PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
SIGMA 150-600mm F5-6.3 DG DN OS | Sports
シグマLマウントに、フルサイズ対応の超望遠ズームが新しく加わりました。SIGMA 150-600mm F5-6.3 DG DN OS | Sportsは、テレ端600mmと超望遠域までカバーする4倍ズーム。さらにLマウント用は1.4倍および2倍のテレコンバーター(TC-1411 / TC-2011)を使用することで、最大で1,200mm相当の画角を得ることができます。同社には一眼レフ用で同じスペックのレンズがラインアップされていますが、ミラーレスに最適化された光学設計により、本レンズは質量で約760g軽く(2,100g)、全長で約26.6mm短く(263.6mm)仕上がっています。コンパクトなレンズですが、約4段分に相当する強力な手ブレ補正(OS)機構をレンズ内部に搭載し、AFで動いている被写体をスムーズに追うステッピングモーター採用と、超望遠撮影を快適にする機能も充実しています。また更なる使いやすさを求め“デュアルアクションズーム” (ズームリングの他に直進ズームに対応)をコントロールするスイッチが鏡胴に新しく搭載され、ズームをロックするだけでなく、操作時の「トルク」を2段階(T:タイト、S:スムーズ)に切り替えることができ、撮影状況に応じたトルクを得ることができます。スペックから、さまざまなシーンに柔軟に対応できる万能性を感じる超望遠ズーム。さてその写りはどうでしょうか。日常風景の中でシチュエーションを変えて撮影してみます。
( Photography & Text : A.Inden )
冒頭のカットの撮影場所から、ほんの少し場所を移動してテレ端600mmで撮影。被写体、時間帯、光の条件は同じですが、焦点距離の選び方で全く違う雰囲気の写真に仕上がりました。確かに一般的には超望遠ズームレンズは大きくて、手軽に持ち出して撮るというイメージではありませんが、超望遠でしか得られない圧縮効果は、新しい写真の領域を見せてくれるのではないでしょうか。
テレ端600mm。AFポイントを右端のサーファーに置いてAF-Cで撮影。。ピントの位置は画面の端ですが、AFはテイクオフからしっかりとサーファーを捉え続けていました。シャドーの締まりがいいキリッとした描写で、波の雫まで克明に写し出しています。
望遠レンズを逆光で撮影すると、空気中の粒子(海岸では塩)の影響で画面全体がふわっとしてしまうことがよくみられます。本レンズの描写は、全体に黒が締まりコントラストが高いため、このような条件でもクリアな写りを見せてくれます。逆光好きにはありがたいことです。
本レンズには撮影の条件により選べる2つの手ブレ補正モードがついています。こちらはテレ端600mmで撮影。一般的な撮影に適している手ブレ補正モード1を選択しました。計算上、600mmで撮影してブレないシャッタースピードは1/600以下となりますが、約4段分に相当する強力な手ブレ補正の効果で1/20でもブレを感じません。
テレ端、最短撮影距離280cm付近で撮影。アブラゼミが逃げない距離からここまでアップに撮影できるのは驚きです。絞り開放、シャッタースピード1/40、さらに逆光と、レンズには厳しい撮影条件ですが、ピントピークは高解像度で立体感のある描写です。
最短撮影距離が短いとテーブルフォトにも威力を発揮します。開放値はF5(150mm時)と大口径ではありませんが、ここまで柔らかくボケてくれれば十分ですね。
ワイド端150mmでの最短撮影距離は約58cm。開放から収差を感じさせないシャープな写りです。リューズの金属、風防ガラス、皮ベルト、それぞれの質感もしっかり感じられます。*最大撮影倍率1:2.9は焦点距離180mm時に得られます。
手ブレ補正モード2なら上下の揺れを感知して補正するので、モータースポーツなどの流し撮りに適しています。波の影響を受ける水上バイクは細かな上下動があるため流し撮りが難しいですが、狙い通り写し止めてくれました。レンズの性能、様様です。
向かってくる新幹線をAFモードAF-Cで撮影。金網越しに加え、多くの架線が存在するためフォーカスし続けるには難しい条件でしたが、AFはしっかり追従していました。
扱いやすく進化した超望遠ズーム
600mmまでカバーする超望遠4倍ズームを使っていることを忘れてしまうほど、扱いやすいレンズでした。コンパクトさはもちろんですが、一番扱いやすく感じたのは最短撮影距離の短さです。被写体に寄りたいと思えば58cmまで近寄れて、焦点距離180mm時に最大撮影倍率1:2.9のクローズアップ撮影ができます。生物を自然な雰囲気の中で捉えようと思えば、600mmで280cmまで距離がとれる。被写体との距離の自由度が増すことで小さな虫から、大きな物まで被写体を選ぶ幅が広くなったと感じました。そして、その自由さを支えているのが、約4段分に相当する強力な手ブレ補正です。手ブレを完璧に近く補正してくれる信頼感があることで、厳しい条件での手持ち撮影も自信を持って挑むことができます。
工作精度の高さを武器に材質を見直した軽量化、撮影を確かなものにするAFや手ブレ補正の精度アップ。このように、描写性能以外のところも丹念に見直し改良していくことで、レンズはこんなにも扱いやすくなります。すると、自分の腕が上がったのかなと思うほど意図通りの画が得られるではありませんか。レンズ選択の基準は描写性能が肝心であることは言うまでもありません。ただ、今回の撮影を終え、機材は扱いやすく確実に撮れるという要素も非常に大事になってくるのだと感じさせられました。ド級の超望遠域をカバーするレンズですから「扱いやすさ」は特に外せないものかと。超望遠で切り取る世界感に憧れながらも「超望遠ズームで撮るのは難しいのでは」と躊躇していた人たちにこそぜひ手にしてみて欲しい一本。あなたに、きっと新しい世界を体験させてくれるはずです。
( 2021.09.01 )
コンパクト、防塵防滴、強力な手ブレ補正に安定したAF。フィールドにガンガン持ち出せる超望遠ズーム。
有効約6100万画素のイメージセンサー搭載のfp Lとの組み合わせで、超望遠のインパクトのある画を大伸ばしで壁に飾ってみてはいかがですか。
これで無敵の1200mm。防塵・防滴に配慮した設計なので少しくらいの雨なら問題なし。
こちらはx1.4倍のテレコンバーター。テレ端で840mmまでカバーします。大変コンパクトで、できれば両方持っておきたいですね。
USB DOCK UD-11を使うことでモードスイッチを好みにカスタムできます。レンズを自分好みに育てるのも、楽しいですね。
防塵防滴を活かしどんな条件でもガンガン使う方には、安心を一段上げるために、撥水仕様のフィルターをお勧めします。