PHOTO YODOBASHI
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SIGMA 24-70mm F2.8 DG DN II | Art
シグマのフラッグシップレンズ「24-70mm F2.8 DG DN | Art」Lマウント用が、リニューアルを経て「II型」として登場。今回のリニューアル、写りの向上にとどまらず、機能面及ぶなかなか大掛かりなものとなっています。まず追加された機能から見ていきましょう。AFまわりには高出力のリニアモーターが採用され高速化が図られました。新たに絞りリングも追加。それに伴って絞りリングのクリック/ロックスイッチも新たに搭載されています。次にサイズ感ですが、先代モデル比で体積比約7％、重量比約10％の小型軽量化を実現しています。全長は約123mmから約120mmに、重さは835gから745gに。特に重さに関しては、数字で見るよりも手にした時にインパクトがありました。随分と軽くなったなあという印象です。光学系は先代と同じ15群19枚。そのうちの3枚が非球面レンズとなってFLDガラス6枚、SLDガラス2枚、非球面レンズ5枚と、さらなる光学性能を追求といった印象です。
大口径標準ズームは、広々と切り取れる広角から物の形が素直に写りやすい中望遠までの画角を、無段階に行き来できる自由さと全域でF2.8が使える明るさを併せ持ちます。なにかと良く使う焦点距離をシームレスに扱えること、撮影シーン・シチュエーションの幅を広げてくれる明るさがあるので、普段使いからプロフェッショナルな現場まで、あらゆるフィールドでの活用が見込まれます。ただ、写りを求めれば少々大きく重くなってしまうのが常。使い出に富むレンズの筆頭であるにも関わらず、それによって使い方が限定的になってしまうのは勿体無いですよね。では、実際に手にしたときに感じた軽さはどう活きてくるのか。写りとあわせて、その辺りもご覧ください。
( Photography & Text : TA )
解像感を見たくて撮影したカット。35mm付近、開放です。雑味を感じさせないクリアな写りで、画全体が艶やか。徹底的に収差を抑制している印象です。
広角端。窓枠から見える景色は完全に深度外となりますが、その丁寧な描き込み具合に唸らされます。絞れば解像感が増すのはどんなレンズにも言えることですが、開放F2.8で、特に中距離〜遠景を捉えた時に得られる解像感は頭ひとつ抜けている印象です。（画像のクリックで原寸画像を表示します）
開放、加えて逆光といった意地悪な条件です。ご覧の通りエッジに嫌なものはのりませんし、隅まで破綻することなく描き切っています。緑の微妙な濃淡まで再現されており、トーンの連なりの良さもうかがえます。さまざまな要素が高次元にバランスされている印象で、単にシャープというだけでなく、彩りまで添えてくれる気がします。
AFもキビキビと快適です。標準ズームゆえの日常さまざまな撮影シーンを思い浮かべれば、わずかコンマ数秒の合焦速度の差でもその恩恵は計りしれません。これも嬉しいアップグレードです。
白無地の革の鼻緒や草履の台、石や、青葉や落ち葉など、それぞれの手触りや温度の違いまで伝えてくるような緻密な写りです。陰影の表現も巧みですね。
光や色といった条件的に、被写体が背景に沈み込んでしまうかなと思いながら撮影した1枚。撮影後すぐにモニターでチェックすると、ピントを置いた猫が浮き上がってくるような描写に驚きました。前後に滑らかなボケが、その佇まいをより印象的に浮かび上がらせてくれます。（画像のクリックで原寸画像を表示します）
ピントを置いた人物の立体感も良いですが、写り込んでいる壁の微少の凸凹までしっかりと感じるのですから驚きます。色の乗り方もちょうど良い塩梅ですし、特定の色味に転ぶようなこともありません。至ってニュートラルな印象で、撮影者の好みに応じた味付けをしやすいと思います。（画像のクリックで原寸画像を表示します）
ピントの切れ味、柔らかなボケの美しさをみていると、ズームであることをつい忘れてしまいます。単焦点をマウントさせているかのような錯覚を覚えるのですが、どんなシチュエーションでも良質な写りが担保されなければそんな錯覚は起こりません。レンズの粗が出やすい最短撮影距離付近（望遠側）で撮影していますが、申し分ない描写です。ちなみに広角端の撮影最大倍率は約0.37倍と、ハーフマクロに迫る勢い。取り回しも良いです。（画像のクリックで原寸画像を表示します）
写り、使い勝手、重さが絶妙にバランスされた大口径標準ズーム
開放から気持ちの良い画を紡ぎます。ピント面の解像感は開放から全開。しかもF2.8がもたらす大きなボケによって画に彩りが添えられる。極まった解像感と丸みを帯びた美しいボケのコントラストが、本レンズの一番の魅力と思います。絞って変わるのは僅かな周辺減光くらいで、深度やシャッタースピードのコントロール時に絞りを使用するイメージです。ちなみに絞って深度を稼ぐと、この解像感が画面全体に行き渡ります。これはこれでゾクっとくるものがありました。AFも快適ですし、近接性能においても申し分なし。完成度の高い1本です。わりとカジュアルにレンズを振り回していたことに気づいたのですが、これは確かな写りが常に確約されるという信頼感と、手にした時に感じた軽さがそうさせたのだと思います。日常のさまざまな撮影シーンを思い浮かべれば、きちんと構えて撮影する場面の方がむしろ少ないでしょうし、本レンズのように信頼しているからこそ振り回せるレンズであることに越したことはありません。軽量化されて取り回しが良くなった分、出番は確実に増えると思います。写り、完成度、広々とした伸びやかさが気持ちの良い24mm始まりのF2.8通し標準ズーム、このポテンシャルと、重さ大きさとのバランスが絶妙な1本です。これならと託せます。携行すればお出かけが一層楽しくなりそうですし、常にマウントするその1本としても、ぜひ。
( 2024.07.19 )
極まった解像感と美しいボケを1本で楽しめる珠玉の大口径標準ズームレンズ。常にマウントする、その1本にぜひどうぞ。
あらゆるフィールドでの活用が見込まれますので、保護フィルターがあると便利です。