PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
Voigtlander NOKTON 28mm F1.5 Aspherical
[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ
純正レンズとはひと味もふた味も異なる、趣味性の高いレンズを意欲的にラインアップするコシナ。今回レビューをお届けするのはフォクトレンダーブランドの「NOKTON 28mm F1.5 Aspherical」(ニコンZマウント用)です。フルサイズ(ニコンFXフォーマット)に対応し、28mmという十分な広角域でありながらもパースが気になるほどの広さでもなく、身構えずに扱える焦点距離。とはいえ開放F値は1.5と明るい大口径レンズですから、ピント合わせはそれなりにシビアです。最短撮影距離(28cm)に近づくにつれ、息を止めている時間も長くなっていたりして。そんなひと手間や時間も、マニュアルフォーカスレンズで撮ってるなぁという実感があり、充足感までもが得られるという不思議。そこはやはりそれなりの写真が上がってこそなわけで、このレンズでじっくり撮った甲斐があったと思わせてくれないと、そうはいきません。全長:57mm、重さ:360gという軽快なサイズ感。ノクトンという名を刻まれた所以の明るいF値のおかげで、一日中これ一本で撮り歩ける気軽さを存分に楽しんでみたくなるレンズです。
( Photography & Text : KIMURAX )
時間調整で暫し佇む車掌さん。眼差しは見えなくても、その優しい気配すら漂わす背中ではありませんか。くっきりと写し出された可愛らしい刺繍。それとは対照的に、アウトフォーカスで朧げなお客さんたち。何だかホームに流れている空気までも写っているように感じてしまうのは私だけでしょうか。
何を撮りたかったのかという、撮り手の意思をきちんと反映できるF1.5の深度。現実離れした浮遊感の一歩手前で、しっかり踏みとどまってくれるとでも申しましょうか。広角28mmという焦点距離とF1.5の絞り開放値には、組み合わせの妙があるように感じてなりません。
開放からピント面のシャープさが際立ちます。故に素材の質感描写も素晴らしく、ドキッとさせられることもしばしば。
大口径の広角レンズですから、開放付近ではそれなりに周辺落ちもします。とはいえこのただならぬ雰囲気を醸してくれるギミックを活かせるシーンはきっと多いはず。F4あたりまで絞れば解消しますので、落とすか落とさないかはお好み次第ということで。それにしても開放からシャープな像を結ぶものです。
ガラス越しでも見えているままに写し取る。当たり前の様で、意外と難しいものです。が、さらっとやってのけてしまうあたり、レンズの素性のよさが垣間見えます。
前ボケと後ボケの発生が分かりやすいカットを今一度。いいですね、自然な連なりが。
本レンズの本領発揮は日が沈んでからでしょう。
アパレルブランド“ZASHNOIR”を立ち上げたという学生さん。SNSに上げる写真を撮ってくれませんかとスマホを手渡されました。街で撮影をしていると、ちょくちょくそんなリクエストを受けます。じゃ、こっちのカメラでも撮らせてもらっていいかな?ぜひ、ぜひ!という流れでの一枚。キメキメの無口な表情もカッコよかったけど、こちらからの質問攻めで和んできたところの表情が、これまたよかった。
やっぱり開放が美味しい。
広角系でボケ味が楽しめる。絞り開放での周辺落ちの味付けもナイス。そして、キレのある確かな描写で主役をスッと浮かび上がらせる頼もしさ。昼夜を問わずこれ一本だけで気の向くままに切り込んでいける本レンズは、ひと口に広角と言っても、ひと味違う仕上がりが期待でき、そこにきちんと応えてくれます。絞り込めば、抒情的な雰囲気を排しての近代的な写りとなり、隙を感じさせない秀逸なものに。とはいえ、本レンズは開放付近での写真が最も美味しいと、今回の試写を通じて感じたのでした。被写界深度の調整が必要な場面でもなければ、F1.5のままでフォーカシングに集中するのみ。意外とシンプルな使いこなしで、趣きのあるカットが手に入ってしまうのですから、是非とも手元に置いておきたい一本です。
( 2025.07.01 )
このレンズの表現力にピンときたら、躊躇する必要はありません。
保護が目的だから、写りへの影響は最小限に。反射率0.1%、これがミソ。