PHOTO YODOBASHI
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SIGMA 35mm F2 DG DN | Contemporary
SIGMAから「 I 」シリーズ第一弾として、3本のレンズが Contemporaryラインに新たに加わりました。35mm F2 DG DN | Contemporary は、そのラインアップの中では常用レンズとして使いやすい「画角」と「開放F値」を有していることから、スタンダードレンズとして位置付けされているようです。「 I 」シリーズは、先立って発売された 45mm F2.8 DG DN | Contemporary の流れを汲むミラーレスカメラの小型・軽量といったメリットをスポイルしないコンパクトなフルサイズミラーレス用レンズで、高い光学性能と確かな品質としての“ビルドクオリティ”を融合させたシリーズとして注目されています。45mm F2.8 DG DN | Contemporary は、あえて球面収差を残したことにより、絞り値によって描写の違いを楽しめるレンズとして好評を得ていますが、それよりも広めの画角にあたる本レンズは、開放値はF2と明るくなり、星景撮影も望める高い光学性能がコンパクトな鏡胴にぎゅっと詰め込まれた一本。肝心の描写は、その流れを汲むものなのか、また新たな一面を見せてくれるのか。昨今のシグマレンズは、どれもこれも文句のつけようのない写りで魅せてくれるので、その辺りとても気になるところです。まずは作例をご覧ください。
( Photography : KIMURAX / Text : TA )
色とりどりに染められた糸の重なり。絞り開放から、その柔らかな質感まで丁寧に再現されているのがわかります。艶めく優美なカラーグラデーション。その繊細さまでもがきちんと伝わってくるようです。
鏡胴にはAF/MF切り替えスイッチが備えられています。数台先に通り過ぎていた車両にAFでピントを置いてからMFに切り替え、置きピンでお目当てのクルマが通るのを狙ったカットです。被写体までは10mあるかないかですが、陽が差し込むドライバーの手元までしっかりと捉えているのがわかります。艶やかなボディはデジタルでの再現が難しいとされる赤ですが、色再現性もなかなかなもの。またレンズの自然な色乗りにも好感が持てます。
絞り開放からピント面の解像感は見事なもので、スチールの質感や薄汚れ具合をも忠実にトレースしています。前ボケは被写体までの距離やピントの置き所によって若干固めに感じるシーンがあるかもしれませんが、アウトフォーカスに向かってなだらかに輪郭を失っていく後ボケはとても美しいですね。
ふわっふわの羽毛が心地よさそうな烏骨鶏ちゃん。放し飼いされているので随分と人にも慣れている様子で、寄っても寄っても逃げる気配なし。最短撮影距離の27cmまで行けちゃうんじゃないの?と思ってしまうほどの落ち着きぶりでした。ぐっと寄り切ってルーズソックスのように脚を覆っている脚毛がぎりぎり入るところでフレーム。良いとはいえない条件下での撮影でしたが、目元の確かなシャープネスと、もふもふの柔らかな毛質がしっかりと描きわけられておりポテンシャルを感じました。もっとざわついても良さそうな後ボケも、良くまとまっているなあという描写です。
ガラスに対して鋭角に見下ろして撮影したこともあり、映り込みと相まってベー ルがかかったような写りです。拡大して見るとフォーカス面は落ち葉の形までしっかり描き込まれているのがわかります。ハイライト側に露出を切り詰めていくとどこまでも粘る印象で、中間からハイライトエリアのトーン描写にも厚みが感じられます。しっかりとしたコントラストとトーンの豊さがあるからこそ、いろいろと遊んでみたくなりますね。
色と化す前ボケの表情が良いですね。全体を通して気になるような色づきもほとんど見られず、風景撮影においても万能さを発揮してくれそうです。
長さ10mほどのトンネルの中を歩いていて思いがけず出会った光景。咄嗟にシャッターを落としました。「あっ」と思った瞬間を逃さない。それって「写真を撮る」「記録として残しておく」ことにおいてとても大事な要素ではないでしょうか。また、そんなカジュアルな撮影でも極上の写りは常に確約されています。
F16での撮影です。本レンズはこのあたりまで絞り込んでも描写が変わらない印象です。大胆に太陽にむけてフレーミングしていますがうっすらとゴーストが見える程度。むしろ、このざわっとした気配、なかなか出せるものではありません。もちろんそう見えるように工夫して撮ってはいるのですが、たいしたものです。
バックの玉ボケからもトーンの厚みを感じる一枚。丸みを帯びたとろんとしたボケがまた良い表情をしていますね。
明るさを備えたコンパクトな35mmレンズは、一本だけでシーンやシチュエーション問わず完結してしまう万能さがあります。一日中着けっぱなしでサクサクとスナップできるのも確かな描写力があってこそ。開放からコマ収差も程よく抑えられており、夜間の撮影でもキリっとした像を結んでくれます。頼り甲斐のある一本ですよ。
持ち歩きたくなるスタンダードレンズの大本命
fpボディにマウントさせたシステムとしてのこのルックス。この佇まいだけでお酒が進みそう。というのはさておき、本レンズのコンパクトネスと35mmという焦点距離はスナップ撮影がとにかく捗るものですが、そこへきて開放値はF2。美味いところに落とし込んできたなと感じました。精緻な金属製鏡胴の剛性感、寒い時と温まった時にフィーリングの違いを感じない操作性に信頼感があり、絞り環のクリック、フォーカスリングのトルクも軽すぎず重すぎずといった具合。AFもストレスなくサクサクと決まり、カジュアルに撮影しても一級の写りが常に確約される。撮影中その心地良さといったら他に類をみないとは担当したカメラマンの弁。
35mmという焦点距離は、50mm付近の画角に比べると視覚的な面白さをより楽しむことができる画角かもしれません。また被写体から距離を取れば「気配」をも写し込んでくれる。自分の標準レンズは35mmというユーザーも多くファンが多いのですが、やはり写真をやるなら押さえておきたい焦点距離でしょう。コンパクトで手にしっとりと馴染む鏡胴に、最新の光学性能がギュッと詰め込まれた35mmのレンズ。おまけに積極的に持ち歩きたくなるルックスに、確かなビルドクオリティとくれば、もう購入しない理由は見当たりません。常に持ち歩ける頼もしい相棒となってくれることは容易に想像できますから。ご覧いただいた通りカジュアルな撮影はもちろんのこと、作品撮りにおいても活躍してくれる一本です。
- 外装と内部の構造体に金属素材を採用。切削アルミニウムによる美しいパーツが、しっかりと手に馴染みます。また絞りリングを採用しておりダイレクトな操作が可能。デクリック機構は備えていませんが、「A」のポジションでボディ側での絞り操作が可能です。また、シーンに応じてスイッチ操作ひとつでAF/MFの切り替えができるスイッチも搭載しています。
- 従来型のフロントキャップに加えてマグネット式メタルキャップが付属します。裏面中央には刻印が施され、周辺のマグネット部には生地が施されています。撮影スタイルによってこの様な選択肢が用意されているのは、小さなことのようでいてぐっと気持ちを掴まれてしまいますよね。
( 2020.12.18 )
写りは極上。ルックス良し。サイズ良し。ミラーレス時代におけるスタンダードレンズの大本命レンズがこのお値段で手に入ります。
フードを外してという持ち歩くことも少なくないはず。ならばフィルターでレンズを保護しましょう。完全無色で色再現性に影響がありません。