PHOTO YODOBASHI
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SIGMA 28-105mm F2.8 DG DN | Art
その昔、F値がワイド・テレ端で変動する同焦点域のズームが存在し、F4通しの物もありました。それを「F2.8通し」で出してきました。なんだか久しぶりにちょっと昔のシグマらしいレンズだなと嬉しくなるのです。現在のシグマは随分とラインアップも洗練され、単焦点レンズのイメージも強かったりしますが、少し前までは1つの焦点域やズーム域にレンズ達が大渋滞。それも「もう少し広ければ」「もう少し長ければ」といった各社のラインアップの隙間を埋める如く、レンズを乱発していました(笑)もちろん褒め言葉です。「あったらいいね」というものを具現化していくチャレンジングな精神が備わっているが故です。標準ズームでF2.8通しといえば70mm止まり。しかし使い勝手という意味では、ズーム倍率が大きくなって画質が劣化しようともテレ端はもう少し長いほうが望ましいのです。しかしこの時代のレンズは、猫も杓子もまあとにかくよく写ります。本レンズもなかなかな画質のはず。それを担保するには、さぞかし大きいのかと思いきや、及第点以上のサイズでリリースされたように思います。レンズ構成もなかなか贅沢なものであり、サイズと写りのバランスを考えれば必然の構成だったのでしょう。ワクワクしながらレンズを手にして早速街に繰り出すのでした。
( Photography & Text : K )
画面の隅々までともかくよく写ります。曖昧さを一切感じられない、実に緻密で解像力の高い描写。
テレ端が105mmまで伸びると、フレーミングの自由度が本当に上がります。これは使いでのあるレンズ。実にシャープなレンズでありながら、一番上の写真も含めてボケ味も実に美しい。
とてもクリアな写りで、諸収差が実に上手く抑えられていると感じます。解像力が高く、四隅までよく写って、収差がない。おまけにボケ味もよい。なんだかつまんないレンズじゃないの?と思いがちですが、実に抽象的な表現で申し訳ありませんが、このレンズの描写には単焦点レンズのような描写の美しさを感じます。品のある描写というか。枚数の少ないレンズ特有のヌケ感みたいなものです。実際はわんさかレンズが入っているのですが。
ベンチに腰掛ける女性の立体感溢れる手の描写に感じ入ります。また、暗い商店街の中からその外までフレームに入っていますが、肉眼で見て完璧に飛んでいる外を歩く人達のボケ味も、このレンズの描写特性をよく表しているように思います。
その気にさせられる描写
シャッターを落とし、再生画面を見て、加速度的に自分の中の圧が上がっていくレンズってあります。文字面では大げさに伝わるかもしれませんが、静かに滾っていく。皆さんファインダーを覗いている時は「なにかの向こう側」を見ているのだろうと思います。その向こう側がチラチラ見えるからこそ何事も面白いのだろうと思います。レンズの描写の良さは、その向こう側を見ていくモチベーションを湧き起こしてくれます。フラットな光でも、強烈に落ちる光でも、このレンズは実に頼もしい手応えをくれます。ファインダーを覗くのが実に楽しい。
ベンチに腰掛ける男性の頭髪が白飛びしてディテイルが崩れない程度に露出を切り詰めます。リアリティを感じさせる写り。
光学系そのもので、なのか、デジタル的な補正も含めてなのか定かではありませんが、ズーム倍率が高くてもいやな歪曲に悩まされることはありません。
実に立体的な写り。
クレーンの先端を写したもの。肉眼で見るよりクリアなのではないかと感じてしまいます。ボケ味は少しクラシカルなところを感じさせながら輪郭のエッジは丸いため、量感もあって実に好ましいと感じます。しかし、なんと緻密で繊細なのか。それでいて力強さも感じる、不思議な描写です。
標準ズーム枠、強奪。
単焦点レンズを数本同じ焦点で持つことはあっても、標準ズームを複数持つことはスペックに違いがなければ、なかなかないと思われます。F2.8通しの標準ズームに憧れ、未だお手元にない方。第一選択に本レンズを強く推奨します。純正のF2.8通しの標準ズームをすでにお持ちの方、先に記した通り「テレ端105mm、F値変わらず」というスペックは確実に撮影を後押ししてくれると思われます。そして、見出しの通り結果的に貴方の標準ズームは本レンズとなってしまう可能性が大変高い。この描写、テレ端105mmは、本当に使いでに富むと思われるからです。
( 2024.10.25 )
開放F2.8を維持したまま、望遠側を105mmまで伸ばした大口径標準ズーム。より幅広い写真表現が行える1本です。