PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
SIGMA 30mm F1.4 DC DN | Contemporary
[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ
ズームレンズ全盛とはいえ、単焦点レンズの価値が揺らぐことはありません。中でも標準レンズは「交換レンズの基本」とされ、性能とサイズのバランスが良い上に広角的にも望遠的にも使えるという、万能の一本です。とはいえ、マイクロフォーサーズにおいてはその選択肢が限られていた感がありましたよね。そこに登場したのが今回ご紹介するシグマの開放F1.4を誇る大口径標準レンズです。画角はフルサイズ換算で60mm相当。マイクロフォーサーズでは縦横比がフルサイズとは 異なりますが、50mmよりちょっと長いところが面白そうです。単焦点レンズだけに描写性能は気になるところですが、シグマによると「Artラインに匹敵する高画質」とのこと。期待に胸を踊らせて撮影に出かけました。
( Photography & Text : TAK )
まずは解像力から見ていきましょう。錆びた部分や板の表面の描写、いかがでしょうか。高い解像力は絵に説得力をもたらします。鋭いナイフのような切れ味でありながら、目が痛くなるほどでもない。あくまで被写体の輪郭を克明に刻むことで、それがどんなものであるのかを雄弁に語る、そんな解像力です。
2mほど離れた鴨のつがいにピントを合わせています。センサーサイズが比較的小さいマイクロフォーサーズといえども、F1.4ともなれば前後が目に見えてボケてきますね。
続いて開放でのボケ味をチェックしてみます。前後ともナチュラルでスムーズ、良い雰囲気ですね。どの株にフォーカスして主役にするか。F1.4がその選択の自由度を高めてくれます。現場は薄雲越しの弱い逆光でしたが、ヌケもスカッと爽快。可憐に佇む様子が立体感を伴って捉えられています 。
京都という町を50mm相当より少し長い画角のレンズで撮るなら、路地はぜひ撮ってみたい被写体です。若干の圧縮効果が構図にも良くマッチしています。横位置のフレーミングでも縦に長く構図を取れるのも、マイクロフォーサーズならではの面白さですよね。
金属、プラスチック、革と異なる材質。その感触をつぶさに想像できるほどの質感表現ですが、リアルなだけでなく艶かしささえ漂う描写はその場の空気さえも写っているかのように感じます。ちなみに革ジャンのカットは最短撮影距離、30cm付近での撮影。画角からするとかなり寄れます。
Contemporaryラインに属するレンズは、カメラ内の画像処理による歪曲の補正を前提に設計されていますので、RAWデータでは樽型の歪曲が見受けられます(レビューの画像も補正済み)。もちろんJPEG出力では補正されますし※、ソフトウェアでRAWデータから現像する際にも補正可能です。 デジタル時代ならではの設計ですが、光学的に補正しない分レンズもお値段もコンパクトにできるのなら、筆者は大歓迎ですね。
※ファームウェアが最新であることをご確認ください
Contemporaryの皮を被った、「かくれArt」の標準レンズ。
ほぼ開放で撮っていますが、それはマイクロフォーサーズでボカせる喜びの体現であります(笑)。また、絞る必要すら感じなかった、表現力の虜になったとも言えます。シグマに限らず各社とも入門用からハイエンドまで様々なレンズをラインアップしていますが、標準的な位置づけでありながらもハイエンドに肉薄するパフォーマンスを見せる、「かくれハイエンド」レンズが時として存在します。単に高いだけではない解像力、雰囲気のあるボケ味、ヌケの良さを実現した本レンズは 、まさしく「かくれArt」レンズと言っても良いでしょう。ステッピングモーターを採用した AFにより動作も静粛かつスムーズですし、フォーカスリングのトルクも絶妙です。特殊なポリカーボネート製の鏡胴は質感も高品位で、重量もたったの265gと常用にぴったり。これまでズームレンズのみで撮ってこられた方、この単焦点レンズで新しい世界へ足を踏み入れてみてください。ズームと違って動くのは自分自身。一歩の意味をじっくり考えつつ、写真の面白さを体感してください。すでに色々な単焦点レンズをお持ちの方。違いの判るあなたこそ、単に「良く写る」だけではない表現力にきっとご満足いただけるはずです。是非、お試しください。
( 2016.06.22 )
お値段に「ムフフ」。写りに「ムフフ」。本レンズにより、マイクロフォーサーズシステムが一層「ムフフ」なものになったことは間違いありません。
保護も大切。シグマで揃えてしまいましょう。