PHOTO YODOBASHI
ヨドバシカメラ公式オンライン写真マガジン
Nikon Ai Nikkor 24mm f/2.8S
[ズーム] 広角 | 標準 | 望遠 | 高倍率
[単焦点] 広角 | 標準 | 望遠 | マクロ
誕生は1981年。「往年の」という言葉を使っても差し支えないでしょう。そのレンズが現在も新品で入手可能です。フィルム時代のレンズですから、もちろんフルサイズ対応。AFモーターも電磁絞りも手ブレ補正もないシンプルな鏡胴はたいへんコンパクトな印象です。長い歴史を誇るFマウントレンズ、フィルム時代のボディはもちろんのこと、デジタルではD4系やDf、D800系〜D600等のFXフォーマットのボディ、DXフォーマットではD7000系等、Ai連動ピンを搭載したボディで楽しめます(D5000〜D3000系のボディでは露出の制御等に制約があります)。24mmは超広角レンズほど極端なパースがつきにくく、手軽に振り回わしやすい焦点距離。最近では標準ズームレンズのワイド端としても馴染みがありますよね。F値も2.8ですから、ズームレンズでカバーできてしまうのですが、こうしてニッコールレンズのラインナップとして残り続けているあたり、やはり存在意義があるようです。では作例を見ていきましょう。
( Photography : T.Yuzawa & T.Nakanishi / Text : Naz )
写真は開放から半段絞った状態です。四隅で多少の甘さを感じますが、中心部はなかなかの描写ではないでしょうか。こういうダイナミックなフレーミングは広角レンズならではですよね。高画素機「D800E」で撮影を行いましたが、樹皮の細かな模様や葉の葉脈までもしっかりと描かれています。フィルム時代のレンズですから、最新レンズのような高い解像感はさすがに感じられませんが、解像不足が気になるということもありませんでした。こちらから1920x1280pxの画像がご覧いただけます。
直線の多い被写体では樽型のディストーションを感じることもあります。しかしよく補正されていますね、ほとんど気にならないレベルでしょう。コントラストの高い条件ですが、ハイライト・シャドウ部どちらもトーンの繋がりは良好です。
開放から実に気持ちよく写りますね。さすが単焦点レンズ、といったところですよね。ヌケのよい青空に朱色の鳥居がよく映えます。本レンズはFXボディでは広角レンズとなりますが、DXボディでしたらフルサイズ換算36mm相当の画角となり、準標準レンズとしてもお使いいただける"二度美味しい"レンズです。
24mm F2.8ですから、ボケ量は大きくはありません。しかし、ご覧の通りボケの美しさはなかなかです。前ボケ・後ボケそれぞれに癖がなく、なだらかで自然なボケ味が実にいい立体感を生み出してくれています。色乗りも良好ですね。
水平垂直を注意して構えれば、歪みを感じさせない自然な描写で目の前の光景を捉えてくれます。カメラの性能もありますが、桟橋の先端の人までしっかり描き出してくれています。
最短撮影距離は0.3m。場の雰囲気もフレーム内に取り込みながら被写体をクローズアップするような撮影にも向いています。まだ硬さの残る枯れ葉、湿度の残るベンチの板、それぞれをしっかりと描き分け、手に取るように質感が伝わってきます。
コーティングの違いなのでしょうか、少し懐かしさを感じるような色合いになりました。一眼レフでは構えてからピント合わせをするのが普通ですが、被写界深度の深いワイドレンズですから、鏡胴の距離表示と被写界深度の目盛りを頼りにパンフォーカスの撮影にもチャレンジできます。観賞サイズにもよりますが、例えば2mの位置に指標を合わせて絞りをF8にすると、1mより先にあるものは被写界深度内に収まります。あとはカメラを構えてシャッターを切るだけ。AFがなくたって、素速い撮影はできるのです。
高速かつ高精度なAFがある現在、AFレンズをわざわざMFで使うことはほとんどなくなってきました。しかし、使い慣れたボディにMFレンズをマウントしてゆっくりヘリコイドを回してみると、いつもとは違った感覚でカメラを構えていることに気づくと思います。デジタル時代になり気兼ねなく多くのシャッターを切れるようになりましたが、1枚1枚じっくりと目の前の光景と向き合ってみるのも悪くないですよね。非球面レンズやEDレンズなどを多用し隅々までクリアな昨今のレンズとは異なり、残存収差も雰囲気ある描写に一役買っていることでしょう。ロングセラーの本レンズ、カメラバッグに忍ばせておくと想像以上にお楽しみいただけると思います。
( 2015.12.15 )
歴史あるMFニッコールレンズ。あのとき憧れた1本が今もご入手いただけます。在庫のあるうちに、お早めに。
専用ねじ込みフードはこちらです。レンズ先端の保護にも必須ですよね。