PHOTO YODOBASHI
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TAMRON SP 70-300mm F/4-5.6 Di VC USD Model A030
[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ
タムロンからフルサイズデジタル一眼レフカメラ対応の望遠ズームレンズ「SP 70-300mm F/4-5.6 Di VC USD Model A030」が登場しました。創業60周年記念モデルの一本として2010年に発売された「SP 70-300mm F/4-5.6 Di VC USD Model A005」をリニューアルした製品で、シックで上品な印象になった外観デザインをはじめ、制御回路とアルゴリズムの改善によるAFの向上や手ブレ補正機能の向上、そしてレンズ最前面には新たに防汚コートが採用されました。撮影最短距離はズーム域全域で1.5m、撮影倍率は1:4(300mm時、最短撮影距離1.5m)。ニコン用とキヤノン用がラインアップされています。タムロンはいつの時代も高性能なレンズを多数リリースしてきたメーカーですが、特にコストパフォーマンスの高さはユーザーにとってありがたく、このあたりはもう説明不要でしょう。従来モデルのA005も例外ではなく、高い描写性能に加え、使い勝手の良さなど、バランスに富んだ完成度の高い製品であることをご存知の方も多いのではないでしょうか。より深化した新モデルA030(ニコンFマウント用)のポテンシャルを、作例とともにレポートしていきたいと思います。
( Photography & Text : TA )
思いのままに被写体を引き寄せ、多彩なシーンに対応できる。
このレンズの最大の魅力は、様々なシーンを撮影可能にする広い焦点距離域を持つことではないでしょうか。望遠ならではの風景撮影、各種スポーツ、航空、鉄道、運動会撮影はもとより、被写体のありのままを写し込む中望遠域、そしてワイド側は準標準レンズとしても機能します。被写体を撮り手の思うままに引き寄せ、この一本で多彩なシーンを写しとることが可能です。おまけに強力な手ブレ補正の搭載と振り回しやすいサイズのおかげで、その軽妙さは確たるものがあります。 日常の記録から一般的な望遠撮影までを一本のレンズでこなしたいユーザーにとっては、選択肢の一つとして魅力を感じるレンズでしょう。
近代的なガラス張りのビル。それだけで垂涎の被写体ですが、対象の建物と自身が立っている場所の間には何本もの線路が走っているため距離を縮めることができません。こんなとき望遠側を利用すれば、被写体を手繰り寄せたフレーミングもできます。135mmから300mmの望遠側で糸まき型、ワイド側で樽型歪曲収差が見られますが、単純な歪曲ですので現像ソフトでどうとでもなります。絞り込んでも線が太くなる傾向はなく、実にシャープに像を結びます。一段絞り込んでF8での撮影ですが、開放時に見られる周辺減光も気にならなくなるほどに落ち着きます。偏芯による周辺画質の乱れもなく、横位置でも縦位置でも安定した描写を得ることができました。
テレ端300mm開放、最短でちょっとしたクローズアップ的な撮影を行ってみました。全ズーム域で最短1.5mとなると寄れるイメージはありませんが、小さな桜の花もこれくらいの大きさで捉えることができます。開放では周辺の光量が落ちる傾向がありますが、個人的には大歓迎です。周辺の光量落ちが気になる被写体を撮影する場合は、一段から二段、絞り込むと良いと思います。
クローズアップ的な撮影をもう一枚。200mm開放での撮影です。ピント面は芯がありながらも硬さは感じられず柔らか。前後のボケも美しく、色再現性、立体感、質感と、いずれも申し分のない写り。味付けでいうと京風ではなく、九州地方で見られるような、醤油に少し甘味を感じるような芳醇さがあるとでも申しましょうか。
100mm、開放でガラス越しに撮影した一枚です(AF設定)。意図したところにピントがしっかりきてくれたので、フルタイムマニュアルの出番はありませんでした(フルタイムマニュアル:AF設定時にレンズ側面のフォーカススイッチを切り替えることなくMFでピントの微調整が可能)。また望遠を利用したポートレート撮影もおすすめです。素の表情、仕草、ありのままの姿を写真に残したいと思った時、カメラを意識させない距離が保てるのは望遠のメリットと言えるでしょう。
街でのスナップには標準域付近の単焦点レンズをマウントすることが多いのですが、今回は、この望遠ズームをマウントして街へと繰り出しました。望遠側を利用すれば、その場にいて視線の先に見ているものを手繰り寄せることができますし、切り取り感の強い画作りもできます。画を作ろうとせず、被写体そのものをまっすぐに捉えたい時や、画に広がりを持たせたい時にはワイド側を利用したりと表現の幅が広がり、スナップ撮影もより面白いものに感じました。街をスナップするのに大きな望遠ズームを持ち出すのは二の足を踏んでしまいますが、このレンズは500mlのペットボトル一本分強ほどのサイズですから、街中で取り回しが良いのも魅力です。
重めの空気を再現してくれる懐の深さを感じる描写です。この日は飛ばされて折れた傘が道端にいくつも転がっているような雨風ともに強い日でした。マウントしていたレンズがMFレンズなら、なかなかの修行感が漂うシーンです。こういった場面でも、レンズ最前面の防汚コートのおかげで水滴もさっと拭き取るだけ。メンテナンスが容易であれば、チャレンジできるシーンの幅も広がります。
家からわずか徒歩1分、整然と並んだ民家の狭間で健気に咲く菜の花とダイコンの花。いつもなら通りすがりに愛でるだけなのですが、ちょうど、この望遠ズームを手にしていたのでその姿を捉えてみました。写り込む民家の壁の色が良かったので大きくぼかして背景として利用した一枚です。切り詰め気味にフレーミングしたカットもあるのですが、あえて非日常感の漂うこちらのカットをセレクトしました。
少し街から離れた場所へ持ち出してみました。広大なフィールドを目の前にするとテレ端ばかり使用してしまうのですが、特にテレ端での撮影時にありがたかったのが手ブレ補正機能です。シャッター半押しで像がすでに安定しているタムロンの優秀な手ブレ補正には目をみはるものがあります。撮影は全て手持ちで行い、ON/OFFで撮り比べてみましたが、ONの状態では望遠側でシャッタースピード1/30秒でもしっかりと機能してくれました。ストリートスナップにおいて瞬発力を問われるシーンでも、心強い助太刀になってくれるでしょう。またフルタイムマニュアルが可能なため、フォーカススイッチを切り替えている間にシャッターチャンスを逃してしまうこともありません。特にポートレートやクローズアップ的な撮影、望遠側を利用する際にはとても便利です。
コストパフォーマンスの高い実力派レンズで、ワンランク上の写りを手に入れる。
厳しい条件を課しての撮影も試みましたが、周辺に軽微な甘さは感じられるものの、中心部はどのシーンにおいても気になるような色にじみや像の乱れは見られませんでした。色再現性、立体感、ヌケいずれも上質で、ボケ味も美しいです。また新BBARマルチコーティングの採用により逆光耐性が高く、光源の位置や画角によっては僅かなゴーストは発生するものの、コントラストの低下は感じられず黒がしっかりと締まります。鏡筒の作りもしっかりしており、レンズの伸縮による重心の移動がほとんどないため、終始安定した撮影が可能です。AFの追従性も高く、飛んでくるカモメやカラスもしっかり捉えることができました。実用的で高画質な望遠ズームレンズの購入をお考えの方に、是非ともおすすめしたい一本です。
( 2017.05.30 )
タムロンの光学設計技術を結集して誕生した望遠ズームレンズ。思うままに被写体を引き寄せ、写真表現の可能性を広げてくれる一本です。
PRO1Dプロテクター(W)にTEIJINの超極細繊維「ミクロスター」を採用した高性能レンズクロスを付属した特別パッケージ。レンズと一緒にいかがでしょうか。