PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
SIGMA 30mm F1.4 DC DN | Contemporary vol.1 vol.2
いつも持ち歩いて気になったものをパシャと気軽に撮る。そんな撮影スタイルには、軽くてコンパクトでAFがスムーズなレンズがマストアイテム。少し贅沢を言えば、大口径でボケ味が良好でグッと寄れると言うことなしですね。お財布に優しければ、さらに良し・・・ですが。そんな我儘に答えてくれそうなのが「SIGMA 30mm F1.4 DC DN | Contemporary」。重さ280g、長さ71.3mm。ステッピングモータ駆動のAF、開放値F1.4、最短撮影距離30cm。描写はシグマArtラインに匹敵するとのこと。気になるお値段は、大口径単焦点とは思えないホッとする価格ではありませんか。本レンズは多くのマウントに対応しており、その写りは既にPYでもレビュー済み。Lマウントは当然の如くですが、今回はボディをfp(2460万画素)からfpL(6100万画素)に変え高画素機でのセカンドレビューとなります。緻密な描写でレンズの特徴がわかりやすくなるのではと思います。焦点距離は35mm判換算で45mm相当と日常的に使いやすい画角。好きな街をゆっくりと撮影してきました。
( Photography & Text : A.Inden )
開放では若干収差が残りオールドレンズのようなフワッとした柔らかい写り。開放からキリッとシャープなレンズが多い中この写りは貴重ですね。高画素のカメラを使うことで、階調が豊富になりレンズの味がわかりやすくなったように感じます。
葉の立体感、水の透明感の描写が素晴らしいです。開放では若干収差が残り柔らかな描写でしたが、1/3絞っただけでクリアでヌケがよくなります。まるで違うレンズで撮ったのかと感じるほどガラッと変わった描写に驚かされました。
フレアを活かしたく逆光での開放撮影。オールドレンズのような描写がいい塩梅に作用して、軽くソフトフォーカスをかけたような画に仕上りました。画面全体はコントラストが低くフラットに見えますが、髪の毛や木々の枝などの細部を見ると十分な立体感を持って繊細に表現されています。
45mm相当の画角は使い方によって広角のようにも望遠のようにも見せることができる焦点距離。広角らしさは見下ろしたり煽ったりでパースを強調すると感じやすくなりますが、被写体に寄って被写界深度を深くすることでも広角らしい画にすることができます。
猫を探して江ノ島の路地へ。カメラを構えながら近づいても逃げることなくアンニュイな雰囲気で佇んでいました。水平垂直に構えパース感をなくし、開放で背景のボケを大きくすると、望遠効果が強調されます。
気軽に撮影していると、変わったものに目がいきやすくなるようで、撮影データを確認すると「こりゃなんだ」と思われるものがわんさかと。これはそのうちの1点。白い掲示板の押しピン。色といい影といい絶妙なバランスが、心に刺さりました。
コンパクトさからは想像できない、ポテンシャルを秘めた一本。
少し長い試写期間があったので、いつもカバンに入れて持ち歩き、気軽に好きな街を散策。身軽な撮影スタイルは、撮るという目線でなく、いつもの目線で街のシーンを見ることができ、普段とは違う被写体を撮影していました。機材によってこんなにも撮るものが変わるとは。撮影スタイルを変えるには新しい機材が必要ですね。(独り言です)
コンパクト=気軽というイメージで撮影していたのですが、上がってくる画の描写力を見てその安易な発想を猛省しました。開放では柔らかでオールドレンズのような写り、ほんの少し絞ればキリッとした高い解像感のある写り。絞りによってガラッと性格が変わる面白いレンズでした。そのポテンシャルに気がついてしまったら、もうダメです。気がつくと本レンズの個性をどう活かして撮ろうかと考えていました。レンズの個性で写真に「どう味付けしようか」と考えるのは写真撮影の醍醐味の一つですね。手軽さと独自の写りを合わせ持つ本レンズ。写真を始めたばかりの人で「大口径単焦点で撮りたい」とか、ベテランの方で「クセのある描写を試してみたい」といった思いが掠めたら、ホッとする価格の本レンズを是非手に取ってください。
( 2024.12.10 )
絞りによって描写が変わる、一粒で二度美味しいレンズ。
高画素数のカメラを使うとレンズの味がより鮮明に。