラル、クリア、ディープ、ライト、ポートレート、風景、夕景、夜景、紅葉、白黒、セピア、スタイルボックス1-6 |
レンズ補正 | 周辺光量、倍率色収差、歪曲収差、ブリージング (動画) | 周辺光量、倍率色収差、歪曲収差 |
動画撮影モード | 4K 60p (4:2:2 10bit) | 4K 30p |
AF 測距点数 | 759点 | 693点 |
AF 検出輝度範囲 | EV-4 -20 (ISO100相当、F2.0レンズ使用) |
EV-3 -20 (ISO100相当、F2.0レンズ使用) |
瞳AF | 人物 / 動物 / 鳥 | 人物 / 動物 |
手ブレ補正 | 5軸、5.5段 | 5軸、5段 |
連写 | 10コマ/秒 | 10コマ/秒 |
記録媒体・スロット |
デュアルスロット SD (UHS-I/II対応)カード、CFexpress Type A |
デュアルスロット SD (UHS-I/II対応)カード、メモリースティック PRO デュオ/マイクロ |
ファインダー |
1.3cm(0.5型) EVF 368万ドット 明るさ、色温度調整機能 |
1.3cm(0.5型) EVF 235万ドット |
液晶モニター |
バリアングル式 7.5 cm (3.0型) TFT 103万ドット オープン角:約176°、チルト角:約270° |
チルト式 7.5 cm (3.0型) TFT 92万ドット カメラ背面に対して上約107°、下約41° |
サイズ | W131.3 × H96.4 × D79.8 mm | W126.9 × H95.6 × D73.7 mm |
本体重量 | 573g | 565g |
PHOTO GALLERY
植物の綿毛の、一本一本の解像。微妙な色再現。背景の自然なグラデーション。3300万画素の前では、このぐらい朝飯前でしょう。
撮影をしながら感じたのですが、このα7 IV、露出決定と色再現に関して飛躍的な進歩を遂げていますね。難しく考えずにシャッターを切れば、眼で見て感じた自然な印象のままに被写体を描いてくれます。
順光の高周波の画ですが、この通り。
白、黒、赤。それぞれをきちんと発色させることによって、凛とした空気を再現する。何もしなくてもこの露出決定がされるところに、このカメラの底力を感じます。
色、質感、シャドウの妖しさ。「肉眼と同じ」はカメラのゴールではありません。肉眼で見た時には感じなかったことを、写真でどう感じさせてくれるのか。いいカメラだと思います。
青から赤へのグラデーションが見事です。このホリゾントの前を、誰か歩いてくれないかなあと願ったのは事実ですが、ハットにステッキという紳士の登場までは望んでいませんでした。
今回の撮影はすべてISOオートで撮影しましたが、後から確認して、ISOの最高値をマークしたカットがこれ。ISO 8000です。これでハッセンですよ?
もちろんホワイトバランスの調整はしていますが、極めて正確な色再現です。
歩く人が流れるようにあえてシャッタースピードを1/10秒に設定しましたが、強力な手ブレ補正のおかげで、普通に撮っただけで人物以外はピシッと止まります。計算上1/500秒ぐらいに相当するわけですから当然ですね。
空は夕方の空なりの微妙な明るさを維持し、建物の陰はシャドウに埋もれつつもしっかりとディテールを残している。3300万画素の、ダイナミックレンジの広さを感じます。
微妙な明るさの照明でしたが、それを不自然に引っ張り上げることなく、微妙なまま写し撮ってくれました。こういう場合、露出補正で無理に下げたところで全体的に薄暗い、キレのない画が出来上がるだけだったりします。こんなところにもα7 IVの露出決定のインテリジェンスを感じるのです。
これがソニー流の「ベーシック」
α7が登場したのが2013年。この時、α7Rという上位機種も同時に発売されました。つまりα7は生まれた時から「ベーシックモデル」、言い換えれば「末っ子」だったわけです。しかし画素数で兄貴分のRに負けていても、カメラとしての素性の良さからRとは違う人気を博し、「廉価モデル」「格下」のような扱いはされてこなかったように思います。
そんな末っ子もすでに四代目となりました。四代目の特徴としてはセンサーの画素数が2420万画素から3300万画素にアップしたことがまず挙げられますが、これで「C」という、「いつの間にか現れた兄弟」との差異化がようやく果たされ、無印、R、S、Cという4兄弟の、それぞれの画素数による棲み分けが明確になったというわけです。と同時に、この四代目はムービー撮影機としての性能もかなりアップしています。スチルとムービーのどちらかに軸足、ではなく、どちらにも行ける。それがこのIVです。つまり「どちらにも行きたい」というユーザーが冷静に選ぶカメラがこれなのでしょう。
兄弟それぞれに特徴があるとは言え、やはり無印はベーシックモデルであることに変わりはありません。しかしべーシックがしっかりしているからこそ、RやSという兄貴分たちが活きるわけです。偉大な末っ子。それにしても、ソニーが考えるベーシックがこれなのだとしたら、これからのαシリーズはとんでもないことになるぞと、密かに胸躍らせているのは私だけではありますまい。
( 2021.12.20 )
ベーシックな位置付けである筈のモデルなのに、この性能。ソニーが考えるベーシックとは、もはやこのレベルのことなのでしょう。我々を一段上に引き上げてくれるカメラです。
今回の撮影はすべてこのレンズを使いました。軽くて、小さくて、使いやすい焦点域で、写りも最高。つまり言うことなし。