PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
Panasonic LUMIX DC-FZ85D / SHOOTING REPORT
スマートフォンよりもズームできる。でも大袈裟なカメラはちょっと、、、そんなカメラをお探しの方にご一考いただきたい一台がございます。こちらのDC-FZ85Dのズーム倍率は何と60倍。焦点距離的には20mmから1200mm相当の感覚でお使いいただけるズームレンズを搭載しています。そして何より、お値段が手頃です。この飛行機のどアップは望遠側にズームして撮影していますが、これでもまだ800mm相当。初めは最大望遠1200mm相当で捉えていましたが、被写体が近づいてくるにつれて逆にズームアウトしなければ捉えられなくなるほど、大迫力で撮れてしまうのです。一方最広角は20mm相当とこれまた広く、、、これについては次のコマでお話ししましょう。以後、「mm」の後の「相当」は省略します。
( Photography & Text : TAK )
こちらがその20mmでの撮影です。頭上付近を飛んで行く旅客機の全体を収められるほど、広い世界を捉えることができます。広角レンズは近くほど大きく、遠くほど小さく写る特性があるのですが、20mmともなると超広角の部類でかなりのデフォルメ感も出てきます。これが機体のダイナミックさを強調してくれるので、望遠とはまた別の迫力があります。
滑走路は当然ながら侵入禁止ですが、このカメラがあれば眼前にあるかの如く、ここまで大きく写すことができます。そしてこれでも700mmあたり。勿論ズームアウトして機体全体を捉えるのも良いですし、逆にこのようにズームインすれば一部を強調する表現になります。つまり如何様にでも切り取ることができる。構図の自由度の高さが本機最大の魅力です。後方の住宅や山々が実際よりも近い距離にあるようにも見えますが、これを「圧縮効果」と言います。この圧縮効果の高さが望遠を使う醍醐味です。
飛行中の小型機だってこの通り。こちらは800mmにて空も多めに入れて小型機の可愛らしさを表現した構図ですが、このように離れた位置から望遠で撮ると、デフォルメ感を消すことができます。解像感は十分で、「コウノトリ」「TAJIMA」などのディテールも読み取ることができます。オートフォーカスも頼もしく、動きのある被写体をしっかりと追従してくれました。設定はAF-C。シャッターボタンを半押ししている間、被写体の位置の変化に追随してAFが合い続けてくれるモードです。
ようやくお待ちかねの最大望遠1200mm。ここまで来ると、機体の一部を大胆に切り取れるほどにズームできます。シャッター速度を遅く設定して、動いている被写体に合わせてカメラも振る「流し撮り」という手法で撮影しました。被写体はぶれていないのに背景はぶれていて、何だかスピード感のある写真。ご覧になったことがありますよね。あれはこうやって撮っています。撮影モードの中にも「流し撮り」があるので、ぜひチャレンジしてみてください。
池付近の湿地帯に美しく咲く花が、近づけない位置にありました。もちろんズームインしましたが、意外にも1200mmの最大望遠です。本レンズの「望遠力」は離れた小さな被写体にも有効です。ちなみに望遠にするほど背景が狭くなり、ごちゃごちゃした背景でもちょっとカメラの向きを変えればシンプルな背景を選びやすくなります。そして望遠はボケも使えます。主役と背景の距離を取るほど、ボケは大きくなります。
こちらはかなり近い距離から130mm近辺で、トンボさんを狙いました。被写体にグッと近づくと背景も綺麗にぼけてくれるので、被写体が背景からふわっと浮き上がって見えます。こういうのが撮れると、写真撮ってるなあという気分になりますね。画像処理でボケを演出してくれる優秀なスマートフォンも増えましたが、本機ではレンズのみによるナチュラルなボケをお楽しみいただけます。
水辺の植物の艶が美しい。シャッタースピードは1/8秒にして、水の流れを表現しています。これほどの低速シャッターだと三脚に固定するのが本筋ではありますが、手持ちでぶれずに撮れてしまいました。脇を締めて肘を膝にグッと押し付けて「人間三脚」状態で撮っていますが、本機の手ブレ補正やしっかりと握れるグリップの貢献度も大です。
長距離を最大望遠で撮ると圧縮効果も最大となり、相当な密集感を表現することができます。肉眼では、いや実際に歩いても気が付かないような高低差でも、望遠にすると如実に現れます。通常のレンズでは撮影を諦める距離でも、かなりの距離まで追い続けることができるのは圧巻ですね。ある程度離れると空気の揺らぎが解像感に影響してくるのはこのカメラに限ったことではありませんが、低温で空気が乾燥する冬場や雨上がりのすっきりした空気であれば、クリアに写ってくれるでしょう。
実際の明るさよりもかなり暗めの露出で、光の当たっている部分さえ写ればよいという意図で撮っています。ちなみに、明るい所を暗く撮ることはできても、暗いシーンをある程度の明るさで撮ることはこのカメラには少々荷が重いでしょうか。ピントが合いにくくなったり画がザラザラしてくるのですが、そこはコストパフォーマンスとのトレードですね。全体として「このお値段で良くぞここまで!」と言いたくなる出来の良さですから。
高倍率ズームは動画でも威力を発揮します。もちろん4Kで撮れます。野鳥や乗り物など近づきにくい被写体でも、動きに合わせて切り取れるのは大きな強み。そして音も入るので臨場感が違うのです。この手のカメラには当たり前のようについているズームレバーですが、W側T側に操作すると電動でズーミングしてくれますよね。これ、大きな高級カメラではほとんどが手動なのです。カメラを動かしながらズームリングもスムーズに回し続けるのは容易ではありません。それが指先ひとつでいとも簡単にできてしまうのは、実はとっても有り難いことです。
ドンと迫って。グッと引いて。お出かけが楽しくなるカメラ。
いかがでしょう。お探しの一台は、こういうカメラではないでしょうか。ご覧の通りファインダーまで装備されておりまして、覗きながらじっくりと構えて撮ることができます。動体を追う場合も、しっかり構えてファインダーで覗いて撮った方が成功率が上がります。つまり装備も充実していて、一通りのことができてしまうカメラなんですね。「とにかく画質最優先!」となると選択肢も予算も変わるかもしれませんが、コストパフォーマンスを含めた総合的なバランスの良さではピカイチです。もちろん何の練習もなしに結果が出るわけではありません。しかし、学ぶほど応えてくれる素地を持ったカメラであることも事実です。アップで撮りたいからズームインすることに加えて、ズーミングで背景に写る範囲や被写体の形の捉え方(デフォルメ or 形に忠実)をコントロールする意識を持つと、表現の幅が増えるでしょう。そしてやはりお値段、本当に魅力的ですよね。今時レンズ1本でもいいお値段しますから。撮影はこの一台に任せて、余った予算は旅費や食事やお土産に回してしまうのも良案です。最後に細々としたスペック関連を少しだけ。まず、このカメラで撮れる写真の比率は4:3です。一般的な写真は2:3なので縦方向に広く感じるかもしれません。もちろんカメラ側で2:3に設定することも可能ですし、プリント時に2:3にすることもできます(上下が少しカットされます)。画素数は約1800万画素と必要にして十分。逆に高画素機よりデータを節約できるので、同じSDカードでもより多くの写真が撮れます。ファインダーそして背面モニターは旧型より高精細になり、更に見やすくなりました。充電もUSB-C端子が搭載されているので、付属のACアダプターはもちろん、モバイルバッテリーなどでも可能です。ご安心の上、次の行き先をお探しください。
先程のトンボさん。こちらはAFをマクロに設定して、20mmにて被写体にググーッと迫ってみました。同じような被写体の大きさでも、背景の広さが望遠とは大違いなのがお分かりでしょうか。ちなみに広角端では1cmまで近づいてもピントが合います。もちろんそこまでは寄れていないと思いますが、逃げなかったトンボさんに感謝です。
昭和な商店街の連なりを300mmあたりの望遠で。街歩きも全く苦にならないサイズで、スナップもサクサク撮れるカメラです。ちなみにモードダイヤルは「iA」(インテリジェントオート)で撮影。ズーミング以外はカメラが決めてくれる最もカンタンなモードで、撮影に自信がなくても良い感じで写してくれます。実際、iAのままで全部撮っても良かったかもと思うほど「intelligent」で、拍子抜けしてしまいました。
( 2025.06.05 )
このお値段、万能性。初めての一台として、そして上級者のサブとしてもおすすめです。
保護フィルターをつけておくと、キャップをしていなくても安心感があります。