PHOTO YODOBASHI
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RICOH GR IV Monochrome / SHOOTING REPORT
遂にというか、いよいよというか、RICOH GRシリーズに初めてのモノクロ専用機となる「GR IV Monochrome」がラインアップに加わりました。2025年10月に開発アナウンスはありましたが、リコーイメージングが手掛けるPENTAXブランドのAPS-C一眼レフ「K-3 Mark III Monochrome」(2023年4月発売)の登場を契機に、センサーサイズを同じくするGRへの期待感が一気に高まってからもう3年が過ぎました。筋金入りのGRファンのみならず、軽快に持ち歩けるモノクロ専用機の誕生を待ち望んでいた方も多いことでしょう。「GR IV」譲りのマグネシウム合金の外装、35ミリ判換算28mm相当のフィックスレンズに加え、新開発となる約2574万画素モノクロCMOSセンサー(APS-C)を搭載。既存のイメージセンサーからカラーフィルターを取っ払って、はいモノクロ版一丁上がりという単純なものでなく、母艦となるGR IVの躯体やレンズをはじめとした諸条件に合うように開発が進められたのかと推察します。ところで、先行して発売された「GR IV」も今だ品薄の中、本レビューを執筆している今も「GR IV Monochrome」をお待ちいただいている方々のお手元に届きにくい状況が続いており心苦しいばかりです。リコーイメージングは今年のCP+への出展も無かったこともあり、実機を手にする機会が少ない中、どのような写りを見せてくれるのかじっくりご確認いただければと思います。
( Photography & Text : KIMURAX )

濃密なグラデーション情報がものをいう
カラー機(いわゆる普通のデジタルカメラ)は、センサーの前にカラーフィルターを設置することで色を認識していますが、モノクロ専用センサーにはそのカラーフィルターがありません。故に、ざっくりと言ってしまえば、GR IV Monochromeのセンサーには光の情報がよりダイレクトに届くため、圧倒的な解像感が得られ、非常に豊かな階調表現が可能になります。ふむふむ、そう説明されれば「ハイそうですか」と上がってきた画を眺めながらそう言うしかないわけです。仕組みとしてはそうなんだろうけど、カラー機だってそれなりのレンズを付ければ解像感は凄いし、階調特性だって各メーカーとも随分とよくなってきてるしなぁと正直思ってしまうのです。比較画像を原寸表示して目を皿の様にしながら漸くわかるような、それでもわからないような。理論上はそうであっても、この目で確かめることはなかなか容易なことではないのです。そこで用意したのがこちらのビルのカット。RAWデータを用い、ハイライトを持ち上げてシャドーを落としています。カラーデータであれば、コントラストが高めの傾向ですからハイライトは飛び過ぎないように抑えてシャドーは若干持ち上げて整えるのが一般的。が、あえてその逆のチューニングでモノクロデータをいじめてみたわけです。モノクロの画は一見コントラストが低いように見えるのですが、それは中間の階調がたっぷりとあるから。後処理を加えてもハイライトエリアのグラデーションが破綻しないのです。モノクロセンサー各々の画素に届く圧倒的な輝度情報が故のこと。こういったPC上での後処理耐性の高さは、作品作りにおいても大いなるアドバンテージでもあります。

光量の乏しいすっきりとしない空。肉眼にも少々眠く映る景色でしたが、70㎞ほど先の富士山をきっちりと捉えており、画全体を見渡してもその解像力に感心するばかりです。濃淡で表現するモノクロとはいえ大変ナチュラルなラインで、見て取れる空間の奥行きと立体感にハッとさせられます。また現場での見た目以上に、雲の表情を大胆に浮かび上がらせている濃密なトーンはモノクロ機ならではの表現の妙です。

本機には赤色フィルターが内蔵されており、ボディ背面のFnボタンで瞬時にON/OFFが切り替えられます。フィルターの効果として、赤味を帯びたものは明るく、青系ものは暗く写る。例えば、人物の肌は明るく、青空は暗く沈むという具合です。ところで水槽の中でゆらゆらと漂うクラゲを撮ったカットでなぜ赤色フィルターの話しを、となるわけですが。実は水槽のバックスクリーンが青だったものですから、その効果を試したものです。水槽自体のライティングがかなり明るかったこともあり露出をアンダーぎみにしていたとはいえ、背景はしっかり深い深い闇と化しています。片やクラゲといえば透き通るような乳白色ですが、白く飛びきらずにその姿の細部に至るまで克明に描き出しているあたりに感じ入ります。

心躍るシャッターチャンスこそピタリと
しんしんと降る雪の向こうのベンチをポツンと。と前後しながらフレームしている最中に、思いがけないゲストがフレームインしてくれました。こういう時って、内心ビックリしつつヤッタと高揚するものですから、シャッターに力が入り過ぎちゃうのですよね私の場合。電源入れてすぐに、なんてことになったらもう慌てまくりです。結果、手ブレの量産で何度落胆したことか。ところがどうでしょう、ご覧のとおりしっかり止まっていますね今回は。指先に結構チカラがこもっていたことを微塵も感じさせない。これは紛れもなく、5軸手ぶれ補正機構によるシャッター速度換算6.0段分の賜物。軽くて小さいカメラだからこそ、手ぶれには強くあって欲しいわけでホントありがたい限りです。それにしても広角レンズながら画の隅から隅まで繊細かつシャープな像で描き切っていますね。ベンチに付着した雪の質感と言いましょうか表情までがつぶさに見て取れる精細な描写は、モノクロ機の得意とする表現でしょう。

雪が降っているということは空は雲でしっかりと覆われていますが、そこから透過する光が積もった雪に反射して思いのほか明るいものです。というわけでハイライト部分に気を配りながら露出を切り詰めての撮影ですがいかがでしょう、シャドーからハイライトまで実に濃密なトーンで描き出していますね。本機は周辺減光のON/OFFの切り替えができますが、雪景色には周辺減光OFFがお似合いかと。ひとつ前のカットも同様です。

睨みを利かせている仁王像。朱色に染まった筋骨隆々の身体は背景の暗闇へとじんわりと溶け込み、見開いた眼球が鋭く光っているかのような写りです。パッと目を惹く朱の彩りは無くとも、モノクロ表現ならではの凄み、半端ありません。
赤色フィルターについては既に触れましたが、フィルムのモノクロ撮影でカラーフィルターを使い込んできた経験のある方ならまだしも、使ったことがない或いは存在そのものを知らなかったという方には少々ピンとこなかったかも知れません。そこで、日本でも馴染のあるビールブランドの電飾看板をパチリ。イメージカラーの赤い部分が白っぽく写っています。赤色フィルターOFFのカットと見比べていただくと一目瞭然でしょう。赤をそのままモノクロに落とし込むより、赤色フィルターを介在させた方が看板の存在が目立っていますね。随分と古ぼけた雰囲気にもちょうどマッチしているような。赤系あるいは青系の被写体をフレームする際に赤色フィルターのことを意識してみてください。

予め設定した距離(1m~∞)にピントを固定できる、GRシリーズではお馴染みの「スナップフォーカス」にて撮影。ISOオート設定時はISO160~409600に対応し、この時は12800までアップしていましたがノイズの影響はほとんど感じられず、これは常用域と言っていいでしょう。ところでスナップフォーカス+ISOオートという設定に安心しきっていた中、咄嗟に構えての撮影でしたのでシャッタースピードが1/30秒とはつゆ知らず、被写体ブレしてしまっていますね。とは言え、歩きながらのレリーズにも関わらず、手ぶれ補正のおかげで背景はしっかり写し止まっています。そのおかげで子供らの動きがかえって強調された印象で、これはこれで結果オーライの仕上がりです。


モノクロ撮るなら、モノクロ専用機で。
フィルム時代を含めカラー写真から始めた人にはモノクロ表現というギミックとして新鮮に映り、自ら現像を手掛けてきたような手練れの方々にとっては、やっぱりモノクロ写真いいよねと再認識させてくれる。持ち歩きしやすく、気の向くままにスナップシューティングできる「GR IV Monochrome」はそんな存在ではないでしょうか。そして、カラー機のセンサーに勝る輝度情報量を武器とするモノクロセンサーがもたらすトーン豊かな階調表現。撮影現場で露出を追い込んで一発で決めるもよし、画像処理ソフトでトーンカーブを操り思い描く世界感に仕立てるもよし。なにかと無理が利くリッチなデータがこのコンパクトなカメラで得られてしまうのですから。ところで、カラーデジタルカメラのエフェクト機能を利用する等して、モノクロ撮影を日常的に体験されている方も大勢いらっしゃることと思います。それはそれできっと楽しいでしょうが、ぜひこれを機にモノクロ専用機の「GR IV Monochrome」を手にしてみていただければ、作品作りの幅がさらに広がるはずです。もちろんモノクロ現像をやり込んできた人は、あの手この手の思い切った焼き加減をPC上で試してみるのもいいでしょう。モノクロ撮るなら、モノクロ専用機で。至極当たり前のことなのですが、それだけの理由があるのです。既に本機を手にされた方は、ここまでの説明を聞かなくてもちゃんとお気づきのはず。発売から1カ月が過ぎてもなかなか手に入りにくい状況ではありますが、簡単に手に入らないからこそ手にした時の喜びもひとしおだと思います。今しばらく気持ちを高めてお待ちください。
( 2026.03.19 )
目の前で起きている事象の本質を炙り出すモノクロスナップシューター。カラー機とは一味も二味も違う、懐刀的な存在となるはずです。

