PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
Voigtlander NOKTON D23mm F1.2 Aspherical
[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ
フォクトレンダーから出ているニコンZマウント用のハイスピードレンズ「NOKTON D23mm F1.2 Aspherical」をご紹介します。APS-Cフォーマット対応でフルサイズ換算35mm相当の画角となる本レンズ。レンズ構成は両面非球面レンズと異常部分分散ガラス2枚を含む6群10枚で、撮像面の近く(10枚目)に両面非球面レンズを配置していることから、歪みを抑え画面の隅まで高い画質を維持している1本と推察します。サイズは全長45.2mm、重量は240gと大口径ながらコンパクトにまとめられており、ニコンとのライセンス契約の下で開発・製造されたとあって、フォーカス時のサポートやExif情報を残せるといった機能面も充実しています。標準的な画角として50mmと共に挙げられることの多い35mmですが、見知らぬ街に持ち出すには35mmの方が勝手は良いと思われます。付けっぱなしの普段使いをイメージして、気の向くままにレンズを向けてみました。
( Photography & Text : TA )
伸びやかに、ダイナミックに描きながらも画がまとまりやすい35mm。これに大きなボケが加わると楽しいの一言。空の表情が残るようにローキー気味の露出を選択していますが、シャドウの情報は完璧に記録されていました。コントラストもつきますが、良くまとまります。
35mmは主要な被写体とその周囲まで収められる程よい広さがあります。余白の部分に被写体の導線が写り込み、結果として時の流れを写し込むようなアプローチも可能ですし、少し踏み込むことで標準〜準中望遠的な使い方もできます。先ほど何かと勝手が良いと申し上げたのは、視野角に近いという側面もあるのですが、つまりはこういうことです。
開放F1.2でこの安定感。画面四隅を見ても曖昧さを感じません。質感をリアルに伝えてくる描写に嬉しくなります。被写体には18cmまで寄ることができ、取り回しも良いです。
35mm相当を手にしていると、やりたくなるのが日の丸構図。これほど似合う画角は他にないかもしれません。それはそうと、中距離の被写体でも、ピントの立ち上がりや立体感も文句なしのレベルです。
シャープなピント部に大きなボケ。メリハリの効いた画が実に気持ちが良いです。
安定した写りですから、気の向くままにレンズを振っても困るようなことはありません。ピントの山も掴みやすいですし、フォーカスリングも滑らか。かつ適度なトルク感があって絶妙なピント合わせが可能です。スナップには最適なレンズのように思います。
さすがにF1.2のボケはなかなかの量で、画面整理がしやすく視線誘導に長けています。それにしても光の状態が良いとは言えない環境下でしたが、ピントを置いたところの立体感やディティールの再現性に舌を巻きます。
四隅に減光が見られますが、程よい広さを持つ35mmにとって、画作りという意味ではそれがプラスの方向に作用することが多いです。
「常用」に相応しいF1.2大口径
とにかく楽しい1本です。F1.2の大口径ながら開放から画が安定しているので気の向くままにレンズを振っても困るようなことはありませんし、伸びやかに描きつつまとまりのよい画角で何かと勝手が良いです。ピントの立ち上がりや立体感も文句なしのレベルで、F1.2ならではの大きなボケを愉しむこともできます。MFレンズの速射性を活かして、テンポよくシャッターを落としていくのが心地良いレンズです。これもひとえに、撮ることに集中できるスムーズな操作性があるからこそ。高い工作精度を感じさせる総金属製ヘリコイドの滑らかな動きと適度なトルク感は、使っていて本当に気持ちが良いですし、しかも手に収まるサイズでコントロールも容易です。明るいということも手伝って常用レンズに相応しい、いや、この上ない1本でしょう。いつも思うのですが、写りや品質を考えるとフォクトレンダーのコストパフォーマンスの高さは他に類を見ません。手に入れられるうちに、どうぞ。
( 2024.07.04 )
MFレンズの速射性を活かした撮影が楽しいF1.2大口径の準広角レンズ。常用したい1本です。
大口径マウントの恩恵を存分に堪能できるコンパクトなAPS-Cフォーマットカメラ「Z50」。携行したくなるサイズ感です。